（最高裁判所ＨＰ内「司法委員制度について」
http://courtdomino.courts.go.jp/theme.nsf/$DefaultView/76248B23E11A948449256CAA00017FB6?OpenDocumentより転載開始）○司法委員制度について
司法委員をご存じでしょうか。司法委員は，簡易裁判所の民事訴訟手続に立ち会い，裁判官に意見を述べたり，和解のための話合いを助けたりする人で，それらを担当するのにふさわしい良識や経験を備えた一般市民の中から選ばれます。
今日は，司法委員の活躍によって，隣人とのトラブルを円満に解決することができたＡ美さんに体験談等をお聞きすることにします。
Ｋ どのようなトラブルだったのでしょうか？
Ａ美 マンションの駐車場に止めておいた私の自動車に，隣の部屋に住んでいるＢ代さんが自動車をぶつけてしまいました。そこで，Ｂ代さんに修理代金の２０万円を請求したのですが，Ｂ代さんは，私の自動車がＢ代さんの駐車スペースにかなり寄せて駐車されていたので避けきれなかった，だから，支払う必要はないと言って，支払ってもらえなかったのです。そこで，簡易裁判所の少額訴訟手続を利用して，裁判を起こしました。
Ｋ その訴訟手続は，どのような雰囲気で行われたのですか？
Ａ美 裁判は，関係者が同じ目線の高さで，ひざを交えて話ができる「ラウンドテーブル法廷」という所で行われました。裁判官も黒い法服を着ていないスーツ姿でしたし，私とＢ代さんの自動車の位置関係をホワイトボードを使って説明したり，普通の会議と同じような雰囲気で行われたので，ざっくばらんに話すことができました。また，一般市民でもあるＴさんという女性の司法委員が同席してくれました。初めての裁判でもリラックスして臨めたのは，Ｔさんが同席してくれたことが大きかったと思います。
司法委員が関与している少額訴訟の審理の様子（ラウンドテーブル法廷）
Ｋ Ｔさんという司法委員が，裁判の進行にどのようにかかわったのですか？
Ａ美 Ｂ代さんは，私の自動車の止め方が悪いの一点張りで，逆に，今回の事故が起きたのは私の責任だから，私に対してＢ代さんの自動車の修理代を請求したいと言い出してきました。私の方も，思わず，「修理代金を全額支払ってもらえるまでは絶対に帰りません！私にも色々言いたいことがあります！」って叫んでしまったのです。そのやり取りを聞いたＴさんは，裁判官に，「隣人同士のトラブルですし，込み入った事情もありそうなので，話合いをしてみてはいかがでしょうか。」と提案しました。
それで，Ｔさんが，それぞれから事情を聴いてくれることになりました。Ｋ Ａ美さんは，Ｔさんとどのような話をしたのですか？
Ａ美 実は，Ｂ代さんに対しては，修理代金のことばかりでなく，ゴミの管理の仕方にルーズな点があることにも不満があり，そういう人から駐車の仕方についてとやかく言われたくないというようなことを話しました。また，Ｔさんからは，修理代金のことや破損した自動車の状況などについて，説明を求められました。
Ｋ Ｂ代さんには，どのような事情があったのでしょうか？
Ａ美 Ｂ代さんは，私が事故の前日に夜遅くまで友人と騒いだために，なかなか寝付けず，寝不足のまま自動車を出そうとして，私の自動車にぶつけてしまったようなのです。Ｂ代さんは，私がしばしば夜遅くまでにぎやかにするのが，以前から気に障っていて，それで，今回の事故のそもそもの責任は，私にあると思い詰めてしまったということでした。Ｔさんを通じて，Ｂ代さんの事情も聞いてみると，私の方にも反省すべき点があるような気がして，修理代金を全額支払ってもらえなくても仕方ないかな，という気持ちになりました。そこで，Ｔさんを通じて，私の気持ちを伝えてもらいました。
Ｋ Ｂ代さんの方にも，色々わだかまりがあったのですね。
Ａ美 最初は，Ｂ代さんも，私の落ち度をあげつらうばかりだったようですが，Ｔさんに，今回の事故の背景事情をじっくり聴いてもらい，しかも，私がＢ代さんに迷惑を掛けたことを反省していると聞いて，徐々に気持ちがほぐれて，今回の事故はぶつけてしまった自分に責任があるという気持ちになったようです。
Ｋ 一般市民であるＴさんが間に入って，お二人の話を聴き，気持ちを理解してくれたことで，お互いのわだかまりが解けたということですか？
Ａ美 そうです。Ｔさんに色々な話を聴いてもらったお陰で，今回の事件は，私の自動車の止め方が悪かった点を考慮して，修理代金のうち，１５万円をＢ代さんが支払い，残りの５万円を私が負担するという内容の和解で解決することができました。
Ｋ Ｔさんが話合いにかかわったことがきっかけとなって，お互い納得のいく内容での解決ができたわけですね？
Ａ美 はい。Ｔさんは，隣人同士のトラブルは根が深いことが多いので，その背景事情まで探らないとトラブルの根本的な解決にはならないと考えたということでした。私たちの話をじっくり聴き，トラブルの原因を探った上で，これを整理し，私たちにとって最もよい解決は何かを考えてくれたのです。そして，裁判官に和解内容についての意見を述べたところ，裁判官もそれを妥当と判断して，このような内容の和解が成立したわけです。
Ｋ 今回の事件は，Ｔさんの一般市民としての良識と経験が円満な解決に導いた例だと思いますが，司法委員は，和解のための話合いを補助するという役目を果たすわけですね？
Ａ美 それだけではないようです。私の事件は，基本的に事実関係についての争いはなかったのですが，争いがある場合には，司法委員が，証人尋問の際に，裁判官の許可を得て，証人に質問をしたり，事実の認定に関して意見を述べたりすることもあるそうです。司法委員がそのような活躍をすることによって，簡易裁判所での裁判がより社会常識にかなうものになるのでしょうね。
Ｋ ところで，Ｔさんは，どのような経歴の方だったのですか？
Ａ美 聞いたところでは，普通の主婦なのですが，日ごろ，お年寄りの話相手になったり，地域の様々な活動に参加して，まとめ役をされているようです。そういったボランティア活動が司法委員として活躍する上で役立っているのではないでしょうか。
Ｋ 他にどのような人が司法委員になっているのですか？
Ａ美 弁護士，不動産鑑定士，建築士といった専門的知識を持っている人も司法委員になっていると聞きました。専門家の司法委員は，裁判手続にその良識や経験を生かすという点はＴさんと同じなのですが，どちらかというと，専門的知識が必要な事件で活躍することが多いようです
Ｋ 今回の裁判を通じて，簡易裁判所や司法委員について，どのような感想をお持ちになりましたか？
Ａ美 今まで，裁判所に対しては，固いというイメージを持っていましたが，司法委員という一般の市民が裁判手続にかかわっていることが分かり，簡易裁判所が身近に感じられるようになりました。
簡易裁判所では，多くの事件で司法委員が活躍しており，国民に身近な裁判所として，利用者にとって納得の得られる解決が図られています。（最高裁判所ＨＰ内「司法委員制度について」
http://courtdomino.courts.go.jp/theme.nsf/$DefaultView/76248B23E11A948449256CAA00017FB6?OpenDocumentより転載終了）
（日弁連ＨＰ内「意見書等 Subject: 02-12-27 平成１５年度国選弁護人報酬基準の減額に対する申入書」
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/02/2002_44.htmlより転載開始）申入書
２００２年１２月２４日の閣議で平成１５年度予算政府案が決定し、国選弁護人の報酬については、地方裁判所３回開廷の１件あたりの報酬の支給基準を８５，６００円とすることとなった。平成１４年度の８６，４００円から８００円（０．９％）の減額となっている。減額は戦後初めてのことである。
日弁連は、これまで一貫して報酬の増額を最高裁判所及び財務省宛に要求してきた。その趣旨は、国選弁護人報酬は、謄写料等の実費を含むものであり、公務員の賃金とは本質的違いがあるところ、現在の報酬の支給基準は弁護活動の実態に見合ったものになっておらず、現実には国選弁護人に選任された弁護士に多大な犠牲を強いるものとなっているからである。
司法制度改革推進本部では、２００６年度から国費による被疑者弁護制度導入を前提に検討作業が進行している。この制度の実現には、現状を大きく上回る弁護士の確保が要請されており、そのためには適正な国選弁護報酬が不可欠となっている。
このような事態のもとで、国選弁護人報酬の支給基準が減額されることは、極めて遺憾である。むしろ、かねて要望しているとおり、報酬額は大幅に引き上げられるべきである。
【２００２年１２月２７日 最高裁判所長官・財務大臣・司法改革推進本部長宛申し入れ】
（日弁連ＨＰ内「意見書等 Subject: 02-12-27 平成１５年度国選弁護人報酬基準の減額に対する申入書」
http://www.nichibenren.or.jp/jp/katsudo/sytyou/iken/02/2002_44.htmlより転載終了）
（日弁連ＨＰ内「法律を勉強している 勉強しようとしている皆様 法科大学院の学費等に関するアンケートご協力のお願い」
http://www.nichibenren.or.jp/jp/oshirase/oshirase030110.htmlより転載開始）２００４年４月の開校を目指して法科大学院設立の準備が進んでいます。私たちは、法科大学院は「法曹養成のための中核的な教育機関」であり、本格的な法曹養成教育を行うという画期的な制度であると考えています。
また、法科大学院が多様な人材を法曹界に送り込むものでなければならない、そのためには、入学できる学力を備えた誰もが法科大学院に入学できるようにすべきであり、経済的問題から法科大学院の入学を断念することがないようにしなければならない、と考えています。
そこで、この度、法科大学院への経済的支援はどうあるべきか、奨学金等学資支援はどのようにすべきか等をテーマにして、２月１２日にシンポジウムを開催することにいたしました。
そして、そのシンポジウムにおける議論の素材とするために、皆様に対して、法科大学院の学費等に関するアンケートを実施することになりました。
皆様からの貴重なご意見を頂戴して、法科大学院の学費等に関する議論を充実したものにしたいと存じます。お時間のない中恐縮ですが、アンケートに是非ご協力下さいますようお願いいたします。
アンケートはこちら
※アンケート期限 ：２００３年１月２４日（金）シンポジウム案内はこちら
●アンケート及びシンポジウムについてのお問い合わせ先
日本弁護士連合会 法制第１課
法科大学院設立・運営協力センター担当
TEL: 03-3580-9843
FAX: 03-3580-2866
info@nichibenren.or.jp（日弁連ＨＰ内「法律を勉強している 勉強しようとしている皆様 法科大学院の学費等に関するアンケートご協力のお願い」
http://www.nichibenren.or.jp/jp/oshirase/oshirase030110.htmlより転載終了）（鈴木寛・参院議員の公式ＨＰ内「すずかんReport・欧米各国の奨学金制度と日本の現状」
http://www.suzukan.net/03report/syougakukin_ronbun.htmlより一部転載開始）（前略）
３．日本の奨学金制度の実情
本章においては日本の奨学金制度がどのように制度設計されているのかについての分析を行う。
日本においては文部科学省所管の特殊法人である「日本育英会」が主体となって奨学金事業を行っており、２００１年度の事業規模は約４７３２億円であり、民間団体や地方自治体が独自に行う奨学金事業を含めて総額約５５００億円ほどである。これは前述の通り単純比較でアメリカの１０分の１ほどの事業規模となっている。また上記の奨学金は高校生で全学生の約２．５％、大学生で約１６．５％、全体で約８．９％の割合で給付されており、これはアメリカの約８分の１、オーストラリアの約１１分の１であり、先進国中間違いなく最低の水準にある。
また量的な面だけではなく質的な面からも見てみると、２０００年度の学生生活費（学費と生活費の合計）の平均は、国立大学で約１５４万円かかるのに対し、それに対する育英会の貸与は５４万円に過ぎない。これは学生生活費のわずか３分の１程度であり、さらに私立大学においては同２０７万円の学生生活費に対し、わずか６７万円の貸与額（約３２％）に落ち込んでしまう。大学全体の平均をとってみても、前者が約１９４万円かかるのに対し、後者の貸与額はわずか約６１万円（約３１％）に過ぎない。これでは生活費どころか学費すら満足に賄うことができず、学生は在学中もアルバイトに明け暮れるか、もしくは就学以前の段階で進学をあきらめてしまうかのどちらかを選択する以外にない。後者の仮説を裏付けるものとして「家計調査報告」の２０００年度版より、所得別に５つに分類した最も低所得なグループと最も高所得なグループの比較を行ってみると、可処分所得に占める教育費の割合にして高所得者層は低所得者層の約２．５倍強、実数にして約６倍ものお金を拠出しているというデータが得られた。このことより低所得者層出身者の相当数が経済的な理由により自身の望む教育を受けることが出来ずに、半ば強制的に社会参加を迫られているという実態が浮かび上がってくる。これは大変に由々しき問題であり、早急に奨学金の量および質を改善することが求められる。
育英会の奨学金制度には「第一種奨学金」と「第二種奨学金」の２種類が存在し、両者共に給付基準が学業成績であるため、中学・高校の成績が３．５以上という一部の成績が優れた学生しか給付を受けることができない。奨学金を必要としている学生は大抵仕事をしながら勉学を行っている場合が多いため、勉強だけを行っている学生に比べどうしても学業成績が劣ってしまう面があるのはいなめなく、本来もし勉強だけに集中することができたならば、それらの学生をはるかに上回る学業成績を収めることも可能なはずである。第二種奨学金の方は多少選考基準が緩やかではあるが、同様の傾向は変わらず、学力による給付対象の選考が学生の就学機会を奪っているという現状が浮き彫りになってくる。この状況は「学習権」を保障した日本国憲法およびユネスコ憲章などに違反する可能性も否定はできず、喫急の課題として奨学金の選考方法の見直しが求められる。また第一種奨学金は無利子の奨学金であるが、第二種奨学金の方は年率３％の利息を支払う必要があり、大学４年間に月１０万円ずつ総額４８０万円の貸与を受けたとすると、卒業後２０年間で総額６４５万９５１０円もの額（元金＋総額約３５％の利子）を返済しなくてはならないことになり、卒業後の家計を大変に圧迫している。これはもはや奨学金ではなく、営利目的の消費者金融に近いと言わざるを得ない状況である。
以上のように日本における奨学金制度は、質、量、規模、満足度のどれをとっても他の欧米諸国の足下にも及ばず、国際的に見て完全に立ち遅れているといえる。これはひとえに政府の教育政策の失敗を如実に表しているといえるのだが、何よりも一番大きな問題は、欧米各国は所得水準や家庭内の事情といった経済的な理由からのみ給付対象者を選考しているのに対し、日本では貧しいことは勿論、頭のよい、能力のある人間のみを給付対象者としていることである。これは「頭のいい奴にしか教育は受けさせない」というある意味での優生学的な発想からきているものであり、明白に人間の「学習権」を侵害する行為である。政府は向学心が旺盛な能力のある若者が経済的な理由によって進学をあきらめている実態を、一体どのようにとらえているのであろうか。政府は目下の急務として、学力による奨学金給付対象者の選考制度を改めるべきである。
４．結論〜全ての若者が自らの可能性を活かせる社会をつくるために以上、これまで欧米各国の奨学金教育制度の現状と、日本の現状との相違点を比較してきた。本論の結論として、これから先の日本の奨学金制度のあり方についての提言を行いたい。
２章において「世界標準」の奨学金制度の定義として、
１．学習権の保障
２．学生が在学中に勉強に集中できるような給付額の保証
３．教育の国家基幹目標化
をあげた。これを踏まえて日本の現状を分析した結果、日本は「世界標準」をクリアするばかりか、世界各国にはるかに遅れをとっているという実情が浮き彫りとなった。１９７６年に発効した「経済的、社会的および文化的権利に関する国際条約」の１３条第２項（ｃ）には、「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会があたえられるものとする」と規定されているが、本条約を締結した１４５カ国中で、無償教育の漸進的な導入の留保を行っている国は、日本の他にマダガスカル以外存在しないという状況となっており、今や日本の奨学金教育制度は、先進各国と比べて著しく遅れていると言わざるを得ない。以下にそんな状況を改善するために日本が行わなくてはならないことを列挙し、それを本論の提言として結論と代えさせて頂きたい。
まず第１点目は奨学金の規模の拡大である。前述の通り日本の奨学金の給付総額は５５００億円ほどであり、アメリカの１０分の１にも満たない。そのことが不十分な給付金額や厳しい選考基準を生む背景となっている。現在の５５００億円を３兆円規模に拡大することができれば、希望者の内の９割に必要な金額の奨学金を給付できるという試算もあり、いきなりその規模にまで増やすことは不可能ではあるが、まずは１兆円規模を目指し、以後民間部門を拡大するにせよ、政府が制度を担うにせよ、漸次拡大を図っていく必要がある。
第２点目は奨学金の給付選考基準において学力を用いるのを早急に取りやめ、所得水準に応じた選考体制を確立することである。この点は３章において繰り返し人権侵害の疑いがあると述べておいたが、学生の学習機会を奪う学業成績基準を改め、より公平な基準の下に奨学金の給付を行うシステムの確立が望まれている。
第３点目は教育費の負担を学生個人に担わせるオーストラリア型のシステムか、国家の繁栄という形で恩恵を受ける国自身が担うドイツ型のシステムか、それとも全く異なる受益者負担のシステムを構築するかして、教育制度の理念構築を行うことである。そのためには誰のために・何のために教育を行うのかということを明確にし、教育目標を再考する必要性がある。
そして最後の点でこれまでの全てに共通する事柄であるが、我々国民一人一人が改めて教育の重要性を認識し、教育の新たな価値付けを行い、これからの国家１００年を設計するにあたっての国家戦略を教育理念の中に組み入れることである。これまで日本人は、学校教育は「読む」「書く」「話す」「聞く」「覚える」という能力を伸ばすことだけに主眼をおいてきた節がある。だがこれからの２１世紀において価値観が多様化し、ボーダーレスな競争にさらされる世界の中で、強く日本人としてこの国の発展に寄与することのできる人間を育成するのには、その他の様々な能力が必要となってくる。日本は２２世紀になった時にどのような国家であることを目指しているのか。戦略なき国家に未来はないが、理念なき戦略もまた無意味である。これからの「国家１００年の計」をどのように描いていくか、それを構築することが、現在の日本に必要とされることなのである。
（後略）
（鈴木寛・参院議員の公式ＨＰ内「すずかんReport・欧米各国の奨学金制度と日本の現状」
http://www.suzukan.net/03report/syougakukin_ronbun.htmlより一部転載終了）
（日弁連ＨＰ内「法科大学院の学費等に関するアンケート」http://www.nichibenren.or.jp/jp/anq/index.htmlより転載開始）※ アンケートの締め切りは２００３年１月２４日（金）です。
※ なお、アンケート中「奨学金の貸与等」という表現を使っていますが、これには国や地方自治体の用意する公的な奨学金制度の他に、大学や民間団体の提供する奨学金や、金融機関の提供する教育ローン制度も含むと考えて回答をして下さい。
１ あなたは現在、以下のどれに属していますか(1) 法学部所属の大学生 １、２年生 ３、４年生 大学院生
(2) 法学部以外の大学生 １、２年生 ３、４年生 大学院生
(3) 社会人
(4) その他
２ あなたの年齢は、以下のどれにあたりますか(1) １０代 (3) ２５〜２９歳
(2) ２０〜２４歳 (4) ３０歳以上
３ あなたの現在の住所地（都道府県）をご記入下さい▼選択してください 北海道 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 新潟 富山 石川 福井 山梨 長野 岐阜 静岡 愛知 三重 滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山 鳥取 島根 岡山 広島 山口 徳島 香川 愛媛 高知 福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
４ 法科大学院へ入学することに、関心はありますか？(1) 関心がある
(2) 関心がない（法科大学院設立後も現行の司法試験のみを受験したい）
(3) その他
５ あなたが法科大学院入学に関して考慮する要素を選んで下さい（複数回答可）(1) 法科大学院の学費が負担できるものかどうか
(2) 法科大学院の教育内容、教育方法が、自分が求めているものであるかどうか
(3) 法科大学院の入試や新司法試験の合格可能性（現行の司法試験よりも合格率が高まるかどうかも含めて）
(4) その他
６ 法科大学院の学費が、以下のどの程度であれば入学を志望しますか（ここでは、奨学金の貸与等がないものとします。）
(1) 年間１００万円以下（１００万円を超えると入学をあきらめる）
(2) 年間１００万円〜１５０万円（１５０万円を超えると入学をあきらめる）
(3) 年間１５０万円〜２００万円（２００万円を超えると入学をあきらめる
(4) 年間２００万円〜２５０万円（２５０万円を超えると入学をあきらめる）
(5) 年間２５０万円を超えても入学を志望する
(6) 学費の多寡にかかわらず志望しない
７ 法科大学院の学費と在学中の生活費について、主にどのようにして調達しますか？（ここでは、奨学金の貸与等はなく、アルバイト等はできないものとします）（複数回答可）
(1) 自分の貯金等の自己資金
(2) 配偶者の援助
(3) 親や親族の援助
(4) 勤務先等の援助
(5) その他
８ 法科大学院の学費を年間２００万円と仮定した場合、生活費の調達も考慮に入れると、年間の奨学金の支給額が以下のどの金額であれば法科大学院に進学を志望しますか？（ここでは、奨学金は全額を返済するものとし、アルバイト等はできないものとします。）
(1) 奨学金が年間１００万円未満でも志望する
(2) 奨学金が年間１００万円〜２００万円得られるならば、志望する
(3) 奨学金が年間２００万円〜３００万円得られるならば、志望する
(4) 奨学金が年間３００万円〜４００万円得られるならば、志望する
(5) 奨学金が年間４００万円〜５００万円得られるならば、志望する
(6) 奨学金が年間５００万円以上得られなければ志望できない
９ 日弁連では奨学金の充実を求めていますが、あなたが奨学金を得られるとすれば、返済が不要な給付制と、返済が必要な貸与制のどちらを希望しますか。(1) 金額が少なくても、返済の必要のない給付制を私は希望する。
(2) あとで返済の必要があるとしても、必要十分な金額を借りられる貸与制を希望する。
(3) 将来の返済に不安があるため、自分にとって必要十分な額を受けられる給付制でなければ、私は法科大学院への進学を断念するかもしれない。
(4) 学費如何にかかわらず私は奨学金の必要性を感じていない。
１０ その他、法科大学院の学費、生活費及び奨学金等の問題に関して、疑問、ご意見等ございましたら、以下にご記入下さい。（日弁連ＨＰ内「法科大学院の学費等に関するアンケート」http://www.nichibenren.or.jp/jp/anq/index.htmlより転載終了）
（日弁連ＨＰ内「シンポジウム 法科大学院における経済的支援のあり方について〜法科大学院志望者のニーズを探る〜」
http://www.nichibenren.or.jp/jp/event/030212.htmlより転載開始）「法科大学院」は、「法曹養成のための中核的な教育機関」として、２００４年の４月より発足します。法律実務家も教員として参加し、プロセス重視の少人数による双方向の教育が実施されます。一方、そのため、授業料も高いものが予想され、経済的支援が十分でないと法科大学院への入学を断念する方が出てくるとも言われています。
ところで、アメリカも同様のロースクール制度を持っており、歴史も古く、揺るぎない制度として定着しています。そこでの授業料は、日本で予想されるものと同じように、高額ではありますが、奨学金や政府保証ローンが発達し、ほとんど全員がこの恩恵を受けています。
このシンポジウムでは、法曹を志望されている方等へのアンケート調査をもとに、「経済的な問題から法科大学院への入学を断念させない」 ために、法科大学院への経済的支援のあり方をディスカッションし、方向性を見いだすことができるようにしたいと考えています。是非ご参加下さい。
開催日時 ２００３年２月１２日（水）
開催時間 午後４時〜７時
場 所 弁護士会館２階 講堂「クレオ」 地図参照
東京都千代田区霞が関１−１−３
最寄り駅 地下鉄丸ノ内線、千代田線、日比谷線「霞ヶ関」Ｂ１-b出口
パネリスト
国会議員、大学関係者、関係各省担当者等を予定
参加費など 参加自由 無料
主 催 日本弁護士連合会
問い合せ先 日本弁護士連合会 法制第１課
ＴＥＬ ：０３−３５８０−９８４３（日弁連ＨＰ内「シンポジウム 法科大学院における経済的支援のあり方について〜法科大学院志望者のニーズを探る〜」
http://www.nichibenren.or.jp/jp/event/030212.htmlより転載終了）
（日弁連ＨＰ内「マネー･ローンダリング・資本市場規制と弁護士に対するゲートキーパー規制を考える国際シンポジウム 迫りくる依頼者と弁護士の信頼関係の危機−依頼者の秘密特権を守るため、弁護士は国際的に連帯してどのように闘うか−」http://www.nichibenren.or.jp/jp/event/030215.htmlより転載開始）日 時 2003年2月15日（土）午後1時〜5時
場 所 弁護士会館17階 1701ABC会議室
パネリストラモン・ムラー氏（IBA人権協会共同議長）
ゲートキーパー規制のためのＥＵ指令が制定された時にこれに反対する活動を展開したヨーロッパ弁護士会議長
エドワード・Ｊ・クローランド氏（ABAｹﾞｰﾄｷｰﾊﾟｰ問題対策本部議長）
テロ対策と企業不正経理対策を名目に弁護士に対する規制が強まるアメリカで、ＡＢＡの対策本部を率いて、これに対抗する活動を精力的に展開
スティーブン・ウィルナー氏（外国法事務弁護士）
クリアリー・ゴットリーブ・ハミルトン・アンド・スティーン外国法事務弁護士事務所パートナー
トーマス・アンドリュース氏（ﾜｼﾝﾄﾝ大学ﾛｰｽｸｰﾙ教授）
一橋大学客員教授： 法曹倫理関係を専門に研究、弁護士の守秘義務問題等に詳しい
川端和治氏（日弁連組織犯罪関連立法対策ﾜｰｷﾝｸﾞｸﾞﾙｰﾌﾟ副座長）
日弁連元副会長：ゲートキーパー規制を進めようとしているＦＡＴＦの民間会合で日弁連を代表して参加、これに反対する意見を陳述
内 容 （１）パネリストによる基調講演
（２）パネルディスカッション
主 催 日本弁護士連合会・東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会・近畿弁護士会連合会
共 催 ＩＢＡ（国際法曹協会）
参加費用 無料
その他 当日は日英の同時通訳で実施します。
（大阪シンポのお知らせ：なお、今回来日されるラモン・ムラー氏と川端和治氏をパネリストとして同趣旨の会合が、日弁連、近畿弁護士会連合会主催、ＩＢＡ共催で２月１７日(月)１３時〜１７時、大阪弁護士会館大ホールで予定されています。こちらも、ふるってご参加下さい。）
【第二東京弁護士会の会員の皆様へ】
このシンポジウムの参加者は、第二東京弁護士会の継続研修として、４単位が認められます。問い合わせ・申込先：日本弁護士連合会 国際課 (電話) 03-3580-9741
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
【ゲートキーパー規制の現段階】
ゲートキーパー規制とは、弁護士・公認会計士などの専門家に金融財政取引、資本市場取引の門番となり、依頼者の疑わしい行為を金融監督機関などに通報させる制度のことです。いま、ＯＥＣＤ諸国で作るＦＡＴＦ（金融作業部会）が検討しているマネー・ローンダリング対策のための４０の勧告の改訂作業では、弁護士の守秘義務＝依頼者の秘密特権を制限し、依頼者の疑わしい活動について、金融監督機関に対して通報することが義務づけられる方向です。２００２年１０月にはパリでこの改定案について民間団体からの意見を聞く会合が開催され、アメリカ・カナダ・ヨーロッパの弁護士会とともに日弁連はこのような規制に強く反対する意見を述べました。しかし、２００３年６月に示される予定の勧告では何らかの形で通報義務づけ制度を作る方向とされています。
【サーベンス・オクスリー法とは？】また、アメリカでは、エンロン事件・ワールド・コム事件等を契機にサーベンス・オクスリー法が制定され、米国証券取引所に関与する内外の弁護士に対して、資本市場の門番となることを求め、一定の報告義務を課すこととなりました。これも、資本市場版ゲートキーパー規制といえます。
【求められる国際的対応】経済と法のグローバル化の中で、弁護士職の自治と独立を脅かす動きが世界的に強められています。このような動きに対抗するには国際的な勧告・条約などの約束事ができた後の一国内での対応では全く無力です。私たちには、必然的に世界中の弁護士と共同の議論と運動を形成することが求められています。今回のシンポジウムはヨーロッパからはゲートキーパーに関するＥＵ指令に対して、反対・修正するためのロビー活動を指導した前ヨーロッパ弁護士会の会長ムラー氏、マネー・ローンダリングの防止のための本人確認や調査の義務は受け入れつつ、報告義務制度に強く反対する意見をまとめたＡＢＡ（アメリカ法曹協会）のゲートキーパー対策本部議長クローランド氏、サーベンス・オクスリー法の権威であるであるウィルナー氏というまたとない絶好のパネラーを得て開催することができることとなりました。シンポジウムでは、世界の弁護士の置かれている危機の本質とこれを乗り越える方策が真剣に話し合われる予定です。
【弁護士と依頼者の信頼関係を守るために】ゲートキーパー規制が導入されれば、弁護士の職業の基礎となる依頼者の秘密特権が侵害され、依頼者との信頼関係が破壊されてしまうことは避けられません。ＦＡＴＦの勧告は、ＯＥＣＤの経済力を背景として世界各国に条約以上の決定力を持っているのが現実です。このような誤った規制を食い止めるにはＦＡＴＦで決められてしまう前に大きな国際的な反対の声を上げるしかありません。日弁連とＩＢＡが共催する、この画期的なシンポジウムに弁護士職の未来を案ずる一人でも多くの弁護士・市民が参加して下さることを心からお待ちしています。
（日弁連ＨＰ内「マネー･ローンダリング・資本市場規制と弁護士に対するゲートキーパー規制を考える国際シンポジウム 迫りくる依頼者と弁護士の信頼関係の危機−依頼者の秘密特権を守るため、弁護士は国際的に連帯してどのように闘うか−」http://www.nichibenren.or.jp/jp/event/030215.htmlより転載終了）
（ＭＬ「フォーサイトの未来予想図 新年号」２００３年１月９日号より転載開始）――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆ 今週の司法ニュースは、委員会等設置会社に関する日経の調査結果など。☆ 司法ニュース雑感。今月は派遣業界が作った社会保険組合についてから。
http://www.enpitu.ne.jp/usr7/72937/diary.html
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>> Foresightの未来予想図 新年号
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こんばんは、フォーサイトです。昨年、ついに復活しました「フォーサイトの未来予想図」をご購読いただき、ありがとうございました。本年も変わらないご購読をよろしくお願いします。
さて、私が最近好んで読む本の一つに佐藤賢一の「王妃の離婚」という作品があります。中世フランスで実在した離婚裁判（カノン法の時代なので正確には「結婚の無効取消」裁判です）を題材に、理不尽な離婚を国王から要求され、孤立無援の窮地に立たされた王妃ジャンヌを、かつてパリ大学法学部で最も危険な学生、と恐れられた伝説の弁護士フランソワ・ベトゥーラスがその弁護を引き受け、国王に権力に群がり、媚を売ることに現を抜かす検察官や裁判官たちを追い詰めていく、という物語です。この物語を読み解く一つのキーに「怒れる庶民」の存在があります。敬愛するジャンヌ王妃が理不尽な離婚を要求されているのを知りながら、自らの無知と無力のために何の力にもなってやれない。しかし、長い逡巡を振り切って弁護を引き受けたベトゥーラス弁護士がその庶民たちの想いや不正に対する怒りを見事に汲み取り、あるいは公開された裁判を通して彼らとともに、検察官や裁判官達と戦っていきます。
彼らは、ベトゥーラス弁護士の「代弁」では飽き足らず、自ら「実力行使」にも出ます。検察官レスタンは裁判所から出てきたところを2度にわたって袋叩きに遭い、ベトゥーラスから「あいつは包帯を巻くのが好きだったな」と皮肉られる始末。切れ味鋭い弁舌で検察官や裁判官をへこまし、ベトゥーラス弁護士が裁判所から出てくると熱狂的な拍手喝采（プラスアルファのおまけつき）で出迎えるのです。
まだグーベルタンの活版印刷の無かった時代、字も読めない庶民も大勢いました。それでも傍聴していた同僚法曹家や学生たちの「裁判解説」を、庶民たちは「分からないなら分からないなりに」熱心に聞き、理解しようと努めています。
無知で無力な庶民、と書きましたがそれでも出来ることは一杯あったのです。
なぜ、こんなことを私が長々と書くかと言うと、これこそが今の日本にかけていることじゃないかな、と感じているからです。
なぜ、分からないなら分からないなりに物事を自分の頭で理解しようとしないのか。
なぜ、不正に対する怒りを感じるなら、その想いを表現しようとしないのか。
結局、日本の庶民には行動力が無さ過ぎるのです。士農工商と言われた時代から、日本の権力者たちは庶民をもちあげることについては非常にたくみでした。この時代だって、国民の90パーセント近くを構成していた「農」が2番目にランキングされている。だけれど、その地位にふさわしい権力が備わっていたかどうかは、みなさんは歴史の時間に習ったとおりです。
今の日本国憲法においても国民は主権者である旨、前文その他数多くの条文によって規定され、その権利を与えられている。それでも、その実感を感じている国民がどれだけいるか。オーナーシップを持った国民がどれだけいるでしょうか？この国民は2年前に自らが選んでいる「はず」の総理大臣から、選挙の前なのに「投票所には来なくて良い」とダメ出しされている。それも、歴代総理大臣の中で最も無能で無知な総理大臣からですよ。
個人的には「改革」のために語り合う時期は過ぎた、と感じています。今こそ、「行動」と「選択」の時なのです。
さて、「フォーサイトの未来予想図」はそんな中で、「行動と選択」を実践している人々をテーマの中心要素として捉え、それを司法試験受験生のなけなしの法律の知識で分析することによって「分からないならば分からないなりに」社会を理解し、改善への提言を続けることを目指しています。
「フォーサイトの未来予想図・2003年ラインナップ」1月〜7月のテーマ「最新判例事件を追う」
※ 司法試験受験科目と同じテーマを設定しましたが、この時期は司法試験受験時期と重なるため、不定期連載となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
7月後半〜9月前半「フォーサイトの21世紀憲法論」
※ 受験時期が「いったん休みに入った」時期を利用して、HP上では何度も書くと宣言していた特集コラムを復活します。
10月〜12月「フリー＆フェア・トレード」
※ 最近、筆者自身が関心を寄せているビジネス法務部門のコラムコーナーを、昨年と同時期に、同じ回数を予定して連載したいと考えております。
今までの常連定期購読者の皆様には「またどこまでやれるんだか」とご心配の向きもあろうかと思いますが、定期発行を死守することが私なりのささやかな「行動」になると考えております。本年もよろしくお願いします。
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Foresight
Email: foresight1974@hotmail.com
HP: http://hp3.popkmart.ne.jp/foresight1974/
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こんばんは、ネルソンです。>ご無沙汰しています、しまげんです。
>こちらのサイトの初代管理人をしておりました。こちらこそ、先日は美味しいお鍋を御馳走になって、そのうえカラオケ歌唱の懇切丁寧な指導までしていただいて感激の極みです。ありがとうございました！しかし、しまげんさんの「あやや」と、ジーラさんの「おニャン子」には、思わず吹き出してしまいました（大笑）。いや〜、ウケました！
>ネルソンさんは、こつこつと管理をしていただいているようで、大変ありがたく思っております。
すいません！ここ２週間ほどサボってました（謝）。もっとも、風邪で寝込んでたのですが・・・。「同じことだ！」と言わず、言い訳させて下さい（泣）。
>さて、重掲の方に名誉毀損・侮辱罪についての条文を引用している記事がありますので、これは法律学のカフェの出番なのでは？と思いました。
>これを機会に名誉毀損と表現の自由を考えてみても良いのではないでしょうか。いやあ、でもあの論争は「重たい掲示板」を見ての通り、だいたいは決着がついてしまっていますからねえ。ここで刑法の名誉毀損に関する規定を引用すると、
（公共の利害に関する場合の特例）
第230条の２
前条第１項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。２ 前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
３ 前条第１項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
・・・がありますよね。
平たくいえば、この刑法第２３０条の２の第２項は「犯罪者」、第３項は「政治家や官僚などの公職にある者＝公人」への「事実に基づいた批判・非難はこれを罰しない」という規定ですよね。んで、副島先生の宮崎氏に対する論難は、第１項の「私人に対する、公共の利害に関する事実に基づいた、公益を図るための批判・非難はこれを罰しない」に該当すると私は思うのですが。
というのは、あれは「学問論争」、すなわちscienceサイエンスだからです。そもそも、近代法制度における裁判の原則は、「宗教（善悪）と学問（真偽）の世界の価値を捨象した、世俗の利害（損得）に関わる紛争解決のためにjustice正義判断を下す」ことですから、宮崎氏支持者の方々が、副島先生に対して、「アンタは犯罪者だ！罪状は名誉毀損である」等々声高に主張すること自体が滑稽、というか「お門違い」なのですね。もしくは、「無価値」というべきでしょうか・・・。
もっとも、副島先生自身がしばしば、「馬鹿めが！」とか、「いやらしい根性の持ち主め！」などという世間的・客観的にみて感情的な発言をなさるのはリスキーなのでしょうが（苦笑）。だから、宮崎氏支持者の方々が反論したいのであれば、従来通りに「副島隆彦の宮崎に対する事実の指摘は誤りである！」という戦法か、もしくは、「あの罵倒的なセリフが学問論争においては蛇足であるから、その罵倒の部分（のみ）が名誉毀損、もしくは侮辱にあたるのだ！」と言えば良いと思われます。
もっとも、そんな訴えを起こしても現実問題として裁判所もヒマどころか、「貸した金を返させるのに三年はかかる」（「裁判の秘密」）くらい「火の車」だそうですから、おそらく受理されないと思いますね。というか、その程度の罵倒では、悪質どころか、世間では我慢できて当然のレベルの罵倒ですから、わざわざ訴訟にする「法益」が見当たらないように思えてなりません。
言論の自由についてですが、企業や官庁などの組織内においては、当然、組織の利益に反するそれは容認されませんね。そんなことをしたら、リストラされかねません。というか、そもそも「言論弾圧は公権力が民間人に対して行うもの」ですから、したがって「民間人（個人も法人も）による民間人への言論規制」は司法が関知すべきことではありません。
裏を返せば、国家・国民レベルにおいては当然認められていますが、「自由（権利）」には、憲法典によって「公共の福祉に反しない限り認める」という条件が付けられております。そりゃあ、「国益」＝「国民みんなの利益」に反する行為を認めるわけには、国民国家としてはいきませんからね。その意味において、私はじつは「人権擁護法案における特別救済によるマスコミ規制」に賛成なのですよ。「報道被害」には目に余るものがありますからね。
彼らマスコミの逸脱行為を掣肘する手段がなく、しかも「口先だけの自律」を彼らが誓えばそれで「おとがめ無し」というのでは、今の弁護士会の懲戒処分みたいに「身内が身内を裁く」ということになってしまい、とても公正さや、被害救済を制度的に担保できません。あるのはただ、「マスコミの良心（口約束）」だけですが、こんなものあてになるわけが・・・無い！
マスコミの理屈は、「農協福岡が八女茶の虚偽表示を行っても、農水省は見逃せ！もし、それが悪いことであれば、市場原理という名の『裁判長』がいるから、それで事足りる」といっているようなものです。もしくは、「外資系金融会社が違法な取引を行っても、金融庁は動くな！」と言っているようなものです。そんな悠長なこと、言ってられません！だから、両者とも「国益保護」のために「業務停止処分」を喰らって当然なのであります。
もっとも、何が国益か、何が公共の福祉かは、国民議会（国会・議会）で国民の代表者たる国会議員（政治家）たちがよくよく話し合って決定（法律の新設・改正・廃止ならびに予算の配分）することなのですが。
・・・・・と、以上のように私は目下考えておる次第であります。
＞ネルソンさーん、お元気ですか？
卒論でおいそがしいのでしょうか。えーと（困）。年末年始は感冒で寝込んでおりましたです、ハイ。元気というより、病気でした（泣）！ちなみに、卒論じたいは昨年１２月の中旬には完成して、大学当局（教務課）に提出していたのですが・・・。
なんか、「くだけすぎ」という感が否めませんが、取り敢えず私の考えを述べてみました。しまげんさん、これをレスの大幅遅滞のお詫びに代えさせて下さいませ。んじゃ！（２ｃｈふうに）
ネルソン拝
謹んで新年をお慶び申し上げます。当掲示板管理人のネルソンです。未歳（ひつじどし）となる本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。・・・・・といっても、「ご無沙汰してます」とか、「テンポがずれ過ぎ！もう、１月も１４日で、とっくに三が日を過ぎているじゃないか！」といわれても言い訳できませんね。皆様、新年早々ごめんなさい（泣）。さて、以下のアンジェリックスさんの御配慮には、申し訳ない、というか、感謝の言葉も見つかりません！本当に、私などのためにフォローして下さって有り難い限りでございます。
（投稿[939]より引用開始）
>管理人に代わって，副管理人として挨拶申し上げます．
>あけましておめでとうございます．
>Mr. ネルソン は，この年末年始，忙しいのでしょう．（投稿[939]より引用終了）
ネルソンです。じつはですね、その年末年始に、私はインフルエンザで、「下痢嘔吐＆高熱＆鼻炎＆セキ」に苦しめられつつ、家で寝込んでたのですよ・・・。ですから、新年はじめて外出したのが、確か１月８日に初詣に行ったことだったと記憶いたしております。言い訳ですが、私の自室にＰＣはなく、一階応接間（らしきところ）の気温的に寒い空間にあるのです。当然、他の家族と共用なので、通常、私がまとまったＰＣ時間を確保できるのは夜、ということになります。さもなくば、ヒマな休日の昼間に誰もＰＣを使っていないときです。
だから、風邪が少し治っても、ゼミの連絡やらの他の用事があったりなどもして、ＰＣアクセスができてなかったというわけです。流石に、風邪の治りかけに寒い部屋に深夜、長時間いるのは堪（こた）えますからね。ちなみに、用事とは「ゼミの教授が入院しているので、そのお見舞いの打ち合わせ」と、「例の卒論がゼミの指導教授のお眼鏡にかなったので、急遽、病院からの教授の指示にしたがって、もう一部卒論のファイルを作成して、学長に提出するための準備」などです。今年も、楽しく・・・じゃなかった、忙しくなりそうです（苦笑）。
風邪に話を戻すと、私は普段はほとんど風邪をひかないくせに、いざ倒れると、平気で２週間近く寝込んでしまうようです。もっともそれは、卒論を肉体的に無理をして仕上げた直後であるにもかかわらず、ろくに休息をとらないでクリスマスパーティーや忘年会で暴飲暴食をしたり、風邪のひきはじめに凄く寒い温泉地へ旅行へ行ってしまうなどの、私自身の「体調管理ミス」に起因するところも大きいようですが・・・。まあ、自業自得ですね（泣）。
しかし、ようやっと体調も元通りに回復して、深夜に長時間ネットをしても家族にも咎められないほどになりました。これで、多少の寒さも平気の平左です！でも。風邪をひいて高熱（３８．４℃）を出すと、少し寒いだけでも「死にそうに」感じられるのですねえ・・・。私は今回、それを五年ぶりに身を以て「復習」させられてしまいました！やっぱり、「健康は一番の財産」なんですね。当たり前すぎて、自己嫌悪に陥ってしまいそうですが。
まあ、そんなこんなで年頭からトラブルを発生させてしまいましたが、当掲示板「法律学のカフェ」を、その姉妹BBSたる「理論の部屋」「現実の部屋」ともども、重ねて今後とも宜しくお願い申し上げます！
ネルソン拝
管理人に代わって，副管理人として挨拶申し上げます．
あけましておめでとうございます．
Mr. ネルソン は，この年末年始，忙しいのでしょう．
そう言えば，NC4の騒動で私の掲示板にも来たキチガイも，大分前に，侮辱罪だの名誉棄損だのと言って，NC4 界隈では伝統のあるパロディ掲示板に脅しをかけて，専門家である鈴木小太郎さんにやっつけられていました．
ネルソンさーん、お元気ですか？
卒論でおいそがしいのでしょうか。
ご無沙汰しています、しまげんです。こちらのサイトの初代管理人をしておりました。
ネルソンさんは、こつこつと管理をしていただいているようで、大変ありがたく思っております。
さて、重掲の方に名誉毀損・侮辱罪についての条文を引用している記事がありますので、これは法律学のカフェの出番なのでは？と思いました。
これを機会に名誉毀損と表現の自由を考えてみても良いのではないでしょうか。
ネルソン君、私が「ぼやき」に情報を貼りつけた、『司法占領』戦略に関して、色々調べてくれてありがとう。法律分野は門外漢なので、全く五里霧中といった観もありましたが、ネルソン君、ＹＴさん、せきぐちさんが、貼りつけた情報をさらっと流し読みした範囲でも、やはり『司法占領』は妄想でもなく、世界帝国の国家的な謀略であるという思いを強くしました。
おまけに、やっぱりとは思っていましたが、当の帝国では、外国人弁護士の活動を制限しているわけですね・・・。呆れてしまいます。
ネルソン君の調べた、国会議員の司法改革についての発言に関してや、外弁法改正慎重派の弁護士リストについては貴重な資料になるでしょう。
あなたの発明した、juris-globalistという言葉は素晴らしい。ぜひ、この路線で論文を書いてください。私も、副島法律学を勉強しなおします。
ネルソンです。これで今日の投稿は最後ですが、今日は２００２年１２月２４日の火曜日、クリスマス・イヴです。結局、一日中、この作業に費やしてしまいました（苦笑）。風邪がぶり返さなければ良いのですが・・・。それはさておき、以下に紹介する著書は、「法科大学院構想の理想と現実」（柳田幸男・著、有斐閣・刊、2001年12月初版）であるが、この著者である柳田氏の学識もどうやら、日本における法科大学院の制度設計に大きく寄与したであろうことがうかがえる。
著者の柳田氏は同書「はしがき」（�顱像�ページ）で、次のように述べている。
（柳田幸男氏の「はしがき」より一部編集して引用開始）
これまでに筆者が発表した日本の法曹養成制度に関する一連の論稿を一冊の本にまとめてはどうかというお勧めを関係各界の少なからぬ方々からいただいていた。日本の新しい法曹養成制度とその中核としての日本版ロースクール構想を具体的な形で,不十分ながらもひととおり示してきたという想いも多少はあった。
今年のはじめに,日頃畏敬する小島武司中央大学教授(同教授は司法制度改革審議会の要請を受けて文部科学省に設置された「法科大学院(仮称)構想に関する検討会議」の座長をつとめられた)が,「21世紀の大学像とロースクール構想」と題する論稿のなかで,法科大学院が制度として成長を続ける上で,「その活力は,改革の出発点における田中成明京大教授や柳田幸男弁護士の著作から得られるだろう」(「書斎の窓」No.501〔2001年1・2月号〕)と述べておられるのを拝見した。
先生の身にあまる言葉に恐縮しつつもこの言葉に後押しされ力づけられて,私は,その後もいくつかの論稿を発表し続けてきたが,筆者の直近の論稿である「司法制度改革審議会意見書に示された法科大学院とその具体的実現の方途」を脱稿する頃になって,この際,多くの方々からの批判を甘んじて受ける覚悟を決め,本書の刊行に踏み切った次第である。
思えば、1998年２月に本書に収めた最初の論稿「日本の新しい法曹養成システム−ハーバード・ロースクールの法学教育を念頭において」によって,筆者が日本版ロースクールの理想型を発表したときの反響は,法学部関係者からは厳しく批判され,また,法曹界の反応も概ねクールなものであった。
しかし,そのなかにあって,当時,佐藤幸治京都大学教授(現在近畿大学教授。後に司法制度改革審議会会長に就任された)や,佐々木毅東京大学教授(現在同大学総長)など,ロースクール構想を高く評価する方々もおられた。
また,第二東京弁護士会がいち早く法曹養成二弁センターを立ち上げ,次々と中間報告書やロースクールに関する調査報告書・提言などを公表して,初期段階で法曹界における牽引的な役割を果たしたことも特筆されなければならない。
さらに,ロースクール構想が実現した場合にそれが日本社会に及ぼす影響について,それはこれまでのどの改革よりも日本社会を大きく変える可能性を秘めている,と喝破した人がジャーナリズムの世界におられた(日本経済新聞編集委員・安藤俊裕「ロースクール構想の衝撃」日本経済新聞1999年7月26日朝刊第2面)。このような論調がその後の世論の流れを作ったとみることもできよう。
以上のようなロースクール構想に関する議論の流れを踏まえ,意見書は,このたびの司法改革の理念を格調高く論じた上で法科大学院構想の具体的な姿を指し示しており,そこに示された法科大学院構想の骨格は堅固なものである。
もっとも,現実的な配慮から立法の段階および法科大学院の設立の各段階での関係者の選択に委ねているところがあり,そのこと自体は適切であるが,今後の構想の具体化および運用の仕方によっては,法科大学院はできたものの,それは名ばかりでその理念が失われ,単に現在の法学部の延長にしかすぎないものとなり,法科大学院が大きな社会改革どころか,日本の社会にとっての単なる重荷となってしまう危険性すらある。
（柳田幸男氏の「はしがき」より一部編集して引用終了）
後述するが、佐々木氏や佐藤氏など、後に司法制度改革審議会や、司法制度改革推進本部の顧問会議などで要職を務める人物の名が続々登場している。そして、その人物たちが柳田氏の論文を参考にして、かつ賞賛しているということは、今回の法科大学院構想に柳田氏が与えた影響も、鈴木良男氏ほどではないにせよ、大きいものであるといえよう。
ちなみに、下記の柳田氏の著書の奥付に記載されていることではあるが、付言しておくと、柳田氏自身も昭和41（1966）年にハーヴァード大学ロースクールで「法律学研究者修士号」とでもいうべきLL.M.を取得した元・留学生、いわば「現代の遣唐使」である。だから、投稿[933]に登場したエヌさんも、おそらく、これに該当するのでしょう。
最後に、私の投稿[931]〜[933]までの参考文献を以下に列挙する次第である。ただ、その前に私の今回の『司法占領を阻止せんがための司法鎖国政策』の原型となった『金融鎖国』理論は、今更いうまでもなく国際政治経済学者の副島隆彦「金融鎖国 日本経済防衛論(Ｅｃｏｎｏ‐ｇｌｏｂ-ａｌｉｓｔｓ ４)」（祥伝社・2002年9月）の「あとがき」のエッセンスたる、「金融帝国・アメリカの凋落、それは７月１９日のＮＹ株式暴落から始まった。この株・景気崩れのアメリカとの連動を断ち『金融鎖国』せよ！『再規制化』reregulationを合い言葉に、われらの資産を守り抜け」という喝破である。
この司法制度改革の「外弁法改正問題」の局面においても、おそらくこの米国法律事務所という名の「外資系法務法人」が、外弁法による日本法曹市場への参入規制を撤廃した途端に、たちまち日本司法界は彼らに牛耳られてしまうであろうから、この「鎖国政策論」が有効であると私は考えた次第である。
金融産業界における「門戸開放」として名高い、かの日本金融界への外資の新規参入規制撤廃である、「金融ビッグバン」というものの後に私達日本国民を襲ったのは、バブル景気崩壊にともなう大不況の更なる悪化と、その象徴たる、旧・長期信用銀行をはじめとした日本の金融機関のアメリカ外資系金融機関による買収劇ならびに、銀行に預金しても金利が事実上つかないに等しい「ゼロ金利政策」の到来であったわけだ。
また、今回私がこの文章を書いた発端は、すでにアルルさんが『ぼやき・有料版「３７６」』の「米国が世界の裁判所になりつつある。『司法占領』（鈴木仁志著）が暴いた司法改革の真相を、情報貼り付け文の形で紹介します。２００２．１２．１１」http://soejima.to/boyaki/diary.cgiに紹介した、現役若手国際派弁護士である鈴木仁志氏の著書で、衝撃的なリーガルノベル「司法占領」（講談社・2002年12月初版）の近未来図を垣間見たからだ。
概要を述べると、「せっかく２００４年からスタートするロースクール制度で新規法曹数を大幅に増加せしめても、外国弁護士による日本法曹界への参入規制が撤廃されてしまうと、米国巨大法律事務所（ロー・ファーム）がその財力とサービス業としての長年世界中で培ってきた法実務のノウハウを背景に、日本既存の法律事務所の大半を米国法曹業界の植民地になってしまう」というものだ。
どうも、日本の弁護士は、アメリカ人弁護士たちの日本司法市場にける最大の参入障壁であった日本語という「言語の壁」を乗り越えるための「通訳」としてこき使われるという謀略を米国政府は打ち立てていたそうだ。そしてそれを、何と1984年度の通産白書に観ることが出来るのである。すると、15年以上も昔から、そのような「世界的謀略」を目論んでいたことになる。こんなにも用意周到とは、恐ろしい限りである。この恐ろしい「謀略」を実現する突破口が、上記の「外弁法改正」なのである。
つまり、「規制緩和」の要求の一項目として「法務サービス」を入れておいたというわけだ。その「カラクリ」が2002年現在、ついに一般人向けにこうした形で「暴露」されたからである。
そして、「司法試験は本来、資格試験である」ということも指摘したが、これは、司法試験法の第一条（目的）の第一項の条文、「司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験とする」が根拠なのである。
ところが実際には、後述するが今の司法試験合格者が合格後１年6ヶ月間研修を受ける最高裁判所付属の司法研修所（埼玉県和光市）は人的キャパシティと予算枠の限界があるために事実上定員があり、そのために合格者数が制限された競争試験にならざるをえないという実情があったのである。
柳田氏の前掲書101〜102ページでも、「日本の法曹人口が著しく少ない要因は,法曹人口を増加させようにも司法研修所の定員という限界があること,および,法曹人口の問題につき法曹三者間で意見が一致しないことにあるように思われる。より具体的にいうと,まず,前者の点については,司法研修所の事実上の定員制により,司法試験合格者の人数が限定されており,定員の増加には,施設,予算,実務庁の受入体制などの理由から限界があるため,司法試験合格者数が極めて限られてしまうのである。その結果,法曹人口を増やそうにも司法研修所の収容能力が制約として働き大幅に増加することは実際には困難であった。また,後者の点については,これまで法曹人口を増員しようとする動きがあったが,その都度,法曹人口の増加を『司法基盤』の整備と一体のものとして行うべきか否かなどにつき法曹三者問で意見の一致が見られず,大幅な増員が実現できなかった」との指摘がある。
この司法試験は司法試験法第十二条（司法試験管理委員会）「司法試験に関する事項を管理させるため、法務大臣の所轄の下に司法試験管理委員会を置く」を根拠法として、法務省所管の司法試験管理委員会によって運営されている。
そして、この司法試験管理委員会のもとに、司法試験管理委員会の推薦に基づき法務大臣が任命する司法試験の各科目の問題を作成する委員である「司法試験考査委員」が司法試験を実際に作成・採点する。その根拠法は司法試験法第八条（合格者の決定方法）第一項「司法試験の合格者は、司法試験考査委員の合議によって定める」である。
だから、この委員会の実態は「司法研修所のキャパシティを超えないように、司法試験合格者の総数を調整・管理する委員会」なのだ。当然、同時に新規法曹数も抑制される。
だから、裏を返せば、司法研修所における司法修習の義務が撤廃されれば、この問題は雲散霧消してしまうのである。
この「義務」の根拠は、裁判所法第66条「�〇碧―そ�生は、司法試験に合格した者の中から、最高裁判所がこれを命ずる」に加えて、弁護士法第４条「司法修習生の修習を終えた者は、弁護士となる資格を有する」である。
この条文を、「司法修習を受けた者でなければ弁護士になれない」というように、弁護士会側にとって都合の良いように解釈をすることによって、「司法試験に合格した者でなければ司法修習を受けられない。司法修習を受けた者でなければ弁護士になれない。したがって、司法試験合格者でなければ弁護士になる資格はない」ということに三段論法的に正当化されてしまうのである。
例外的に、弁護士法第５条「左に掲げる者は、前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有する」の規定があるが、その条件は以下の通り厳格すぎてまさに、レアケースである。
（弁護士法第５条より引用開始）
1．最高裁判所の裁判官の職に在つた者。
2．司法修習生となる資格を得た後、５年以上簡易裁判所判事、検察官、裁判所調査官、裁判所事務官、法務事務官、司法研修所、裁判所書記官研修所若しくは法務省設置法（平成11年法律第93号）第４条第36号又は第38号の事務をつかきどる機関で政令で定めるものの教官、衆議院若しくは参議院の法制局参事又は内閣法制局参事官の職に在つた者。
3．５年以上別に法律で定める大学の学部、専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在つた者。
4．前２号に掲げる職の２以上に在つて、その年数を通算して５年以上となる者。但し、第２号に掲げる職については、司法修習生となる資格を得た後の在職年数に限る。
（弁護士法第５条より引用終了）
以上の弁護士法改正案は２００２年１２月現在、以下の通り改正される見込みであるが、これと「外弁法改正」がワンセットになる可能性が極めて高いのであろう。まことにもって、世界覇権国アメリカは油断がならぬ「世界戦略国家」である。
（『読売新聞』2002年11月17日朝刊１面「弁護士の兼職を解禁、報酬も自由化 政府検討の法改正案骨子」より転載開始）
司法制度改革の一環として、政府が検討している弁護士法改正案の骨子が十六日、明らかになった。〈１〉弁護士による企業経営など営利活動を事実上容認する〈２〉弁護士報酬の規定を削除し、報酬を自由化する〈３〉不祥事を起こした弁護士への処分について不服申し立てをする機関として、有識者だけで組織される「日弁連綱紀審査会」を新設する――などが柱となっている。弁護士法の抜本改正は初めてで、政府は来年の通常国会に改正案を提出する予定だ。
弁護士法改正については、政府の司法制度改革推進本部の法曹制度検討会が日弁連の意見を踏まえ検討を進めている。改正案骨子によると、現行法では弁護士が常勤の公務員などになることを禁止しているが、この公職兼務制限を撤廃する。弁護士の営利活動は、所属弁護士会の許可が必要でほとんど認められなかったが、改正案では、「許可制」を「届け出制」に改め、事実上営利活動を解禁する。
こうした規制緩和で、省庁が期間限定で弁護士を常勤公務員として迎えたり、企業が取締役に招いたりすることが可能となる。
弁護士報酬に関しては、日弁連などが会則で「報酬の標準」を示しているが、弁護士間の「価格競争」を促すことを目的に自由化する。
不祥事を起こした弁護士の処分に関しては、各弁護士会内の「綱紀委員会」などで決められるため、「身内だけに処分が甘い」との批判があった。改正案では、綱紀委員会委員に弁護士以外の有識者などを加えることを義務付け、さらに、弁護士以外の有識者から成る「日弁連綱紀審査会」を新設する。
このほか、司法修習を受けなくても、「企業法務担当者」「公務員」「地方議員」など法実務を経験すれば、研修を受講するだけで弁護士資格を与える「弁護士資格の門戸開放」も盛り込んだ。
（『読売新聞』2002年11月17日朝刊１面「弁護士の兼職を解禁、報酬も自由化 政府検討の法改正案骨子」より転載終了）
※司法制度改革審議会と司法制度改革推進本部発足の経緯については以下を参照した。
○司法制度改革審議会（トップページ）http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/index.html
○同審議会の文部省検討会議における法科大学院（仮称）構想に関する検討のまとめ
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/dai33/pdfs/33siryou1.pdf○法科大学院（仮称）構想に関する検討のまとめの添付資料
http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/dai33/pdfs/33siryou1at1.pdf○法律時報・法学セミナー編集部「法律時報増刊 シリーズ司法改革�機）〜睛楡�ロースクール構想」（日本評論社、2000年）
○別冊法学セミナー��169 法学入門2001年「法律学って、どうやるの？ 別冊法学セミナー 法学入門２００１」（日本評論社、2001年）
○月刊誌Foresightの連載記事「目覚めよ司法（矢吹信）」
第１４回「あまりに絶望的な司法制度改革」（２０００年１２月号）○副島隆彦・山口宏「裁判のカラクリ」（講談社、2000年）50ページ
※中坊公平氏の「醜聞」については、山口宏弁護士が辛辣に暴露しているのでこれを参照されたい。
○副島隆彦・山口宏「裁判のカラクリ」（講談社、2000年）147〜155ページ
※なお、どうして通産官僚出身の「法務関係議員」を「おもに文教族議員」と私が判断したのかについては、以下のウェブサイトを参照されたい。
○週刊朝日2002年３月１日号の「族議員100人リスト」（次のURLから閲覧できる：「落選運動」http://nvc.halsnet.com/jhattori/rakusen/zokugiin/index.html）
○町村信孝・元文相（公式HPhttp://www.machimura.gr.jp/）の「プロフィール」と「国政活動」のページ
○尾身幸次・前沖縄北方対策兼科学技術担当大臣（公式HP http://www.omi.or.jp/）の「プロフィール」のページ
○細田博之・現北方相（本人公式HP http://homepage1.nifty.com/h-hosoda/）の「自己紹介」のページ
ネルソン拝
（外務省ウェブサイト内「米国の規制改革及び競争政策に関する日本国政府の要望事項」（平成13年10月14日）http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/kanwa/ny011014.htmlより司法改革関連のみ抜粋して転載開始）小泉総理とブッシュ大統領は、2001年6月30日のキャンプデービッドにおける日米首脳会談において、両国及び世界の持続可能な成長を促進することを目的として、「成長に関する日米経済パートナーシップ」の設立を発表し、その中で、「規制改革及び競争政策イニシアティブ」（「改革イニシアティブ」）の立ち上げに合意した。この改革イニシアティブは、97年以降4年間にわたり行われてきた「規制緩和及び競争政策に関する強化されたイニシアティブ」（「強化されたイニシアティブ」）の成功裡の終了を受け、重要な改革が行われつつある主要な分野及び分野横断的な問題に引き続き焦点をあてることを狙いとして新たに設置されたものである。
強化されたイニシアティブの下での4年間にわたる規制緩和対話は、両国の規制・制度面での問題を明らかにし、不要な規制の減少、競争の強化、及び市場アクセスの改善をはかる上で、大きな成果をあげた。しかしながら、米国の規制・制度の中には、依然として、（1）米国特有であり、国際基準に調和していないもの、（2）自由貿易の理念に反するもの、（3）公正な競争を阻害するものが見られるのも、また事実である。これらの中には、米国で事業活動を行う日本企業に不合理な負担を課すものとして、無視できない懸念材料となっているものも多く含まれている。米国が用いる様々な一方的措置はその典型例であるが、これらは、WTOルールとの整合性の観点からも問題を孕んでいる。
このような現状認識の下、日本国政府は、改革イニシアティブを開始するにあたり、米国政府に対して、規制改革及び競争政策に関する要望書を提出する。日本国政府としては、本要望書を十分反映させる形で、米国政府の政策の改善や更なる規制改革及び競争政策の推進を求めていく方針である。
現在ほど、日米両国の経済が世界経済において占める位置の重要性、そして、健全かつ安定的な日米経済関係が世界経済の成長と繁栄のために果たしうる役割の重要性が高まっている時はない。日米両国は、経済成長の推進、経済調和の促進、及び開かれた多国間貿易システムの強化のための指導的な役割を担っていることを十分に認識し、グローバル化時代における対話と協力のモデルを自ら示していかねばならない。
日本国政府として、この改革イニシアティブの下での米国政府との率直かつ建設的な対話が、日米経済関係の更なる強化及び深化に大きく資することを強く望む。そして、かかる対話を可能とするために、米国政府が、双方通行の対話の原則に基づき、本要望書に掲げられた各要望事項につき真剣に検討し、具体的な成果を上げるべく積極的にコミットすることを期待する。
I．規制改革及び競争政策に関する分野横断的な問題
5．法律サービス及びその他法律関連事項
（1） 外国弁護士の受入
（a） 外国弁護士の受入の全州への拡大
米国においては、外国弁護士を受け入れている州は24の州・区に過ぎず、その他の州においては、外国弁護士が開業することが許されていない。かかる現状は、米国内における多様な法律サービスの提供を制限するものである。日本国政府は、米国連邦政府が全ての州が外国弁護士についての規則を採用することを引き続き支持していることを、国際ビジネスの促進等の観点から歓迎しており、外国弁護士の受入れを全州に拡大するため、連邦政府の更なる積極的な行動を求める。
（b） 外国弁護士の受入れの要件としての職務経験期間の短縮
外国弁護士の受入制度を設けている州・区においても、確認されている限りでは、すべての州・特別区が職務経験要件の制度を設けている。多くの州ではその要件を5年以上としており、米国では外国弁護士が開業する際の障壁となっている。日本の外国弁護士受入れ制度においては職務経験期間は3年で足りるとされている。外国弁護士受入れの要件とされる職務経験年数を短縮し、全ての州において3年とするため、連邦政府は、各州政府に申し入れをするなど所要の措置を取られたい。
（c） 外国弁護士の受入れ要件としての職務経験期間の申請直前要件の廃止
外国弁護士の受入れ制度を設けている州・区において要件とされている職務経験期間に関して、確認されている限りでは、申請直前の職務経験のみが算入できることとされている。かかる直近要件は、日本の外国弁護士受入れ制度では課されていない。外国弁護士の受入れ要件としての職務経験期間を申請直前の職務経験に限定しないものとするため、連邦政府は、各州政府に申し入れをするなど所要の措置を取られたい。
（d） 外国弁護士の受入れの要件としての第三国における職務経験期間の算入
外国弁護士の受入制度を設けている州・区のうち、第三国における職務経験の算入を認めていることが確認されているのは2州（ニューヨークとインディアナ）に過ぎない。日本の外国弁護士受入れ制度においては平成10年の法改正後、第三国において法律事務を行う業務に従事した期間も算入できるようになっている。外国弁護士としての職務経験地について、全ての州において第三国における職務経験を算入できるようにするため、連邦政府は、各州政府に申し入れを行うなど所要の措置を取られたい。
（e） 連邦政府は、日米規制緩和対話（第4回共同現状報告）において、「アメリカ弁護士会（ABA）は、本件に関する日本政府の要望を認識している。」としている。そこで、わが国の上記要望について、連邦政府がこれまでにABAとの間で行った対話・協議の具体的内容、進展状況及びABAの反応等について明らかにされたい。
（2） 製造物責任法
米国における製造物責任(Product Liability)法は、米国で活動する企業に対し多大な訴訟費用負担を生じさせ、企業活動にとって過大な負担となっているのみならず、米国産業の国際競争力にも影響を与えている。米国連邦政府が、不法行為法改革の一環として、各州で進められている製造物責任の緩和を支持し、連邦レベルにおいても賠償額の一定の制限や時効の短縮などの製造物責任の緩和に向けた動きを推進することを求める。
（外務省ウェブサイト内「米国の規制改革及び競争政策に関する日本国政府の要望事項」（平成13年10月14日）http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/keizai/kanwa/ny011014.htmlより司法改革関連のみ抜粋して転載終了）
本来、自分たち大学とその法学部にとって「起死回生策」であり、受験生獲得の「ドル箱」であったはずの法科大学院構想が大きく変質していったからだ。以下に、それを克明に記録した新聞記事を紹介する。（『読売新聞』2002年11月27日朝刊３面「法科大学院へ走る大学 設置競争、終盤へ 有力大は着々と布石」より転載開始）
二〇〇四年四月に開校が予定されている法科大学院（ロースクール）の設置に関する法案が、二十九日の参院本会議で成立する見通しとなった。
（中略）
今年、二百四十六人の司法試験合格者を出した東京大学。すでに法科大学院に関する学生向け説明会を三回開いた。
「法曹倫理、模擬裁判、法律相談クリニックを設けて、民事弁護や刑事弁護の実務演習も検討している。交渉術も学ばせたい」
準備の実務を担当する山口厚教授は、具体的なカリキュラムにも言及する。
募集定員は三百人で、うち二百人は法学既修者コース。安田講堂を仰ぐ正門脇に、四階建ての新校舎が建てられる。「『司法試験に失敗しないように』というより、法曹になった後、『あの人は立派な法律家だ』と言われる人を育てたい」と、山口教授は語る。
合格者数二位の早稲田大学も着々と手を打つ。募集定員は東大と同じ三百人。専用の新校舎を用意するのに加え、情報サービス会社と提携して、法律データベースの整備にも力を入れた。「発表したら、日本中の大学が見に来ました。これで二十四時間、皆さんは下宿でも勉強できます」。法科大学院構想の責任者を務める浦川道太郎教授は、先月開いた学生説明会で自信満々に語った。「今は明かせないが、すごい先生がずらりと並びます」とも。
一方、中堅私大にはそうした余裕はない。東京の東洋大学は、学部内の検討を終え、ようやく理事会の設立準備委員会を、きょう二十七日に開く。
責任者の今上益雄教授によると、教員間では「法科大学院を作らないと、法学部として生き残れない」という危機感が強かった。だが、理事らは「作っても、合格者が出なければ問題だ」と慎重だった。司法試験予備校と提携して、受験を支援しているが、過去三年、合格者は一人ずつにとどまる。
水準が低いと評定されれば、法科大学院は文部科学省から改善指導を受ける。だが、実際には「それ以前に学生に逃げられてしまう」（同省大学課）ようだ。
「東大や早大は、現行司法試験の短答式に千人は合格しているが、母校の法科大学院の定員からあふれることにもなる。そんな優秀な学生も呼べるよう、高いレベルの教員をそろえたい」と今上教授は語る。
地方大学も必死だ。周辺の就学人口が少ないから、法科大学院を作っても学生集めが大変だ。弁護士など法曹家の数も首都圏などとは比較にならず、優秀な実務家教員を集められるか、不安は尽きない。
この打開策として、複数の地方大学が連合して法科大学院の設置を目指す動きが活発化している。香川大と愛媛大は今年二月から協議入り。法学部のない秋田、弘前、岩手の三大学は先月、同じく福島大と山形大は今月、それぞれ連合大学院の設立を打ち出している。
現状では、いずれも構想の域を出ないが、香川大法学部の中山充教授は、「大学同士が協力すれば、学生や教員確保のすそ野が広がる。両大学に個性があり、調整が難しい面もあるが、何とか軌道に乗せたい」と話している。
さらに、今年六月に法科大学院構想を発表した秋田経済法科大学（秋田市）のように、独特の学生集めを模索しているところもある。稲田俊信学長は構想発表後、秋田、大館など、県内の全九市の市長を訪ねて回っている。構想の説明が表向きの理由だが、本当の狙いは、法律知識を持つ職員を育成するため、公費で法科大学院に入れる市があるかどうかを探る“市場調査”だった。
同大以外に、北東北に法学部を持つ大学はない。司法試験合格者こそ過去に一人もいないが、これまで県庁や市役所に多くの卒業生を送り込んできた。
学長に同行した樋口弘事務部長は「経費負担の問題を別にすれば、どの市も職員の送り込みに前向きだった。構想段階にしては上々の手ごたえ」と話すが、実際に設置申請を出すかどうかについては「企業や高校などを対象にアンケートを行ったうえ、来年三月をメドに決めたい」と慎重に言葉を選んだ。
（中略）
二〇一一年からは、現在の司法試験のように短答式、論文式、口述式の試験で構成される「予備試験」が始まる。予備試験に合格すれば、法科大学院を修了していなくても司法試験の受験資格が得られるようになる。このため、「学生が予備試験に自信があれば、学費のかかる法科大学院を敬遠するのではないか。法科大学院で充実した法曹教育を行うという新制度の根本が揺らぐ恐れがある」（浅古弘・早大法学部教授）との指摘も出ている。
（『読売新聞』2002年11月27日朝刊３面「法科大学院へ走る大学 設置競争、終盤へ 有力大は着々と布石」より転載終了）
こうした従来の大学法学部ではやろうともしなかった「優秀な教員のヘッドハンティング」や、「他大学や予備校との連携」、さらには「市役所・企業・高校という地元関係者を対象とした地元に設置される法科大学院への期待＝需要予測のためのアンケートによる市場調査の実施」という大きな変化が目に見えて起きつつある。その点では成功といえる。
しかし、それでも従来の文部行政による規制によって保護されてきた「ぬるま湯」的な大学法学部では、生き馬の目を抜く教育市場で勝ち抜いてきた予備校に太刀打ちできないことは明白である。そして、それを実証する記事を以下に紹介する。
（『読売新聞』2002年11月30日朝刊39面「［司法が変わる］ロースクール設置予定大学 短期で成果狙い、指導法予備校頼み」より一部編集のうえ転載開始）
法科大学院（ロースクール）設置に関する法案が二十九日、国会で成立した。設置構想を持つ大学は、来春の設置申請、二〇〇四年四月の開校に向けた準備作業に追われているが、「どんな教育をすればいいのか」と、大手受験予備校にノウハウ提供を求めるケースも相次いでいる。従来、予備校が行っていた受験対応型指導ではなく、専門的な実務教育をじっくり学んでもらうことが法科大学院構想の根幹だったのだが。
東京・高田馬場にある予備校の老舗、「Ｗ（早稲田）セミナー」。この日も午後六時半から、司法試験のための十二のクラスが開かれ、学生や社会人ら計約千人が、講師役の弁護士らの講義に熱心に耳を傾けた。三十日には、法科大学院入試用の専門クラスも開講する。（中略）「学生や社会人の予備校需要は、むしろ高まる」と見る本田真三郎常務理事は、「講義についていけない大学院生を対象とした補修指導も視野に入れている」と語る。
一方、大学側から予備校側には、最近、「カリキュラム作成に力を貸して欲しい」「講師の派遣は可能か」といった問い合わせが寄せられている。米国ロースクールの教育方法を取り入れている大手予備校の「伊藤塾」（東京・渋谷）は、すでに十校前後の大学から相談を受けた。別の予備校幹部は、「経営ノウハウ全般について、丸抱えで協力を求めて来た所もある」と、業務提携の打診があったことを明かす。
現在、大学の間では、自前で準備を進める有力大学と、設置方針を表明しただけで青写真を描ききれない私立大や地方大に二極化する傾向がある。準備が遅れる大学は、何とか設立にこぎつけても、二〇〇六年から始まる新司法試験の合格率が低ければ、学生から敬遠され、淘汰（とうた）される運命が待っている。「補講に予備校講師を呼ぶことを考えている。短期間で成績を上げる指導法は太刀打ちできない」と、ある私大関係者は予備校に頼らざるを得ない現状を認める。
しかし、来春、文部科学省に法科大学院の設置申請を行う予定の大学で、予備校との提携を公式に表明したところは一つもない。「提携まですると、文科省から、受験テクニック偏重の教育をやめようという法科大学院の趣旨に反すると見られ、設置許可にマイナスになる」。関西の私大関係者は、そう説明する。
昨年十二月、司法制度改革推進本部の調査で、法科大学院の設置の「予定あり」と答えた大学は７３、「検討中」も２５あった。しかし、現在までに文科省に設置の相談があったのは、約５０大学にとどまっている。
（『読売新聞』2002年11月30日朝刊39面「［司法が変わる］ロースクール設置予定大学 短期で成果狙い、指導法予備校頼み」より一部編集のうえ転載終了）
つまり、「法科大学院を成功することは法学部の偏差値向上につながり、法学部の偏差値向上は大学本体の生き残り」につながるというわけである。それは逆に、「法科大学院の失敗は法学部の凋落に、法学部の凋落は大学そのものの倒産」につながりうるのだ。
だから、「学生が予備試験に自信があれば、学費のかかる法科大学院を敬遠して、予備校に通うだけで合格しうる予備試験に殺到」という事態に追い込んだ自民党通産官僚OBの法務関係議員は炯眼である。当然、商売敵となる予備校に「経営ノウハウや授業マニュアル」、すなわち企業秘密を教わるような甘い姿勢では、大学法学部に勝ち目はない。
なぜなら、従来の事前規制型の文部科学行政においては、ひとたび規制の枠内に入ってしまえば、国家による補助金や新規参入者の排除など保護の恩恵を享受できるが、事後監視型に移行すると通達や指導による教育活動への細かい揚げ足取りがなくなる代わりに、新規参入者の増加による競争激化と補助金の削減を不可避的に招くから、「日本の法学教育をスポイルした旧文部省と大学」は意識改革せざるを得ない状況に追い込まれるわけだ。
たとえば、自動車運転免許を取得するための国家資格試験は、別に合格者数制限などない純然たる資格試験であるが、土曜日・日曜日と祝祭日を除いて毎日実施されているこの試験の合格率は、最近では５０％を下回っている。そこで、各自動車教習所はその合格率や、徹底したアンケート調査の実施によって、実技である運転技能の指導方法や料金表、さらには接客態度の改善などを実施することで、自社の付加価値を高め、他社に差をつけることで厳しい教習所市場での生き残りを図りつつ、繁栄を目指しているのである。成功すれば、「あの教習所は、対応が優しいから感じが良いし、なにより教え方が上手いから短期間で免許が取れる」という高評価を得られるから受講生という名の顧客が増えるが、失敗すれば「あの教習所は、対応が怖いから感じが悪いくせに、その上教え方が下手だから免許を取るのに時間がかかってお金の無駄」という低評価によって顧客が遠のき、最悪の場合、市場から撤退＝経営破綻もありうるのである。
法科大学院といえども、市場原理＝経済法則から自由になれるわけもなく、教育レベルが低ければ、「学生（顧客）から敬遠され、淘汰さ（倒産させ）れる」のである。それをいままで行政（文部省）による事前の規制が大学（院）に各種保護を与えていたのだ。
しかし、大学界はその保護政策によって腐敗堕落してしまっている現状を鑑みれば、「規制の一部撤廃を基調とした産業政策論」を適用して、強制的に大学など高等教育業界の活性化を図るしかない。
この局面においては郵便事業とは逆に、従来の法規制がが健全な教育産業界の成長を歪めてきた。本来、業界や国民を幸福にするべく存在する設置認可や入学定員などの規制が、まさしく正反対に、受験地獄などを生み出すなど教育に甚大な悪影響を与えてきた。まさに、「角を矯めて牛を殺す事勿れ」である。
ただし、全般的な「学力崩壊」に対する危惧が今日現在においても強く指摘されている。これを「子供の資質」や「家庭の資力」以外の制度面ではどう対処したらよいのであろうか。
大学入試の場合、少子化を迎える日本では「大学全入時代」といわれる希望者全員が大学に入れることになるから、従来の相対的な競争試験である、私企業たる各大学が個別に実施する入試では、大学生として必要最低限必要な学識を測る機能を果たせなくなる。したがって、絶対評価で合否を決定するフランスで実施されているバカロレアのような、資格試験としての「大学入学資格認定試験」を国で行う必要がある。
ただ、現在でも大学受験資格を得るための国家資格として「大検」があるが、大学に入る資格を国から認められていながら、それとは別に入試があるのは奇妙かもしれない。だが本来、大学入試は大学が独自に行うものであるから、決して国家資格ではなく、むしろ就職試験と同質のものである。ただし、この少子化時代に入学者の選り好みができる余裕のある大学は少ないから、どうしても今までのような「殿様商売」では立ち行かなくなる。さらにいえば、「資格試験」や「絶対評価」が行われるようになると、受験生や学生、生徒本人の学力によって合否が決まる。ということは、その人の年齢と学力には必ずしも関係はないから、本人の学力や志向に応じたクラス分けを行うなどの処置が「個人の資質に応じた適切な教育」効果を上げる為に必要になるはずだから、それに応えた教育を行えなければその教育サービスの経営主体は、受益者のニーズに応えていないということで教育サービス市場からの撤退を余儀なくされることになる。
すると「学習進度別クラス編成」、すなわち進級に必要な最低限の学力を満たしていない者に対する「留年」や、必要な成績を早くから満たしている者への「飛び級」の処置なども検討されなければなるまい。もっとも、塾や予備校ではかなり前から導入されているのだが、それは、そうしなければ熾烈な受験教育産業界での競争に勝てないからだ。
従来の法学部、ひいては大学はそうした危機意識に乏しかったが、そうした意識も変わらざるをえないことは前段の新聞報道で確認した通りである。いよいよ我が国の教育界も現実の経営問題からくる必要性から否応なく変化せざるをえなくなっている。
こうした議論をすると、「結局、受験戦争が一部のブランド大学への合格枠をめぐって、若年化するだけではないか！」ということになるのだが、少なくとも、大学入学者の「許容可能な最低限の学力」を国家によって強制的に確保・維持できる点は重要であろう。
今日、企業では大学での成績などは入社試験時においては考慮せず、独自に学科試験などを課すところが増えて久しい。大学の生活で見るところといえば、部活動などの課外活動か、卒業に必要な単位を取得しているかぐらいである。それくらい、企業は大学を学生の能力評価基準として信用していないのである。だから事実上、大学入試でどこの大学の何学部に合格したかが問われるくらいであるが、すると、学部４年間の学業は「ハリボテ」ということになってしまう。
大学の法学部では『実務訓練』は行わない。なぜなら、それは日本で一校しか存在しない「司法研修所」で行うことになっているからだ。では、司法試験に合格しうるだけの『専門法学教育』は何処でおこなうのか？当然、大部分の学生が予備校とのダブル・スクールで五年かけて合格できるか否かの試験であるから、それも疑わしい。もちろん「激しい競争試験」という側面も大いにあるのだがそれでも、あの試験内容に対応した授業は大学の授業ではしてくれない。だから、やむを得ず予備校に通うのであるが、大学の授業よりわかりやすくて面白いから、大学などはスポイルされてしまうのである。では、『人文教養』は、といってもこれも十分にやらない。
以上のように、日本の大学教育は「ハリボテ」であるのだが、「大学受験合格には中身がある」という「神話」そのものは未だ健在である。ところが、以前私と「重たい掲示板」で論争したことがある某省官僚のエヌさんが、おそらくは国費留学であろうが、そんなにも優秀な日本人でさえアメリカの某一流ロースクールに留学したら「自分が身体障害者（と喩えるくらい知的に遅れているの）であると実感させられるのです」と述べていたくらいだから、我が国の高等教育は国際的に絶望的なのであろう。
ここまで中身が無いと、副島先生があるときにこぼした台詞である、「日本の大学は死んでいるのです。死亡宣告して、お葬式を出さなければなりません」という台詞のような、愚痴もこぼしたくなるが、それはあくまで一時の現実逃避、いわば冗談であって、我々はこの日本という所与の環境の中でできうる限り頑張っていくしかないのである。
話が司法そのものから大きく逸れてしまったが、この「学歴」問題はいまはとても論じきれるものではないので、ひとまず措く。
次回が、今回の私が持っている『司法占領』関連データ紹介の最終回である。ここで、司法制度改革推進本部の議論とは全く関係のない、現・日本政府のスタンスをうかがい知ることができる。
政界では、自民党は１９９７年に司法制度特別調査会を発足させ、「司法制度改革の基本的な方針―透明なルールと自己責任の社会に向けて―」を打ち出した。この時、初めてロースクール方式の導入が検討事項に入れられた。さらに各界からのヒアリングを経た後、翌年１９９８年には「二一世紀の司法の確かな指針」をまとめた。ここでは、自己責任の原則に貫かれた紛争の事前予防と事後的な法に則った紛争解決を図る（事後監視・救済型社会の実現）ために法律専門家の役割が重要になることが強調され、ここで、ロースクール方式の法曹養成をはじめ、陪審制・参審制などの論点にも網羅的に触れられると共に、「司法制度審議会」の設置を提案している。これにより、政府・与党も一丸となって司法改革問題に乗り出すことになる。これらの動きを受けて、１９９８年１０月の文部省・大学審議会答申「２１世紀の大学像と今後の改革方策について」で、日本版ロースクール（法科大学院）構想が提示され、１９９９年６月２日の参院本会議で、21世紀のあるべき司法の姿を考える「司法制度改革審議会」の設置法案が、社民党を除く各党などの賛成多数で可決し、成立した。そして同年7月、政府に「司法制度改革審議会」が設置され、2年の期間内（2001年7月まで：実際は６月に終了した）に、政府に対して司法改革についての意見書を取りまとめることになった。
まさしく、「足掛け４０年（実際は３７年）」にして、ようやく結実したのである。そして、これにより実現困難と思われていた司法制度改革は現実化してゆくのである。
このような経緯から、1999年７月に内閣に、学者など有識者をメンバーにした内閣総理大臣直属の諮問機関である「司法制度改革審議会」が設置され、１３人の委員により、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策についての調査審議が進められた。 そこでの審議と並行して、途中、ロースクールは大学院なので、法科大学院の学校としての側面に限定して専門的な議論を積み重ねたのが、文部省検討会議である。これは司法制度改革審議会の諮問を受けて第一次森内閣時の２０００（平成１２）年４月２７日に発足して、第１回会合が同年５月３０日（火曜日）に開かれ、第１２回会合が第二次森内閣時の同年９月２０日（水曜日）に開かれて「法科大学院（仮称）構想に関する検討のまとめ」を司法制度改革審議会に提出して解散した。これが、法科大学院の「叩き台」、すなわち「構想」と公式になったのである。この時、法科大学院の履修年数を、原則３年間のコースに付け加えて、「短縮型」であるところの２年間を法学既習者向けに容認した。これを受けて、同年１１月２０日の司革審「中間報告」でも短縮型コースが盛り込まれた。
審議会のほうは、小渕恵三内閣時の１９９９（平成１１）年７月２７日（火曜日）に発足、第１回会合が開かれて、第二次森喜朗内閣時の２０００（平成１２）年１１月２０日付「中間報告」を経て、２年間の審議の結果、小泉純一郎現内閣時の２００１年（平成１３）年６月１２日（火曜日）に第６３回会合を開いて「最終意見書」を小泉内閣に提出の後、解散した。その「意見書」には、「人的基盤の拡充」、「制度的基盤の整備」、「国民的基盤の確立」を改革の三つの柱とする最終意見が盛り込まれ、政府はこれを受けて、司法制度改革審議会意見（いわゆる「改革審意見」）を最大限尊重するとの閣議決定を行った。
この三内閣時代にわたり議論を重ねた、司法制度改革審議会の会長は佐藤幸治・京大名誉教授であり、その他１２人の委員には、他の審議会同様「有識者」と謂われる各界の有力者が選任された。当然に、中坊公平・元日弁連会長もそのリストに名を連ねている。
その後、改革審意見の趣旨、つまり司法制度改革審議会の「最終意見書」はいわば「青写真」visionであり、それに示された「枠組（フレーム）」にのっとって行われる司法制度改革を総合的かつ集中的に推進するために、官僚たち事務方が予算・法律の整備を実行する準備をした拠点が、２００１年６月１２日の「最終意見書」を提出を受けて発足した、内閣官房司法制度改革推進準備室である。
この準備室の仕事の結晶が、内閣に司法制度改革推進本部を設置することなどを内容とする、同年１１月１６日に成立して、１２月１日から施行された、司法制度改革推進法（法律第１１９号）である。
この法律は、「司法制度改革推進計画」を策定するために本部を内閣に設置することを示したもので、改革の基本理念と、そのために必要な各種立法作業を進めるための体制を定めている。そして、同年１２月１日の司法制度改革推進法の施行日に、司法制度改革推進本部が内閣の中で発足した。
この司法制度改革推進本部は、内閣総理大臣を本部長、内閣官房長官及び法務大臣を副本部長とし、全閣僚を本部員とする組織である。同本部は今後３年間、司法制度改革審議会の意見書にのっとった具体的立法作業を行うことになる。つまり今現在、最高責任者たる本部長は小泉純一郎首相であり、副本部長は福田康夫官房長官と森山眞弓法相である。
本部長の下に置かれた事務局には法務、文部科学、経済産業、総務など関係各省から担当者を集めた。そして、その事務局内には労働、法曹養成、司法アクセス、裁判員制度、など１０の検討会が置かれ、各検討会に１１人のメンバーが任命された。
また、直接本部長（首相）に意見を具申できるという、いわば旧陸軍における参謀本部のような存在として、顧問会議も設置されることになった。そして、その「参謀」たる顧問会議の「顧問」には、司法制度改革審議会の会長を務めた佐藤幸治氏のほか、中坊公平・司法制度改革審議会委員も「顧問」になるはずであった。
ところが、８人任命された顧問のうち、その中に中坊公平氏の名前は無かった。さる情報筋（※22）によると、どうやら中坊氏は株式会社である債権回収機構（ＲＣＣ）の不良債権回収に関連した金銭スキャンダルを起こしたことへの責任を問われて、ＲＣＣの社長を辞任に追い込まれてしまい、その結果として、従来から弁護士会内部でも中坊氏の手法に対する批判が根強かったこともあって、ついに法曹界内部で失脚してしまったらしいのだ。ちなみに、ＲＣＣの前身は、「日本版ＲＴＣ」と呼ばれた整理回収機構である。
たしかに、以下のような報道が近日なされている。
（『読売新聞』2002年10月23日夕刊14面「『不適切回収』で中坊氏らを告発 朝日住建関連元社長」より転載開始）
整理回収機構(RCC)が他の債権者に必要な情報を伏せたまま債権回収を進めた問題で、債務者であるマンション建設販売「朝日住建」(大阪市)の関連会杜元社長(54)が二十三日、RCCの中坊公平・前社長ら四人を詐欺などの疑いで東京地検特捜部に告発した。特捜部は告発状を受理するかどうか検討している。
告発状などによると、RCCは、旧住専(住宅金融専門会社)の「住総」が朝日住建に行った融資を回収するため、一九九八年一月ころ、担保の大阪府堺市のホテル建設予定地を売却しようとした。その際、RCCは他の債権者である明治生命保険と横浜銀行の二社に、当初の売却額四十三億月を知らせずに抵当権を抹消させるなどしており、こうした行為が詐欺などに当たると指摘している。
（『読売新聞』2002年10月23日夕刊14面「『不適切回収』で中坊氏らを告発 朝日住建関連元社長」より転載終了）
そして実際に、顧問に就任したのは、当時の経団連会長（別名：財界総理）今井敬氏、連合会長（労組の元締）の笹森清氏、渡邉恒雄・読売新聞社社長と親しい評論家の大宅映子女史、小泉内閣の「首相公選制を考える懇談会」座長を務める東大総長の佐々木毅氏、早稲田大学総長の奥島孝康氏、そして司法制度改革審議会会長だった佐藤幸治氏、など８名の人物である。顧問会議の座長を務めるのは、改革審に引き続き佐藤幸治氏である。
このうち、今井氏と大宅女史は現在、古賀誠・自民党前幹事長を筆頭としたいわゆる「道路族議員」との確執で、先日来お茶の間さえも騒がしている「道路公団民営化」を検討する、「道路関係四公団民営化推進委員会」の委員でもある。ここでも、本論文の第一章に登場した鈴木良男氏とオリックスの宮内会長のような人脈上の関連性が色濃く感じられてならない。要するに、民営化論者の小泉首相と「ウマが合う」のであろう。
その後政府は、司法制度改革を実現するため、平成１４年３月に司法制度改革推進法に基づく司法制度改革推進計画が閣議決定され，司法制度改革に関し政府が講ずべき措置について、その内容、時期、担当府省等が明らかにされた。今後は同計画に基づき、司法制度改革推進本部において関連法案の立案作業等を進め、３年内を目途にその成立を目指すことになった。２００２年の通常国会にも、司法書士や弁理士などの隣接法律職種の職域拡大のための法案を提出し、同年秋の臨時国会では、司法試験法改正案など法科大学院関連の法案の成立を目指すことになる。そして、それは実際に実現している。
それでは、次にその「実現」への経緯を大まかに検証してみよう。
さて、以下に紹介する出来事は「法科大学院」が、「構想」という「机上の空論」から政治権力、すなわち法律と予算の裏付けのある「関連法案」という「現実の制度」へと具現化してゆく過程をつづったものである。まさしく、「政治案件」「政策的決定」という言葉が相応しく、その生々しいやり取りが、私に権力という存在の必要性を再確認させた次第である。
（『読売新聞』2002年8月25日朝刊３面「法科大学院構想曲折 司法改革審、人材育成の中核 自民党、予備試験対等に」より一部編集のうえ転載開始）
「そもそも法科大学院なんて必要あるのか」
六月十三日、東京・永田町の自民党本部で開かれた法曹養成小委員会。政府の司法制度改革推進本部の担当者が、法科大学院の仕組みについて具体案を説明しようとしたところ、議員からそんな言葉が浴びせられた。担当者は、まず大学院の理念から語り始めるしかなかった。
法科大学院の制度設計は、学者や法曹経験者らで構成された司法制度改革審議会が、二年間の集中審議を経て昨年六月にまとめた意見書を最大限に尊重しながら、進めることになっていた。しかし、同党の中には、「こんな意見書をだれが作ったんだ」と言い出す議員もいた。
「すべての人に開かれた現行の一発型司法試験のどこが悪いのか」「法案提出を一年、延期したらどうか」。政府と与党の協議が最終段階にさしかかった今年七月の段階でも、議論を振り出しに戻そうとするかのような発言があった。
そんな議論が続いた末、法科大学院に関し、七月末に与党三党が合意した内容は、意見書が描いた当初構想とは食い違うものだった。法案を国会で通過させるには、与党合意を重視しなければならないだけに、法案作りに取り組む担当者は「何とか意見書に忠実な制度にしたいのだが……」と戸惑いを隠さない。
法科大学院構想は、司法試験突破のため知識重視の受験技術が優先され、広い視野を持つ法曹人が育たない、という反省から出発した。それゆえ、改革審の意見書は、「司法試験という『点』の選考から、教育過程（プロセス）を重視する選考へ」という方針転換を打ち出した。法曹を目指す大卒者や社会人が、法科大学院で二〜三年間、法理論から実務面まで密度の濃い少人数教育を受ければ、修了者の七〜八割は新司法試験に合格できる――。法科大学院は法曹養成の中核機関と位置付けられた。
また、大学院の水準維持のため、意見書は、民間の第三者評価機関に教育内容をチェックさせ、「適格」と認定された大学院の修了者のみに受験資格を与える仕組みを提言。法科大学院に通わず予備試験を経て、司法試験を受験する道も残すが、あくまで例外措置、とした。
ところが、与党合意では、大学院の修了者全員に受験資格を与えることになった。第三者評価と受験資格が切り離されることで、「不適」の評価を受けても受験資格は失われず、教育水準の低い大学院が存続する可能性を残した形だ。
さらに、予備試験について、誰でも利用できることにした。自民党から噴出した「予備試験ルートを法科大学院ルートと対等にすべきだ」という意見を受けたものだった。受験予備校に通い予備試験から合格を目指すというルートが例外でなくなる可能性が出てきた。
議論はなぜ、ねじれていったのか。
「法科大学院への異論は、文部科学省不信と国の規制に対するアレルギーが原因」と複数の関係者は指摘する。もともと自民党の法務関係議員には「日本の法学部教育をだめにしたのは旧文部省と大学」（太田誠一衆院議員）という意識が強い。「法科大学院が従来の法学部の延長なら、質など望めない」という訳だ。
法務関係議員は旧通産省出身者を中心に、規制緩和論者が多かった。「受験資格を何らかの形で制限することは、法曹の量確保にマイナスになる」という考えから、大学院に対する第三者機関の評価いかんで受験資格を得られるかが決まるという当初構想を認めなかった。予備試験ルートを重視したのも、「質の悪い法科大学院は、市場原理に任せ、受験予備校と競わせることで淘汰（とうた）すればいい」という考えが根底にあった。
与党合意に基づけば、大学院の乱立と予備試験ルートの拡大で、受験者数が大幅に膨らむ事態も想定されるだけに、「結局、厳しい司法試験の選抜に頼らざるを得ないのではないか」と、法務省関係者は危惧（きぐ）する。一方、「法科大学院中心の法曹養成は、大学側が今後、自助努力で教育内容を充実させ、大学院修了者の合格率を上げることで実現可能」（改革審委員だった藤田耕三・元広島高裁長官）という声もあるが、合格率を競う余り、大学院が予備校化する危険性は残ってしまう。
二十八日からは、有識者らで構成される推進本部の検討会で、関連法案作りの最終検討が始まるが、法科大学院構想の実現には、なお課題が山積している。
（『読売新聞』2002年8月25日朝刊３面「法科大学院構想曲折 司法改革審、人材育成の中核 自民党、予備試験対等に」より一部編集のうえ転載終了）
ここに登場する、従来の法科大学院構想の制度設計の流れを大きく変えた「自民党所属の通産官僚出身の法務関係議員たち」とは一体何者なのか、大変興味深いところだ。
それはさておき、彼らの政策思想は、「文部省の行き過ぎた規制による大学への保護行政が日本の法学部、ひいては大学という高等教育全般を腐敗堕落させた。だから、法科大学院が医学部のように従来の法学部の屋上の上にまた屋根を重ねるようなものであれば、人文教養教育も法律専門教育も中途半端な従来の大学法学部の二の舞になる。そこで、大学設置認可基準などの事前規制を撤廃し、かつ『予備試験ルート』などのバイパスを設けることで事実上、新司法試験受験という同じ土俵に司法試験予備校を立たせるなどの新規参入の活性化を図る。そうすれば、教育のクオリティが悪い法科大学院は市場原理によって淘汰されるから、日本の法曹界や教育界を新しい法曹養成制度を通じて、大学側の自助努力を促し教育内容を充実させるように仕向けることができる。たとえ、『【予備】校に通うだけでも受験と合格が出来るから【予備】試験ルートなのだ』などという悪口雑言があってもかまわない。予備校と同様に、大学法学部・法科大学院も資本主義経済下における不断の経営努力の必要性を理解しなければ、教育educationの原義たる『（教え子の能力を）引き出す』という『真の教育』など実践できず、それでは大学が知的空間たりえない」というものだろう。
そして、上記の六月十三日以降に自民党本部で開かれた法曹養成小委員会での議論を経て、以下の与党三党合意につながったことがわかる。
（時事通信７月２６日http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020726-00000479-jij-polより転載開始）
与党３党の「法科大学院等に関するプロジェクトチーム」（谷垣禎一座長）は２６日、政府の司法制度改革の一環として２００４年に開校予定の法科大学院（ロースクール）や０６年から始まる新司法試験に関する考え方をまとめた。合格すれば、同大学院修了者と同様に新司法試験の受験資格が与えられる「予備試験」について(1)受験に年齢の制限などを設けない(2)高度の口頭表現能力や一般教養も問う−としている。
また、同大学院を法曹養成の中核にする観点から、新司法試験は「同大学院の教育内容を十分に踏まえた内容」とすることも決めた。
（時事通信７月２６日http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020726-00000479-jij-polより転載終了）
その後、以上の政治判断によって大学界には激震が走ることになる。その証拠記事を次の投稿で紹介する次第である。
ネルソンです。投稿[930]の続きです。経済団体連合会のウェブサイトにある、「経団連の最近の動き」（１９９６年２月）http://www.keidanren.or.jp/japanese/news/info/if199602.htmlによると、「経団連では、経済広報センターとの共催により、２月23日、標記シンポジウムを開催する。これは、行政改革委員会（委員長：飯田庸太郎三菱重工相談役）が第１次意見として95年12月に政府に提出した報告書に盛り込んだ提案を、来る３月の規制緩和推進計画の第１次改定に反映させるべく開催するものである。当日は、今井敬氏（経団連副会長／経団連行政改革推進委員長）の開会挨拶、シャピロＵＳＴＲ特別代表のメッセージに引き続き、椎名武雄氏（行政改革委員会規制緩和小委員会座長／日本アイ・ビー・エム会長）の基調講演、田中一昭氏（行政改革委員会事務局長）、田中直毅氏（行政改革委員 規制緩和小委員長／経済評論家）、宮内義彦氏（規制緩和小委員会参与／オリックス社長）、三輪芳朗氏（規制緩和小委員会参与／東大経済学部教授）によるパネルディスカッションが行われる」と掲載されていた。
そこで今度は、旧・首相官邸ウェブサイト内の規制改革委員会のウェブサイトhttp://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/を見ると、「規制改革委員会は、行政改革推進本部の規制改革委員会（平成１１年４月６日に規制緩和委員会から名称変更）は、『規制緩和の推進等について』（平成９年１２月２０日閣議決定）に基づき、行政改革推進本部長（内閣総理大臣）の決定により、平成１０年１月２６日に行政改革推進本部の下に設置された。 委員会は、設立当初から、規制緩和の推進をその任務としてきたが、平成１１年４月６日の行政改革推進本部長決定により、規制緩和委員会から規制改革委員会に名称変更されるとともに、委員会の構成、事務局体制も強化された。さらに、規制改革、すなわち、規制の緩和、撤廃及び事前規制型行政から事後チェック型行政に転換していくことに伴う新たなルールの創設、規制緩和の推進等に併せた競争政策の積極的な展開等について調査審議していくことが新たにその任務となった。委員会は、これにより、その審議の結果、一般に規制と観念されないものであっても、規制改革推進に密接に関連するものとして判断される事項（例えば補助金、税金等に係るもの）がある場合には、それぞれの関係行政機関に対し、所要の問題提起等を行っていく。このように、規制改革委員会は、『規制緩和推進３か年計画（再改定）』に係る各事項の推進状況の監視や新たな課題への取組等の活動を通じて、規制緩和の着実な推進を図ることとしています」とある。
なるほど、「行政改革推進本部（内閣：当時は小渕首相）→行政改革委員会→規制緩和（小）委員会→規制改革委員会」と結びつく。そして、「事前規制型」と「事後監視型」という言葉をここでも発見することができる。ちなみに、「行革（行政改革）」といえば中曽根内閣時の「国鉄・電電公社・専売公社」の民営化であり、その思想的背景となったのが、加藤寛（前政府税調会長）氏が主唱した「民営化論」である。
そして、同ウェブサイトの「規制改革委員会委員・参与名簿」によると、規制改革委員会の委員長は宮内義彦氏〔オリックス(株)代表取締役会長〕であり、委員長代理は鈴木良男氏〔(株)旭リサーチセンター代表取締役社長〕であった。
なるほど、この２人は日本の規制撤廃を目指す同志なのであろう。
次に、内閣府ウェブサイト内の総合規制改革会議のウェブサイトhttp://www8.cao.go.jp/kisei/about.htmlを見ると、「総合規制改革会議は、平成13年４月１日、内閣府設置法第37条第２項に基づき、内閣府に政令で設置された組織です。規制改革の推進については、平成12年度まで行政改革推進本部の規制改革委員会において調査審議されてきました。そして、今後の規制改革の推進にあたっては、行政改革大綱（平成12年12月１日閣議決定）において、『新たな規制改革推進３か年計画の実施状況を監視するとともに、経済社会の構造改革の視点も含めて幅広く規制改革を推進していくため、新たな審議機関を内閣府に置くことについて検討し、規制改革委員会の見解を踏まえ、平成12年度末までに具体的成案を得る。』こととされました。また、規制改革委員会が発表した『規制改革についての見解』（平成12年12月12日）においては、『今後、政府において、更なる規制改革を推進していくためには、内閣、特に内閣総理大臣のリーダーシップの下、官民挙げてこの問題に取り組む体制として、民間人を主体とし、客観性をもった提言をすることができる審議機関を制度的に確立することが望ましい。』とされました。これらを受けて、内閣総理大臣の諮問に応じて経済社会の構造改革を推進する観点から、必要な規制の在り方に関する基本的事項を総合的に調査審議していく、総合規制改革会議が内閣府に設置されました」とある。なるほど、今度は「規制改革委員会→総合規制改革会議」にバージョンアップしたのだろう。規制緩和小委員会の時代は付属した一部会にすぎなかったが、ついに平成13（2001）年、独立した審議会として政府税調と同等の権限を有する「内閣府の８条委員会」となるに至ったわけだ。これは法律的には凄いことである。
同ウェブサイトの「総合規制改革会議委員名簿」によると、議長は宮内義彦氏（オリックス株式会社代表取締役会長兼グループＣＥＯ）であり、議長代理は鈴木良男氏（株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長）であり、忠実に規制改革委員会を継承している。
以上のことから、司法制度改革を推進させた大きな力の一つに、行政改革の流れがあり、それを組織面において推し進めたのが「規制緩和小委員会ないし総合規制改革会議」であり、人脈面では「宮内義彦氏ならびに鈴木良男氏」であることが判明した。
その後の政治のおける規制撤廃の動きを見ても、如何に彼らの力が大きいかを知ることができる。以下に、そのことに関連する記事を紹介する。
（『読売新聞』2002年7月9日朝刊４面「規制改革会議中間報告最終案の要旨」より一部編集して転載開始）
八日明らかになった総合規制改革会議の中間報告最終案の要旨は次の通り。
【ビジネス・生活インフラ整備】◇公益事業＝略◇司法サービスに関するインフラ整備▼法科大学院非修了者の司法試験受験資格の確保▼弁護士業の規制緩和◇都心高度化▼道路の立体的利用に係る制度拡充（今年度から検討・実施）▼航空関係規制の合理化（同）
【事後チェックルールの整備】＝略（『読売新聞』2002年7月9日朝刊４面「規制改革会議中間報告最終案の要旨」より一部編集して転載終了）
思った通り、ここでも事後チェックルールの整備＝事前チェックルールの緩和という文脈で、「法科大学院非修了者の司法試験受験資格の確保・弁護士業の規制緩和」が打ち出されている。次に紹介する記事（五日後）も同じ規制緩和の流れから出てきた話であろう。ちなみに、石原伸晃・行政改革担当大臣は総合規制改革会議の担当大臣でもある。
（『読売新聞』2002年7月14日朝刊４面「教育分野への株式会社参入 石原行革相『門戸開放は時代の要請』より転載開始）
石原行政改革相は１３日、京都市内の講演で、教育分野への株式会社参入について、「いじめの顕在化や学級崩壊などが深刻化する中で、新しい学校の在り方を考える時期との観点から、（学校経営の）株式会社化が取り上げられている。門戸開放は時代の要請だ」と述べ、参入実現に意欲を示した。法科大学院（ロースクール）の設置に関する中央教育審議会の中間報告については、「人的にも内容的にも過剰と思われる設置基準が並んでいる。本当に（ロースクール設置を）やろうとしているのか熱意を疑う」と、学生の定員数などの設置基準を緩和するよう文部科学省に要請することを明らかにした。
（『読売新聞』2002年7月14日朝刊４面「教育分野への株式会社参入 石原行革相『門戸開放は時代の要請』より転載終了）
これも、ロースクールがらみの規制撤廃であった。しかし、法科大学院も文部科学省管轄の大学院であるから、これに対する学生定員数など設置基準の緩和ないし撤廃は、同時にその他の大学・大学院への規制の緩和ないし撤廃へとつながるものなのだ。詳しくは第三章に譲るが、実はこれが、少子化時代の大学間競争と大学の淘汰につながってくる。それでは、関連記事を紹介しよう。多分に、上記の石原発言を受けてのものであろう。
（『読売新聞』2002年8月6日朝刊２面「５日、遠山文科相に提出した中教審３答申骨子」より一部編集のうえ転載開始）
「大学院における高度専門職業人養成について」
【専門職大学院の創設】研究を目的とせず、高度で専門的な職業能力の養成を担う専門職学位課程を創設する▽国家資格関連のほか、高度な専門職業能力を有する人材養成が必要とされる分野で設置を期待▽修業年限は二年が基本だが、分野により一年も認める
「法科大学院の設置基準等について」
【設置基準関係】修了年数を三年以上とし法学既修者は一年以下を短縮▽法学部以外の出身者、社会人を一定割合以上入学させる▽全志願者に「適性試験」を義務付け、法学既修者は法律科目試験を実施▽専任教員の二割以上は実務家教員▽厳格な成績評価及び修了認定を行う▽継続的な第三者の適格認定を受ける
【その他】複数の大学で設置する連合大学院も可能▽奨学金、教育ローン、授業料援助制度などを検討（『読売新聞』2002年8月6日朝刊２面「５日、遠山文科相に提出した中教審３答申骨子」より一部編集のうえ転載終了）
かくして、司法改革＝法科大学院構想＝法曹人口大幅増員＝司法試験合格者数制限規制撤廃の動きは、政治中枢のなかで少しずつ、しかし確実に進行してゆくのであった。
したがって、今般の司法改革は規制緩和（規制撤廃）を求める経済界の要請を背景になされたものである。そしてその規制緩和の濫觴（源流）として広く知られているのが、土光敏光氏らを旗印に掲げ、加藤寛氏が「国鉄・電電公社・専売公社」を、「ＪＲ・ＮＴＴ・ＪＴ」へと分割民営化を実現することに貢献した、かの中曽根康弘「行革」内閣である。
その中曽根内閣時の1983年にスタートした政府の行政改革審議会が最初に設置された「行革」の行政府内における、いわば「牙城」である。それを継承・発展させる形で、1994年の「行革大綱」と、「規制緩和推進要綱」、明くる1995年の「規制緩和推進計画について」の以上三点の閣議決定に結びついている。これらを財界側から主導した立役者は、もちろん経済同友会の宮内義彦オリックス会長である。
話を司法制度改革と法科大学院構想に戻そう。その始まりは１９６２年（昭和39年）、今から４０年前にさかのぼる。この時、臨時司法制度調査会が発足した。この時も、我が国の法曹人口についての意見がメインに打ち出され、「法曹人口が全体として相当不足していると認められるので、司法の運営の適正円滑と国民の法的生活の充実向上を図るため、質の低下を来たさないよう留意しつつ、これが漸増を図ること」を求めた。この年は、司法試験の最終合格者数が戦後初めて500人を超えた年であったが、その後、その数は増えず、500人前後の数字が平成2年まで続いた。
その後、１９９０年に当時の日本弁護士連合会（日弁連）会長・中坊公平氏が「二割司法」発言をして物議を醸した。この「二割司法」とは、地方自治体の貧弱な財政実態を見事に表現した「三割自治（財源の七割は国＝大蔵省が握っている）」の換骨奪胎で、「発生した紛争の内の二割（２０％）しか司法が解決に役立っていない。残りの八割（８０％）は、行政指導・政治決着・暴力団（ヤクザ）への依頼・何も出来なくて泣き寝入りとなっている」、という趣旨である。特に、日本は行政による事前規制型国家であることから、別名「官僚司法」とも言う。これは、法律家（法曹）が行政官（官僚）にお株を取られて面目を失い、かつ、法律家が杓子定規な官僚化したことへの痛烈な皮肉でもある。中央集権の国家体制を打破したい、という思惑もあるようだ。
財界では、1994年に経済同友会が「現代日本社会の病理と処方個人を活かす社会の実現にむけて」を提言し、98年には経団連が「司法制度改革についての意見書」を発表した。それらの内容は多様であるが、法曹人口の大幅な増加、特に行政や民間での法律実務経験者に法曹資格を認めること、弁護士法七二条との絡みでは、司法書士などのみならず自社の訴訟代理人に法務実務担当者がなれるようにすること、特定の専門分野で正確な判断を下せるよう専門裁判官制度や非常勤裁判官制度などを提案しているのが特徴がある。また、弁護士活動への種々の規制の撤廃（広告規制緩和、兼業規制の緩和、弁護士事務所の法人化）などにも言及している。
その後は政界がこうした（一部）財界の意向を受けつつ動き出すわけだが、それについては次回述べる。
ネルソンです。アルルの男・ヒロシさんが下書きして、副島先生が加筆した『有料版・ぼやき「３７６」』の「米国が世界の裁判所になりつつある。『司法占領』（鈴木仁志著）が暴いた司法改革の真相を、情報貼り付け文の形で紹介します。２００２．１２．１１」http://soejima.to/boyaki/diary.cgiに関連する情報を掲載いたします。なお、以降の文章は、敢えて「です・ます調」から、「だ・である調」に切り換えさせて頂きます。これは、私の個人的な便宜によるものですので、余り気になさらないで下さいね。
まずは、経済産業省（旧・通産省。別名：悪名高き通産省notorious MITI）のウェブサイトから分析する。昭和５９年度版ですから、当時は１９８４年ということになる。
（経済産業省内ウェブサイト「昭和５９年度版 第5節 深化する貿易摩擦とわが国の対応」http://www.meti.go.jp/hakusho/tsusyo/soron/S59/00-02-01.htmlより一部編集のうえ転載開始）
1．保護貿易主義的圧力の高まりとわが国をめぐる貿易摩擦（貿易摩擦の背景）
世界経済が回復に転じた83年についても，改善の進まない雇用情勢，構造的不況産業の増大を背景に，各国における保護貿易主義的風潮は高まりつつある。
なかでも，これまで自由貿易主義の主導的役割を担ってきた欧米先進国における保護貿易主義的措置導入の増加は，世界貿易の順調な拡大を阻害し，ひいては世界経済全体が，再び1980年代の縮小均衡に陥るともなりかねないものである。
（中略）
また，農産物についても，最近欧米からの市場開放要求が高まっており，わが国としては，78年以降，牛肉，オレンジ等の段階的輸入枠拡大を行い，83年以降，非かんきつ果汁，トマトジュース等6品目の輸入制限の緩和を行ってきたが，さらに84年4月，市場開放の観点から，牛肉，オレンジ等の輸入制限の緩和措置を講じることとした。
（中略）
なお，通商問題の動向は以上のとおりであるが，このほか，アメリカの関心は，近時，財の分野のみならず，直接投資の促進，金融・資本市場の開放にも向けられており，これらの問題は，それぞれ日米投資委員会，日米共同円・ドル・レート，金融・資本市場問題特別会合等の場で話し合いが行われている。
さらに，わが国の産業政策に対する関心の高まりを受け，83年4月に設立が合意され，5月に第1回会合が開催された「産業に関連する政策及びその貿易に与える影響についての合同委員会」では，双方の産業関連政策についての相互理解を深めるべく累次にわたる話し合いが行われている。
このほか，アメリカ側は，わが国のいわゆるVAN（付加価値通信網）業の制度のあり方，ソフトウェアの権利保護制度問題や弁護士活動の自由化等についても関心を示すなど，日・米間の通商問題はきわめて複雑化の様相を呈している。
（経済産業省内ウェブサイト「昭和５９年度版 第5節 深化する貿易摩擦とわが国の対応」http://www.meti.go.jp/hakusho/tsusyo/soron/S59/00-02-01.htmlより一部編集のうえ転載終了）
なるほど。確かに、当時の報道などで、「オレンジ・牛肉・弁護士」というように、アメリカから貿易自由化のターゲットにされていたことがわかる。
それでも何とか、いままで凌いできたのだが、以下のような思わぬ伏兵が登場する。
（総合規制改革会議におけるマイケル・マハラック駐日米国大使館 経済担当公使の意見表明（２００１年１０月１日／於：内閣府）http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/010/1-1.htmlより一部抜粋して転載開始）
（仮訳）
宮内議長ならびに委員の皆様、私は、本日、ベーカー大使ならびに米国政府に代りまして、皆様に対して意見表明をさせていただく機会をいただきましたことに、心から御礼申しあげます。私は、ベーカー大使より、大使自身がこの場において皆様にお目にかかれないことを、皆様にお詫びするよう申しつかって参りました。大使は、米国政府は、規制改革ならびに貴会議の職務は、本年６月に小泉首相とブッシュ大統領により創設された「成長のための日米経済パートナーシップ」における重要な柱として位置づけていることを強調したいと申しておりました。私は、大使より、貴会議による規制改革推進３ヶ年計画の実施に向けたご努力に対して、米国政府は駐日米国大使館を通して十分な協力をさせていただくことをお約束する旨、皆様にお伝えするよう申しつかっております。
昨年のちょうど今ごろ、私は、当時のフォーリー大使と共に、宮内議長が委員長を務められていました貴会議の前身である規制改革委員会の公聴会に出席させていただきました。それは、当時の規制改革委員会が、規制改革推進３ヶ年計画に対する委員会の最終意見書の準備をされている時でした。その意見書において、委員会は、日本の１９９０年代を「失われた１０年」と呼び、改革の実行に対する日本の気乗りの無さや、そのことが日本経済にもたらす衰退的効果に対する委員会の挫折感を表現していました。
その当時から考えると、多くのことがなされてきました。小泉内閣は、規制改革に向けた方針を熱意をもって採用し、貴会議は内閣府のもとに設置され、現行の３ヶ年計画を実施するためのより強力な権限が与えられました。そして、宮内議長は、重要かつ多大な影響力を持つこの会議の議長として、規制改革に向けた活動を、再度、牽引するという要請を、もちろん、お引き受けになりました。宮内議長が引き続きリーダーとして活躍される限り、規制改革に向けた活動が成功裡に運ぶことは疑う余地がありません。
ご承知のとおり、米国政府は、長年にわたり、日本における改革に向けた活動に関係して参りました。それは、強固な日本経済は強固な世界経済にとって必要不可欠なものであるという皆様の認識を、我々も共有するからです。この両者の関係は、どちらか一つが欠けた場合には成り立ちません。昨今のような不確実な時代においては、日本と米国という世界経済における二つの主要な柱が、それぞれの経済に成長をもたらすためのあらゆる可能な方策を講じることが重要です。宮内議長ならびに各委員の皆様は、規制緩和は日本の経済成長の重要なエンジンであることを理解されています。
従って、我々は、日本政府による改革に向けた努力を、貴会議とともに、今後とも支持して参る所存です。我々が貴会議との協力を願う一つの具体的な現れとして、ベーカー大使は貴会議に対して、日本で活動する米国のビジネス・コミュニティーのエキスパートを、貴会議の種々のワーキング・グループの委員として登用することをご考慮いただくため、何人かの具体的な名前を提示させていただいております。私は、在日米国商工会議所も、それらのワーキング・グループが予定するヒアリングに参加させていただくことを希望していることを承知しております。我々は、貴会議の職務の一助と成るのであれば、貴会議がそれらの機会を米国の民間部門の知識と経験を吸収する場に利用されることを希望します。
この数日、我々は、小泉内閣が９月２１日に発表した「改革工程表」を興味深く拝見しています。この工程表の中心をなすものは、小泉首相による「改革先行プログラム」ですが、これは貴会議が本年７月２４日に発表された「重点６分野に関する中間とりまとめ」において検証された規制改革課題を組み込んだものです。この中間とりまとめにおいて、貴会議は、六つの「重点」社会的分野、すなわち、医療、福祉・保育、人材、教育、環境、都市再生分野における緊急改革を提言されました。これらの分野の改革は、日本国民の生活の質を改善するために基本的に重要であり、我々は、貴会議のご努力を奨励いたします。
しかし同時に、我々は、貴会議が、規制改革推進３ヶ年計画で取上げられている他の重要分野における規制改革の促進に向けて、その努力を継続されることを希望します。私は、それらの分野に関する我々の要望の幾つかを、皆様にご検討いただくために特に指摘させていただきたいと思います。
本年３月に閣議決定された規制改革推進３ヶ年計画は、規制改革における共通の目標ならびに共通のテーマを検証し、賢明な分野横断的アプローチを採用しています。これは、本年６月に小泉首相とブッシュ大統領が「成長のための経済パートナーシップ」のもとでの規制改革および競争政策に関する二国間イニシアティブを創設した際にも合意されたアプローチです。
本日、私は、規制改革における幾つかの重要な分野横断的あるいは構造的分野、すなわち、競争政策の強化、透明性の向上、商法改正、司法制度改革、保険、流通および運輸について皆様にお話させていただきたいと思います。その前に、私は、３ヶ年計画において取上げられている他の分野、すなわち電気通信、IT、医療、エネルギーに関する我々の考えを述べさせていただきたいと思います。更に、我々は、その他の改革課題についても日本政府と協働していることを付け加えさせていただきます。例えば、我々は、対日外国投資に対するより自由かつ透明な規制環境の必要性、また、金融サービス分野における更なる規制緩和の必要性について検討を重ねていきたいと考えます。しかし、これらの点につきましては、また別の機会にお話させていただくものとして、本日は、皆様のお時間を頂戴するつもりはございません。
商法
我々は、また、商法改正、企業の構造および組織に関する法制度の透明性、効率性の改善、更に、国内におけるM&Aの促進に向けた日本政府の取り組みについても賞賛を送ります。対照的に、国際的M&A に関する幾つかの深刻な障害については未だ検討されておらず、日本がこの分野において世界の他の諸国に遅れをとる結果を招いています。我々は、商法および税制を改正することにより、非課税の株式交換において日本企業が受けているものと同じ取扱いを外国企業にも与えることを強く要請します。
商法改革において日本政府が格段の配慮を注いでいるもう一つの重要な分野はコーポレート・ガヴァナンスに関するものです。その誘因は明確です。つまり、激しさを増す世界的競争は、より迅速であり、より柔軟であり、より明確な説明責任を要求するからです。株主の利益を保護しつつ、これらの目標を達成するために、我々は、企業自らが現行の監査役制度か、あるいは、過半数が社外取締役から成る監査委員会（その他の委員会）の設置のいずれかを選択できるとする最近の提案を支持します。その一方、日本が企業に対して最低一人の社外取締役を登用することを義務付ける場合には、それらの企業は、すべての「大会社」ではなく、株式上場会社に限られるべきであり、経営がオーナーの利益に完全に拘束されている非上場会社については適用されないものとすることが妥当と考えられます。
最後に、我々は、商法改正のプロセスを透明なものとすること、また、内外のすべての企業に対して、政府機関およびその他のグループにおける改革に向けた討議について、最大限のアクセスと意見表明の機会が与えられることを強く要望いたします。
司法制度改革
我々は、「司法制度改革審議会意見書 --２１世紀の日本を支える司法制度--」と題された報告書を発表された同審議会のご努力を賞賛いたします。同時に、我々は、決意に満ちた行動のみが、日本における司法制度を改善し、日本経済を再活性化するために必要な時宜を得た、効果的な法改正を推し進めることができるものと認識します。
国内外の企業とも、日本においては完全に統合された法務サービスを得ることは、より困難になりつつあると考えています。そして、日本を誰しもが認める国際金融センターにしようとする日本の努力は阻害され続けています。日本の法務サービス分野において最も問題である構造的欠陥の一つは、日本弁護士と外国法事務弁護士との間に認められる関係を厳しく制限している制度です。我々は、この両者による提携の自由に課せられたすべての規制を速やかに撤廃することを強く要請します。これは、ドイツ、フランス、イギリス、ベルギー、そして米国といった他の先進国においては支配的な原則です。
終りに
意見表明を終わるにあたり、私は、規制改革を通じた経済回復に向けての貴会議並びに宮内議長の献身的なご努力に、再度、祝辞を述べさせていただきます。
我々は、数日以内に日本政府に対して、我々が日本の経済回復に貢献すると確信する規制改革の分野を明らかにした公式の要望書を提出する予定です。もちろん、その要望書のコピーは貴会議の皆様にお届けいたします。また、その要望書は、すべての国会議員の方々にも送付させていただきます。その後、大使館職員は、皆様のものとも合致するであろう我々の具体的関心事項について、より十分に説明し、また、我々がよりいっそう協働することが出来る方法を見つけ出すために、貴会議の担当ワーキング・グループにもコンタクトさせていただきます。
有り難うございました。
（総合規制改革会議におけるマイケル・マハラック駐日米国大使館 経済担当公使の意見表明（２００１年１０月１日／於：内閣府）http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/010/1-1.htmlより一部抜粋して転載終了）
そして、ここに登場する宮内氏の人脈と任務とは以下のようなものである・・・と言いたいところであるが、容量オーバーになりそうなので改めて投稿する次第である。
（２ちゃんねるのスレッド「弁護士に未来はない」http://school.2ch.net/test/read.cgi/shihou/1035183259/l50より一部抜粋のうえ転載貼り付け開始）44 ：氏名黙秘 ：02/10/22 04:04 ID:???
2002年07月29日号 【高額納税弁護士】２００２年度東京３弁護士会所属上位２２１人のランキング
氏 名 所属法律事務所名 事務所所在地 納税額
1 升永英俊 東京永和法律事務所 虎ノ門 3億4374万2000円
2 阿部省吾 阿部・井窪・片山法事務所 八重洲 1億8261万5000円
3 牛島信 牛島法律事務所 南青山 1億6432万3000円
4 江尻隆 あさひ法律事務所 赤坂 1億3989万8000円
5 松島英機 ときわ法律事務所 虎ノ門 1億2676万6000円
6 河合弘之 さくら合同法律事務所 麹町 1億0937万8000円
7 清水直 清水直法律事務所 八重洲 1億0881万9000円
8 高井伸夫 高井法律事務所 九段 1億0310万1000円
9 岩倉正和 西村総合法律事務所 赤坂 9572万4000円
10 久保利英明 日比谷パーク法律事務所 日比谷 9224万2000円
11 奥野善彦 奥野総合法律事務所 京橋 8937万8000円
12 篠崎芳明 篠崎芳明法律事務所 虎ノ門 8796万0000円
13 柳田幸男 柳田野村法律事務所 有楽町 8211万0000円
14 岡部真純 岡部綜合法律事務所 虎ノ門 7472万0000円
15 品川澄雄 品川法律特許事務所 渋谷 7368万9000円
17 黒田健二 黒田法律事務所 虎ノ門 7257万5000円
18 今井和男 虎ノ門中央法律事務所 虎ノ門 7253万3000円
19 溝呂木商太郎 岩田合同法律事務所 丸の内 7103万6000円
20 中島徹 長島・大野・常松法律事務所 紀尾井町 6984万0000円45 ：氏名黙秘 ：02/10/22 04:05 ID:???
21 井窪保彦 阿部井窪片山法律事務所 八重洲 6888万3000円
22 松尾翼 松尾綜合法律事務所 銀座 6459万3000円
23 中村直人 日比谷パーク法律事務所 日比谷 6377万1000円
24 草野耕一 西村綜合法律事務所 赤坂 6204万5000円
25 小林啓文 森総合法律事務所 丸の内 6000万9000円
26 綾克巳 ときわ総合法律事務所 虎ノ門 5869万2000円
27 鳥飼重和 鳥飼総合法律事務所 神田小川町 5810万7000円
28 小野孝雄 小野孝雄法律事務所 有楽町 5793万4000円
29 木南直樹 フレッシュフィ―ルズ法律事務所 赤坂 5785万3000円
30 下條正浩 西村総合法律事務所 赤坂 5768万7000円
31 吉武賢次 協和特許法律事務所 丸の内 5748万8000円
32 小野傑 西村総合法律事務所 赤坂 5740万4000円
33 米正剛 森総合法律事務所 丸の内 5670万0000円
34 大岸聡 西村総合法律事務所 赤坂 5651万1000円
35 米田隆 西村総合法律事務所 赤坂 5648万0000円
36 小杉晃 西村総合法律事務所 赤坂 5578万4000円
37 岡田和樹 フレッシュフィ―ルズ法律事務所 赤坂 5501万7000円
38 腰塚和男 腰塚法律事務所 神田須田町 5443万9000円
39 千石克 西村総合法律事務所 赤坂 5277万7000円
40 藤原総一郎 森総合法律事務所 丸の内 5241万6000円75 ：氏名黙秘 ：02/12/20 08:43 ID:0iQjzBdJ
ロースクールに移行したら私大とかに講師として招かれることとかあるんじゃないの？
予備校もロースクール対策予備校として、形を変えるだけでなくなるわけじゃないし、
予備校講師として食っていく手だってあるじゃないか。
頭固すぎ。法廷や渉外だけが弁護士の仕事じゃない。自らの手で無限大に営業できる。
それが自由業たる弁護士の魅力。
安定が欲しけりゃ頑張って裁判官か検察官を目指せ。
そこで待っているのは普通の役所と変わらない東大崇拝主義だからｗ76 ：氏名黙秘 ：02/12/20 08:55 ID:???
弁護士と結婚したいので弁護士になるつもりです。
77 ：氏名黙秘 ：02/12/20 09:06 ID:???
弁護士になる気がないのに未来うんぬんを語られてもな−。
悲観的になれば世界は終わっているって結論になるな。
そういう奴は世界ではなく自分が終わっているんだろうな。
とにかく１はがんばってくれってこった。78 ：氏名黙秘 ：02/12/20 09:41 ID:???
>>75
俺もそう思う。
例えば、スポーツ選手の代理人制度が拡充していけば
弁護士の仕事も広がる。79 ：氏名黙秘 ：02/12/20 10:06 ID:???
弁護士は所詮は自由業なんだから、個人の才覚がものをいう。
やる気と才能のある弁護士には未来があり、
やる気も才能もない弁護士には未来がない。
それだけ。それは、不況だろうが何だろうが、儲かっている事務所はあるし、
どんなに景気が良くても生活保護を受けてるような弁護士もいる
ことからもわかること。対して、一般のサラリーマンや公務員は、どんなにがんばっても、
見返りは高が知れている。せいぜいボーナスに色がつくだけだ。さらに数年に一度は、配置換えで強制的に仕事や住所さえ変更させられ、
いよいよ会社が傾けば、否応無くやめさせられる。
言葉は悪いが、金でつながれた奴隷と一緒だ。どちらを選ぶかは個人の自由だ。職業選択の自由だからな。
（２ちゃんねるのスレッド「弁護士に未来はない」http://school.2ch.net/test/read.cgi/shihou/1035183259/l50より一部抜粋のうえ転載貼り付け終了）
（「国際化検討会（第８回）議事録」http://202.214.63.114/jp/singi/sihou/kentoukai/kokusaika/dai8/8gijiroku.htmlより一部抜粋のうえ転載開始）○下條委員 勿論、外国法事務弁護士が日本法についてアドバイスが欲しければ、特定共同をやっている相手方のパートナーである日本弁護士から聞けばいいわけですから、特に雇用を認める必要はない。雇用を認めるということはむしろ弊害があるんじゃないか。
先ほど来から申し上げておりますように、外国法事務弁護士がだんだん自分たちのやることを広げていって、最後は日本法まで事実上やるような形に持っていこうとしていると、その点があるかと思います。
もう一つ重要な点は、日本弁護士はなかなか最初から一人前というわけではなくて、日本弁護士は日本の弁護士によって教育されて、日本法についてのいろいろな研修を受けて、ようやく一人前になるわけですから、私どももよく経験するんですけれども、研修所を出てきて１年目の弁護士というのは、なかなか使い物にならないわけで、それを鍛えるのには、３年ないし５年という時間がかかるわけですので、そういった教育という面も非常に大きいのではないかと思います。
○波江野委員 最近の企業法務、ビジネス法務の世界では、少数の弁護士で処理していただける案件も勿論ございますが、かなり大規模な組織体制で弁護士に仕事をやっていただくということが多くなってきております。ジョイント・ベンチャーとか合併という場合には多くの分野を担当する多数の弁護士が必要です。そうすると、組織的に仕事を行うためには、特定共同事業のパートナーだけではなく、そこに若手の人が、イソ弁でもアソシエーツでもいいですが、参画して、組織的に多人数で取組んでもらう必要があるという気がいたします。
その場合に、今、下條委員のおっしゃったように、確かに若手だったらすぐに一人前にならない、育成しなきゃいけないというときに、日本人弁護士でなければ育成できないわけではなくて、これは法律的に許されるかどうか私には分かりませんが、共同事業という事業体で日本弁護士を雇用する。そういった道もあるのではないでしょうか。先ほど下條委員は二重雇用と言いますか、外国法事務弁護士にも雇用され、日本人弁護士にも雇用されるという格好だと説明されましたが、もう少し割り切って考えることもできないのかなという感じがしますが、そういう道はないのでしょうか。
○下條委員 ちょっと難しいんじゃないかと思います。よく私どもは新しい弁護士が入ってきますと、一応指導担当委員とか決めて、勿論、みんな集めて大体私どもの事務所ですと、半年くらいいろんなセミナーをやるわけです。つまり、司法研修所から出てきた人は、証券取引法とかいうのも知りませんし、例えば独占禁止法とか、いろんなテーマに分けてセミナーをやるということで、それが半年くらいかかるわけですけれども、そういった教育を経て、その後に更にオン・ザ・ジョブ・トレーニングというか、それはやはり指導担当の弁護士がいて、その指導担当の弁護士からいろいろ教えを受けて、だんだん一人前になっていくわけです。
そういう意味で、そういった人がいきなり外国法事務弁護士と共同するような形になってしまうと、どうしても日本法についての素養が十分できないんじゃないかという心配があります。
○齊藤参事官 現行制度としては、外弁が日本の弁護士から日本法についてのアドバイスを受ければ外弁は日本法を自由に取り扱っていいということではないという前提です。それは日本法についてのアドバイスを幾ら受けたとしても、外国法事務弁護士が自ら日本法を扱うということ自体は原則これは禁止されているという前提です。ただ、そういう前提の下で、しかし、日本で法律事務を行うわけですから、日本の弁護士を雇用して活用するいろんな面での必要があるのではないかと思われるんですが、それが具体的にどういうことかということをよく踏まえておきたいということでニーズ論を論点項目としてとらえているわけです。
○久保利委員 もう一つお聞きすると、雇われた日本弁護士は直接外弁のクライアントに日本法を言うこと、これはできるということですね。
○齊藤参事官 被雇用の弁護士が自分自身の事件として、自分の責任でリーガル・サービスを提供することは、雇用関係の中でそれが許容されていれば可能だと思います。しかし、被雇用の弁護士が提供されるリーガル・サービスが実質的には雇用主のためのものだと評価できれば、雇用主が日本法を取り扱ったという評価に原則なるんだろうと思うんです。それは外弁法の４条に違反するという仕分けです。
○久保利委員 今の参事官の御説明のような、自分の事件として、自分の責任で云々というと、それはむしろ雇用の問題というよりは、相手方、すなわち特定共同の相手方のような存在になってしまうということを意味するわけですか。
○齊藤参事官 ですから、雇用関係の中にあっても、言葉は悪いかもしれませんが、アルバイトで自分の事件も一定程度処理してもいいよという形態もあり得るんだろうと思うんです。ですから、仮に外国法事務弁護士が弁護士を雇用できるというような制度を日本でも取り入れたときに、日本の弁護士が固有の日本法についての事件、例えば国選弁護事件などを一定程度経験したいというときには、これをできないというふうに規制してしまう必要はないと思うんです。そういう部分的に本来の独立した日本の弁護士として行い得る領域も認めつつ、雇用関係にもあるということは、バリエーションとしてはあり得るんだろうと思います。
○齊藤参事官 今の乗越さんの設定はちっと特殊な設定になりますので、それはさておいていただいて、雇用に関するかなり本質的な議論になっていると思うんです。日本の資格制度を念頭に置きながら、外弁法の下でも４条で職務範囲外の法律事務を取り扱ってはならないという規定があるわけなんです。よくこれまで雇用を認めるべきか、認めるべきでないかという議論になったときに、外国法事務弁護士が弁護士を雇用して、その雇用した弁護士に日本法に関する法律事務を自由にやらせて、そこから得られた収益を、まずは外国法事務弁護士が受け取って、その上で被雇用の弁護士との給与の問題を更に処理するという形というのは、従前日本では、それは被雇用の弁護士を活用することによって、雇用主自身が日本法を取り扱うことにほかならないというふうに考えられてきていたわけなんです。
現行の制度で日本の資格法制度そのものの構造は何ら変わっていませんので、一応被雇用の弁護士を活用することによって、つまり、そこに指揮命令が機能していて、その範囲内で日本法を取り扱っていると。そういう現象というのは、これは実質的に言うと、雇用主が日本法を取り扱うという現象だと一応考えられるのではないかと思います。
問題は、実質的に弁護士を雇用すれば、必ずそういう現象にまで結び付くかどうか。そこのところはもう少し吟味していただきたいと思うんです。雇用されたこと自体で、必ず職務範囲の逸脱という現象に結び付くのか。いや、雇用された上での被雇用の弁護士と雇用主との間の業務のやり方いかんでは、当然には職務範囲の逸脱という現象は起きないんではないか。もし、そうだと考えることの合理性があるならば、雇用自体は認めても、そこでの活動の内容をうまく考えていけば、雇用という１つの形態を活用して、外国法事務弁護士と弁護士との間の、いい意味での協力関係というのが発揮できるのではないか。この辺りがポイントなのではないかと考えております。
○下條委員 先ほど私の提出した資料で説明しましたけれども、ＩＢＡにしろ、ＡＢＡにしろ、弁護士の判断の独立性というのは非常に重要視しています。弁護士の判断の独立性を守ることがまさに公益に資することであると。これはＡＢＡもＩＢＡもいずれも言っていることです。
ですから、そういう面から見て、やはり弁護士が外国法事務弁護士の指揮・命令・監督下に置かれて、そうなるとまさに法律判断の独立性というのは非常に害される。そこのところからまさに雇用の禁止が来ているということがあるわけです。
ですから、もし、外国法事務弁護士のニーズと言われましたけれども、ニーズはいっぱいあると思うんです。つまり、先ほど来申し上げておりますように、外国法事務弁護士は原資格法から指定法、それから第三国法とだんだん広げてきたわけですから、日本法もやりたいわけなんで、それは日本の弁護士を雇用してやりたいわけですけれども、やはりそういうところでもって、法律判断の独立性というのは万国共通の重要な要素だと思いますので、それは重視して、これは許すべきではない。もし、どうしてもやりたければ、今は特定共同事業という制度が認められているわけですから、特定共同事業を組んで、日本の弁護士からアドバイスを受ければいい。あるいはケース・バイ・ケースでやってもいい。そういうふうに考えます。
○下川委員 今、下條委員がおっしゃった法律判断の独立性という観点からなんですけれども、この前も論点の整理の中で若干出ていたと思うんですけれども、他方で企業に雇用される弁護士というのがいて、その場合には企業のために弁護活動をするわけですから、とりあえず第三者へのサービス提供というのは抜きにしても、法律判断の独立性という観点から言えば、雇用者である企業の方向性とか政策的な判断等に相当影響される可能性がある。
他方で、外弁が雇用した場合の弁護士という場合は、外弁も弁護士も共に弁護士倫理に拘束されている、尊重する形になっている。そういうことで考えると、雇用者も被用者も弁護士倫理の枠内で権限のないこと、能力のないことについてはやらないという原則の下で職務を遂行していくわけですから、それほど雇用ということによって直ちに判断の独立性が害されるのかなと。そこはちょっと必ずしも納得できないところです。
○柏木座長 たまたま今の下川委員の御発言で次のポイントに移るわけですけれども、外弁法49条１項は雇用を禁止しているわけですけれども、これを撤廃しても、外弁法４条によって、外弁が自己職務範囲外の法律事務を扱うことは禁止されているわけです。だから、雇用主たる外弁が被雇用弁護士を指揮・命令して、日本法に関する法律事務を取り扱わせれば、これは雇用の問題に関係なく外弁法違反となるわけであります。
そういう状況で、更に雇用まで禁止する必要があるかということが問題になるんだろうと思います。
ちなみに、さっき道垣内委員がおっしゃいましたけれども、今のところの規定としては、公認会計士事務所が弁護士を雇用してもいけないという規定はないんですね。
○下條委員 そうですね。今は、営業許可という制度がありまして、営業許可の方でチェックされているわけです。ところが、だんだん営業許可も届出制の方に移りつつあるという状況です。
○下條委員 我々は制度設計の問題を話しているんであって、各国の弁護士制度でもいろいろなものがあると思うんです。非常に簡単に弁護士になれるところもあるかと思います。アメリカとかイギリスとか、道をきちっととしたところもあるし、それらをなべて同じに扱わないといけない。そういう制度設計の問題を話しているんだということをいつも留意しないといけないと思います。
加藤委員は、我々は自分で自分をプロテクトできるとおっしゃいましたけれども、そうでないユーザーも一杯いるわけです。ですから、何も大会社とか、自分で自分をプロテクトできる人だけじゃなくて、更に一般的な法律サービスの利用者もいるわけですから、あくまでも制度設計の問題として考えるときは、その両方を頭に入れて考えないといけないんじゃないかと思います。
○下條委員 今おっしゃられたことについて、これはたしか小島教授でしたか、弁護士と外国法事務弁護士もなるべく同じようなものとして見ていこうということで、今、関連しているかと思うんですけれども、私はやはり違うと思うんてす。そもそも拠って立つ基盤が違う。つまり、私どもは日本法をやる。アメリカの弁護士であればアメリカの法律をやるということで、法律というのはなかなか全世界を統合することが難しい。つまり、いろいろな文化的、社会的、歴史的背景があるわけですから、そこが非常に違う。前に申し上げましたように、いろんな例を見ても、プレッジと質権は違うとか申し上げましたけれども、いろんなものが違うわけです。ですから、そこを同じものと言い切ってしまうのは非常に難しいんじゃないかと考えます。
○齊藤参事官 日本の制度と諸外国の制度と、制度に差があるという自体、絶対否定するつもりはないんです。むしろそれぞれ独自性なり特殊性というものを尊重すべきだと思います。ただ、弁護士の本質的な部分として、弁護士自身の専門的な判断を尊重しなければいけない。尊重することの意義は大きいんだということの認識自体はどうもＡＢＡでも日本でも、その部分は共通しているんではないかなということを一面強調しておきたいということなんです。
○下條委員 ただ、現実問題は必ずしもそうではないですから。
○柏木座長 議論が尽きないわけですけれどけも、この論点項目に関しましては、もう１つ、雇用が解禁された場合の弊害と、弊害がもしあるんであれば、どういう対策を取ったらいいか。さっき道垣内委員から、事後規制ばかり考えないで、事前規制も考えた方がいいというような意見がございましたけれども、雇用した場合に外弁が弁護士を指揮監督して日本法を行わせるというような可能性が非常に高いのかどうかということについても議論のポイントになろうかと思いますけれども、弊害があるのかどうか。あるとすれば防止策はどうしたらいいのかということについて御意見がありましたらお願いいたします。
○下條委員 私も道垣内委員と全く同意見で、先ほど言いましたように、弁護士は命も預かれば財産も預かる。死んでしまってから、事後的に考えてもしようがないわけですし、先ほど道垣内委員がおっしゃったように、会社がつぶれてしまってから、事後的措置を考えてもしようがないわけですから、やはりある程度の事前の規制というのはどうしても必要ではないかと思います。
○乗越委員 それはリスクとそれに対応する制度の問題のバランスの問題だと思います。確かに死んだ後で何か言ってもしようがないというのはそうかもしれませんけれども、それでは一般に死ぬまでいかないような人がほとんどなわけで、そういう人たちのニーズというのはどうするかというところでバランスを取ることを我々は求められているんではないかという気がいたします。
ですから、こういう可能性が少ないけれども、こういう可能性がある。そのためにこういうがっちりした制度をつくらなければならないということをやることによって、かえって使いにくい制度になっているというのは本末転倒のような気がいたします。○下條委員 そのようなものは、現行の特定共同事業でも十分対応できるものではないかと思います。
（「国際化検討会（第８回）議事録」http://202.214.63.114/jp/singi/sihou/kentoukai/kokusaika/dai8/8gijiroku.htmlより一部抜粋のうえ転載終了）