医療分野で、「資格」新設が流行しそうな気配です。以下、ヨミウリオンライン、アサヒドットコム、UMIN SQUARE一般公開ホームページサービスより抜粋転載します。
(転載開始)経産省、病院経営近代化に向け人材育成プログラム作成
「昔ながらの病院経営の近代化」を促そうと、経済産業省は４月から、有識者研究会を設置し、医療関係者の人材育成プログラムの作成に乗り出す。
生労働省とも協力し、経営の効率化に加え、医療ミス防止のための管理体制、患者の視点を踏まえた医療サービスの質の向上などを目指す。
経産省は４月に医療関係者や経営学者らによる研究会を設置する。病院関係者を対象に全国規模のアンケートを実施して現場の要望を把握し、新年度中にプログラムと具体的な事例を盛り込んだ教材の内容を固める。２００６年度から医療団体や大学などと連携し、病院長、医療法人理事長のほか、金融機関の病院融資担当者、医学部学生らの研修や教育に取り組む。(以下略)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050308i101.htm
「良質な開業医」育てよう 家庭医療学会が認定制度良質な診療ができる「町のお医者さん」を育てよう――日本家庭医療学会（１１００人）は、患者の家庭環境をふまえて病気やけがの初期診療ができる若手医師を「家庭医」として認定する。医学関係の学会の認定医や専門医制度は専門分野に特化したものが多く、初期診療では整備が遅れていた。同学会は家庭医の先進国・英国の学会と連携し、高い診療レベルをもつ家庭医を根付かせたい考えだ。(以下略)
http://www.asahi.com/health/medical/TKY200503070590.html東京大学大学院医学系研究科
生命・医療倫理人材養成ユニット社会人（医学、看護等、医療系大学の教員・職員、研究所等の研究員・職員、病院の倫理委員会の委員になりうるすべての職種の方）を対象に、倫理委員会の運営を担い、現場で倫理的問題に的確に助言を行うことができる人材を養成することを目的としています。修了者には修了証書を発行します。
http://square.umin.ac.jp/CBEL/index.html
(転載終了)最初の記事では、将来的に「医療経営士」とか「病院経営管理士」なんていう資格創設につながるかもしれませんし、最後の人材育成ユニットは医療倫理に関する「東大スタンダード」をde fact standard(デファクトスタンダード)にしようという試みでしょう。
一般的に、資格が意味のあるものとなるためには、いくつかの条件があるように思います。第一に、法令によって定められている場合。例えば「産業医」ですと、「常時５0人以上雇用している事業所」は労働安全衛生法の定めにより産業医を選任して労働基準監督所に届け出なければなりません。そして産業医を名乗るには、日本医師会主催の講習会に出席して５０単位以上を取得する、などの要件を満たすことが必要です。
第二に、おカネが絡む場合。たとえば、現在進行中の「専門医」と「非専門医」で診療報酬に差をつける、という試みなどがこれに当たります。ちなみに、どこの学会でも、このところ、専門医資格の取得や更新にかなり強いしばりをかける方向にあるようです。財源の問題を考えて、人数を絞るだけ絞る、ということなのでしょうか。
第三に、多数の人の指示を受けている場合。具体例は思いつきませんが、上記の東大の「生命・医療倫理人材養成ユニット」などは、これに該当するかもしれません。
新しく作られた資格が生き残るためには、これらの点をクリアすることが重要と思われます。たとえば、最近報道された「医療心理士」。これはいままでの「心理療法士」とバッティングする資格ですけれども、「心理療法士」のカウンセリングには健康保険適用がないのに対し、｢医療心理士｣のそれには利用できます。従って、｢医療心理士｣は生き残ります。また、抗がん剤治療の専門医資格である「臨床腫瘍専門医」(内科系)「がん治療専門医」(外科系)。こちらの方は、おそらく、混合診療がらみで有力な資格となっていくことでしょう（上の条件で言うと、一と二が該当します。）
それでは、引用した記事にある「家庭医」はどうか？病診連携や医療施設再編問題を背景に、いわゆる「かかりつけ医」制度に財政的支援や法的規定が備われば有力となります。ただし、この手の学会には「プライマリーケア学会」なんていうのもあったと記憶していますので、学会間でのせめぎあいが十分予想されます。また、「かかりつけ医」となりますと、日医の実力は無視できないものがありますので、日医を学会側がどう取り込むかというのも、ひとつの焦点です。
カナダでも、共稼ぎ世帯の保育所問題には、アタマを悩ませているようですね。以下、『カナダこのごろ』(2005/03/06)より転載します。(転載開始)
デーケアの課題
「若い共稼ぎの家庭では『デーケア』が焦眉の問題だ。 都会でも田舎でもなかなか適当なデーケアがないのが実情。 乳幼児を抱えて働きに出なければならない親にとっては危機的な状況にあると言える」
「シングルマザーにしてもダブルインカムの夫婦にしても、親が子供を置いて働きに出かけるとなれば、車はもう一台必要になる。 外食やテークアウトも増えるだろう。 外出着も必要だ。 それになんと言っても子供の世話をしてくれる子守か託児所が絶対必要だ。 しかしそれが見付からないので絶望的ストレスを覚える人達も多いはずだ」
「カナダ政府は1970年からデーケアの充実を公約に掲げてきたのだが、歴代の内閣はそれをいつも見送って空手形にしてきた。 マーティン内閣は今年になってようやく$50億の資金を向こう５年間支出することにしたが、社会的に最も重要な課題にやっと一歩を踏み出したというところだ」
「ＯＥＣＤの報告によると、先進国の中でもカナダは大分遅れているようだね。 施設が足りないだけでなく、スタッフも足りない。 しかも訓練が不十分で、給与も低いから、定着率も悪い。 デーケアを必要とする子供は大勢いるのだが、その20%しかデーケアで預かっていないというのだから。 イギリスでは60%。 フランスでも70%。 デンマークは80%だというのに」
「でもカナダでもケベックは進んでいるそうじゃないか」
「そうだ。 １人１日$7,\600で預かってくれる。 勿論それだけじゃ足りないから、州政府が年$13億出して補助している。 これは大変な額だよ。 それで165,000の子供はデーケアに入っているのだが、まだ35,000がウェイティングリストだ」
「ケベックの$7は例外としても、他の州では平均して親の負担が毎日$30,\2,500はかかる。 それでも足りないから州政府からデーケアに補助が出るのだが、それも州によってかなりの差があるから一律に言えない」
「バンクーバーのダウンタウンでは最近再開発が進んでいるが、新築の高層コンドミニアムが林立している。 そして、かつて郊外に移った若い人達も都心に戻ってきている。 過去５年間に150%も人が増えたそうだ。 これから赤ん坊のブームタウンになるだろう。 そこでバンクーバー市では建築許可の条件として、コンドミニアムにデーケアの施設を設ければ、高層ビルの階数を増やすことを認めている。 こうして建築家がデザインしたモダンな質の高いデーケアの空間が最近でも８箇所オープンした」
「でも、まだ1,400人がウェイティングリストで待っているそうだね。 妊娠３ヶ月目に申し込まないと間にあわないそうじゃないか」
「それにこのデーケアの費用は月$1,000かかる。 利用できるのは香港からの富裕な移民が主になるのではないか。 払える能力のある家族はバンクーバーの親の15%に過ぎないそうだから」
「しかし健康な子供を持つ親はまだ幸せだよ。 今急激に増えつつある自閉症の子供、そして身体や心の障害をもつ子供達のことを考えれば、そういう障害児のためのデーケアこそこれから揺るがせにできない課題だ」
(2005/03/05)
(転載終了)
以下、Nikkeiネットより転載します。(転載開始)
受託収賄で広島大教授を逮捕・広島地検
広島地検は3日、民間病院への医師派遣をめぐり、額面100万円の小切手を受け取ったとして、受託収賄の疑いで広島大原爆放射線医科学研究所（原医研）教授峠哲哉容疑者（62）＝広島市西区＝を逮捕した。同容疑者は容疑を認めているという。
贈賄側の医療法人理事長らは公訴時効（3年）が成立している。
広島地検によると、理事長らは「自分の病院を広島大の関連病院にしてほしい」と重ねて要請。峠容疑者が1989年、教授に就任した後、関連病院になっていた。
地検は容疑を裏付けるため、原医研や峠容疑者宅など関連先を捜索。地方の民間病院の医師不足が事件の背景にあるとみて、100万円の小切手のほかにも現金授受がなかったかどうか峠容疑者を本格的に調べる。
調べでは、峠容疑者は広島大病院の外科診療科長だった1999年10月ごろ、広島県外の医療法人理事長らから「腫瘍（しゅよう）外科医局員の中から病院へ医師を派遣してもらいたい」と頼まれ、2001年5月ごろ、学内で理事長から100万円の小切手を受け取った疑い。〔共同〕 (13:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050304AT3K0400A04032005.html
(転載終了)例によって「雑駁」なコメントです。
たしか、「受託収賄」立件の三点セットは、「金銭授受」「請託」「職務権限」でしたね。この記事を見る限り、立件に十分な条件を備えているようです。
医師派遣をめぐる金銭授受の例は、東北大をはじめいままでにいろいろ報道されて来ましたが、逮捕まで至ったのは今回が初めてでしょう。たぶん、立件されなかった例では講座や研究プロジェクト宛の寄付金として金銭を受け取り、しかも寄付されていた事実を文書で公開していたのに対し、今回の例では教授個人が受け取り、金銭のやり取りを公にしなかったことが原因なんでしょう。
ふつう、医療施設から受け取った寄付金の類のおカネは、実験試料・器具の購入、留学生の生活費、医局員への差し入れ(夜食など)などなど、こまごまとしたことで広くばら撒く形で使われて(使い切られて)いると理解しています。果たして今回はどうだったのか？
なんとなくですが、「内部告発」の匂いもしますしね。
速報（ちょっと遅いですが・・・）です。イギリスではアリセプトがＮＨＳ(National Health Service) の適用から外されるようです。医学的に効果は認められるものの、値段に見合うほどではない、というのがその理由です。以下、Alzheimer’s SocietyのＨｐより転載します。http://www.alzheimers.org.uk/（転載開始）
Nice declares drugs for dementia too expensive to be prescribed on NHS
28 February 2005On 28 February 2005, Nice (National Institute for Clinical Excellence) issued draft guidance which says that Reminyl, Aricept, Exelon are not cost effective treatments for Alzheimer’s disease and should not be made available free on the NHS. Nice also says that Ebixa is not clinically or cost effective.
Neil Hunt, chief executive of the Alzheimer’s Society, said,
We are shocked by Nice’s initial recommendations, which, if finally approved, will deny thousands of people with dementia the only drug treatment available to them. These drugs are not a cure. They don’t work for everybody. But they can make a real difference to quality of life and their importance to many carers and people with dementia cannot be overestimated.
Nice believes that these drug treatments are not good value for money. We think they are. These drugs cost about £2.50 a day. Nice seems to have concluded that people with dementia are a group that it is not worth spending money on. We all need to let Nice know why they have got it wrong.
http://www.alzheimers.org.uk/News_and_Campaigns/News/050228Nice.htm
（転載終了）そう云えば日本でも、いわゆる「まるめ方式」が採用されている高齢者向け施設では、「ウチでは、アリセプトは処方しません。ただし、よその施設で処方してもらったアリセプトを個人的に飲むのはかまいません。」などということが、現実にあるようです。今回の英国の決定は、わが国にも影響を及ぼしそうですね。
少子化対策については、新聞記事を読んでいても「へー」てなもんで、なかなかリアリティーがありません。しかし、現実に子育てをしている親の話を聞くと、なるほどなあ、と思わされます。以下、メールマガジン 『東洋経済 CATCH・EYE。No.307』より転載します。(転載開始)
「『少子化』はまだ止められる！」 パティシエからの一品
昨年の「年金」に続き、今年は「少子化問題」が一大焦点になるのでは、ということで、今週発売の『週刊東洋経済』３月５日号の第２特集は、「『少子化』はまだ止められる！」です。
（http://www.toyokeizai.co.jp/mag/toyo/2005/w0305.html ）私自身、晩婚・晩産を経験し、４１歳にして、いまだ４歳児と２歳児という２人の乳幼児の父親です。妻も１歳しか違わない「高齢出産」で体力に限界があることに加え、諸般の事情で当面は専業主婦に専念してもらわざるをえません。
でも、年功序列のサラリーマンでこの年だとさすがにそれなりの年収になり、所得制限で児童手当はもらえないケースが多く、乳幼児医療無料化の恩恵も薄く、専業主婦だと育児休業手当も無縁で、共働きでないと保育園にも預けられません。
かくして、社会保障ほぼゼロで何とか子育てを終えても、内閣府試算によれば、政府から生涯に受ける受益・負担は、現在の６０歳代以上が５６４７万円の受益超過なのに対して、我が子どもたちを含む将来世代は３９５２万円の負担超過。
親が自己責任・自己負担で苦労して育てた子どもたちは、労働力化の暁には実の親のみならず、どこの誰とも知れない中高年層の人々に搾り取られるばかり。「年金未納は若者の逆襲」と喝破された大学の先生がおられましたが、少子化もまた「子ども（＋の将来をおもんぱかった親）の逆襲」という面も強いのではないでしょうか。
ちなみに０２年度の日本の社会保障における「高齢者」関係給付費５８兆円に対し、「児童・家族」関係給付費はわずか１８分の１の３兆円。記事中にはあからさまには書かないけれど、「年金削ってでも、もっと少子化対策にカネ出せよ」というのが私の率直な感想です。
『週刊東洋経済』編集部 大滝俊一
(転載終了)「少子化は価値観の問題であり、財政政策でいじれるなんて思わない方がいい」なんて言っていたのですけれども、当事者が抱える問題はかなり深刻なようです。
★「もう」さんへ＞なおこうさん「ご指名」により現場からの投稿です。
「ご指名」にお応えいただき、誠に有難うございました。今後も勝手に「ご指名」させていただきますので、お時間の許す限り、お付き合いください。
＞マニュアル作りですが、・・・それぞれを作成するための「小委員会」が設置されて作成されるのが普通です。中小病院においても・・・院長名で公布というのが普通と思います。
なるほど。やはりキチンとした仕組みの下に作られるのが本筋なんですね。そうすると、誰が、いつ、何のために作ったか分らない「マニュアル」が「独り歩き」していた例の事件は、やっぱりマズイわけですね。
＞本来の医療はマニュアル通りにやって６０点・・・患者というのは１００人１００様であり、マニュアル医療を発展させて最も適する医療を模索することで７０点８０点の医療になってゆく
おっしゃる通りですね。いわゆる「臨床の知」と言うものが、とても重要だということですね。そこに、臨床医の経験に基づいた「コツ」とか「カン」の介在する余地がある、と。
＞医療のマニュアル化、quality control、医療事故補償の高額化は・・・一連の事態
まったく同意見です。そして、たぶん、その背景には、一連の司法改革(弁護士数の拡大、裁判員制度の採用など)があると思います。
弁護士の数がドンドン増えていくと、当然、メシの食えない弁護士が出て来ます。そこで、お客さんをそそのかして訴訟を連発するようなことになります。裁判員制度が拡充してくれば、たぶん、医事訴訟で原告が勝つ確率が１００近くになるでしょうから、そのうち、病院の前で患者さんをつかまえては「この病院、訴えません？」「主治医に不満はありませんか？裁判で一緒にやっつけましょう！」なんて客引きをやるようになります。
そうなりますと、医師は「如何に患者を治療するか」というよりも「どうやったら訴えられないか？」を重視するようになります。そして、「マニュアル」や「ガイドライン」に盲従して、「もう」さんのおっしゃる「６０点」の医療以上のことをやらなくなってしまうでしょう。
「７０点８０点の医療」を実践しようとすれば、当然マニュアルから逸脱します。問題は、逸脱する｢根拠｣が十分あるか、ということでして、論文がキチンとでているのかどうか、しかも、その論文が掲載されたジャーナルの信憑性が十分かどうか、などなど、裁判で負けないだけの証拠が必要となります。ですから「臨床の知」に基づいて、「こうやったらいいのになあ」と思っても、「公判維持」出来る証拠が揃わない以上、「マニュアルどおりで行こう」となるのは、必然だと思います。ひと言で言いますと、臨床医が萎縮してしまう危険性が高い、ということですね。
皆さん、なおこうさんこんにちは「もう」です。
なおこうさん「ご指名」により現場からの投稿です。まず、マニュアル作りですが、「輸血実施マニュアル」「事故発生時対応マニュアル」といったものはそれぞれを作成するための「小委員会」が設置されて作成されるのが普通です。中小病院においても「輸血」であれば、輸血部や検査部が中心になってその部長を核として作成されて院長名で公布というのが普通と思います。
もっとも医療にはマニュアルに向く手順と向かない手順があることは皆さん承知のことと思います。医療事故でも薬剤誤投与のように専門家でなくとも明らかにミスと解る物を防ぐための手順にはマニュアルが向いていますが、「誤診」を防ぐためのマニュアルはいかがなものかと思いますね。「レジデント救急マニュアル」といった本をよく見かけます。確かに初心者にとって大変役に立つ本で、私もお世話になりましたが、本来の医療はマニュアル通りにやって６０点（訴えられるような間違いを犯さないという意味で）ということを肝に銘じておくべきです。患者というのは１００人１００様であり、マニュアル医療を発展させて最も適する医療を模索することで７０点８０点の医療になってゆくものです。米国で問題とされる「標準治療以外の医療には保険診療を出さない」といった問題（これは日本でも大学病院などでの診療費包括化によってすでに導入されている）は医療そのもののマニュアル化を進めるものとして問題にされるべきです。クレーム処理、というのは事務系の総務課あたりが当たっている病院が多いと思います。クレームで最も多いのは待ち時間や順番、支払いに関する事、食事や入院環境などであり、医師に対する事はさほど多くないのが実情です。「医師に対するクレーム」というのはやはり「余程の事」と解すべきなのでしょう。余程でないトンデモクレーマーも沢山いますがその話題は後日。
医療におけるQuality Contorolというのが実は一番難しい問題で、しかも一番弱い部分と言えるかも知れません。マニュアルに向く医療手順についての同僚によるpeer reviewは比較的容易であり、カルテや報告書を元に事後判断をすることも可能です。しかしマニュアルに向かない内容を判定することはかなり難しいと言えます。
話がやや逸れますが、近ごろの医療ミスにまつわる判決の特徴は医療者にも刑事責任を問うようになってきたことと、損害賠償として医療側に支払いを請求する額及び結審の後支払いを命ずる額が交通事故などに比べて多い事です。２月に報道された例を示すと
１６歳女性の抗がん剤誤投与で死亡 ８３７０万円賠償 控訴
３７歳男性誤診で植物状態 １億５７００万円で和解
３０代女性手術時の神経圧迫で手に障害 ４５００万円で調停
５４歳男性誤投薬で死亡 医師に業務上過失致死罪で起訴
７０代男性腸閉塞処置遅れで死亡 ２５００万円で示談
５６歳心筋梗塞後の治療で麻痺 ４０００万円賠償命令
７０歳男性血液型間違い輸血死亡 医師４人書類送検
６５歳男性脳動脈瘤手術後出血で死亡 ４０００万円賠償命令２００３年９月２８日の副島先生のぼやきに、交通事故における賠償額決定は「ホフマン式」というものに基づくのだと紹介されていますが、どうも医療については交通事故よりも提示額が多い印象があります。
厚労省は医療事故「アクシデント」事例の報告義務を医療機関に課していますが、将来「予定以上に入院期間がかかった例」「再手術などの予定外の医療を行った例」についての報告も義務づける方向にあるようです（事例収集のパイロットスタディは既に行われています）。そして心臓手術など高度な手技を要求される医療は限られた施設のみで行われるよう方向づける意向があります。施設ごとの手術症例数の開示は既存の方針ですが、それとともに技術不足で治療に時間がかかった場合にペナルティを課する方向になっているようです。これは良い意味で医療のquality controlになり、医療のセンター化（心臓病センターなど）が促されますが、一方で地方で症例数の少ない病院では心臓手術などの高度医療が受けられなくなる可能性があります。また合併症を多く持った患者の治療も統計的治療成績の悪化につながる事から敬遠されることになります。つまり合併症のない患者を効率良く短期間で次々に治療するのが良い病院という結論になる訳です。合併症の多い患者程医療費もかかる。高額医療費上位１０％の患者が全医療費の半分を使っていることからも合併症の多い患者の医療を敬遠することは医療費の抑制につながります。また大学病院などで施行されている医療費の包括化もその一端であり、どんなに合併症があって高額な医療を行っても一日に支払われる医療費は同一で長期になるほど一日単価が安くなる設定になっています。
私には医療のマニュアル化、quality control、医療事故補償の高額化はどうも一連の事態であるように思えます。
以下、アサヒドットコムより転載します。(転載開始)
治療方針、患者８割「選択肢ない」 医師と意識に差
治療方針の決定に当たって、医師の９割は、患者に選択肢を示して同意や相談の上で決めていると思っている。だが、患者の側は８割近くが、完全に医師に任せるか、選択の余地なく同意せざるをえないと感じていることが、医薬産業政策研究所（東京）の藤原尚也、野林晴彦・両主任研究員の調査でわかった。
調査は、０４年１１、１２月に実施され、病院勤務の医師１１０１人と、一般の医療消費者１１３４人から回答を得た。
その結果、医師の８１％は治療法決定の理想として「複数の治療法を説明し、最良と思う方法に同意を得るインフォームド・コンセント」や「複数の治療法から患者と相談して決めるインフォームド・チョイス」を考えていた。８８％が、実際にもそうした意思形成をしていると思っていた。
ところが、大多数がインフォームド・コンセントやインフォームド・チョイスを理想とする点は同じでも、一般の人では７５％が、現実は「医師任せ」または「医師が最良と思う治療法に同意」とした。医師の認識とは正反対だった。
薬の決定では、理想についても認識が食い違っている。医師の６割が、「最良と思う薬に患者が同意」としたのに対し、患者側は８割が、治療同様「複数の選択肢から同意と相談で決めたい」と考えていた。
藤原さんらは「医療消費者は意思決定の過程を重視している。認識のギャップを埋めることが医療への満足度につながっていくだろう」と話す。 (02/26 13:19)
http://www.asahi.com/national/update/0226/009.html
(転載終了)以下、「雑駁」なコメントです。
恐らく、医師サイドとしては、複数の選択肢を基本的に提示していると思うのですね。ところが口頭で説明しているために、専門知識に乏しい一般患者さんは、唯一の処方しか示されていない、と感じてしまうのではないでしょうか？文章で「選択肢� ↓◆↓�」とか書いて説明されれば、なんとなく理解してもらえるような気がします。でも、これって、かなり｢テクニカル｣な問題ですね（本質ではないような・・・。）
この調査は「一般の医療消費者１１３４人から回答を得た」そうですけれど、調査のやり方がかなり雑だなあ、という印象を受けます。病気にもいろいろありまして、有力な治療法(処方)が複数存在するものもあれば、ほとんど「必然」＝「誰がやってもおんなじ処方」といったものもあります。いったい、「一般の医療消費者」がどのような病気を念頭において回答したのか、ぜんぜん分りませんね。たとえば、「悪性腫瘍の患者さんで現在化学療法を施行されている人１１３４人」というのであれば、かなり焦点が絞られて、相当有力な調査になったと思います。
それと最後の「医療への満足度につながっていくだろう」というくだり。これもちょっと？？？ですね。だって、患者満足度を測定していませんもん、この調査。測定していないものを「つながっていくだろう」なんて、いいかげんだなあ、と思います。たぶん、『「複数の選択肢から同意と相談で決めたい」と考えていた。』というくだりが「顧客満足度」に拡大解釈されているんでしょうけれど、この調査項目自体、かなりザルなんです。
たとえば、「中学生百人に聞きました。給食は�＾貅鑞�のメニューがいい�∧�数のメニューから選べた方がいい。さあ、どっちを選びますか？」と訊かれれば、たぶん、ほとんどすべての人が�△氾�えますね（あたりまえです。）だからって、現在一種類のメニューで供給されている給食に対して中学生が不満を抱いているのかどうか、即刻改善して欲しいと思っているのかどうか、これは全く分りません。
キチンとやるのならば、まず、「あなたはいまの給食に満足していますか�）�足�△笋篷�足��ふつう�い笋簓塰��ド塰�」という調査をやって、そのあとに「�い鉢イ亡櫃鬚弔韻真佑法�どういう点が不満ですか？�〔���温度��メニューが選べないところ�ぁΑΑΝァΑΑΑ廚箸い辰燭海箸鮨屬�。そして不満(満足)の程度とその理由との相関を取り、キチンと重み付けをした上で、「メニューを複数にすることで中学生の満足度が○○ポイント改善する」といった結果を出すべきです。これならちゃんと評価できます。
まあ、この調査のテーマは朝日新聞が好きそうなもので、都合の良い結果にすぐ飛びついたということなんでしょうけれども、ちょっと、なんだなあ、という気がしますね。あまり鵜呑みにする必要はないと思います。
中医協見直しに関する続報として、Risfax医薬経済のＨＰ（http://www.risfax.co.jp）から、「田畑日記」を転載します。会議の雰囲気がよくわかって、とても参考になります。(転載開始)
2月23日
今年の秋までに結論を出すという中医協見直し。その初会合が霞ヶ関ビルで開かれたわけですが、有識者委員は中医協関係者以外の５人。
毎回、厚労相が出席するそうで、席を並べる事務方は保険局長だけとこじんまり。
当面は座長も置かずに厚労相が議事進行役で、課長クラスは普段なら補佐とか係長が座るような事務方席に控え、当の中医協委員も関係者席で見守るという一風変わった雰囲気。
で、尾辻厚労相はさかんに、「不透明な改定プロセスまで踏み込むかどうかがカギ」と、諮問会議や規制改革会議が切り込みたいのは汚職事件なんかじゃなく、政治のサジ加減で決まってしまう診療報酬の改定率のところだと、やんわり諭すわけです。
ところが有識者の面々は「欧州の公的医療価格はどうやって決めてるの？」とか、「いろんな意見が出てるけど整理して」とか、お役所の審議会的にはしごくまっとうな発言を繰り返すばかり。「謙遜しないでシガラミのないご意見を言ってね」と尾辻さんは促すわけですが、「改定率がどうのと言われたってよくわかんないよ」と反応薄。台本に書いてなかったんですかね。
この会議、田畑には、諮問会議／規制改革会議対厚労省じゃなくて、厚労相対厚労省に見えました。
まぁ尾辻さんも「点数配分はそんなに大事じゃない」みたいなことを仰ってましたから、日医も一安心でしょうか。
http://www.risfax.co.jp
(転載終了)
以下、毎日インターアクティブより転載します。(転載開始)
医療事故「胃ろう」挿管ミス多発 技術不足…昨年、１５人死亡−−医師ＮＰＯ把握
◇病院マニュアルに問題も
腹と胃に開けた穴「胃ろう」に流動食用チューブを通す栄養管理法で、挿管ミスが原因とみられる死亡事故が多発している。０２年に千葉県で起きた事故では、医師２人が業務上過失致死容疑で書類送検され、チューブのメーカーの説明書にない交換方法が記された病院作成のマニュアルが使われていたことも、毎日新聞の調べで分かった。医師らで作るＮＰＯ（非営利組織）「ＰＥＧドクターズネットワーク（ＰＤＮ）」（事務局・東京都）には、同様のミスがあった病院などから、昨年だけで１５件の死亡事故の相談があった。患者の肉体的負担が少ない栄養管理法として急速に普及しているだけに、ＰＤＮは「知識や技術が不十分な医師による事故が多発しているとみられる。十分な知識を学んだ上で処置してほしい」と呼び掛けている。
千葉の事故は０２年２月、船橋市立医療センターで、脳障害で入院中の女性（当時２４歳）の処置中に発生。県警によると、管が誤って腹腔（ふっくう）内に挿入されて流動食が漏れ、腹膜炎から敗血症を起こして死亡した。胃ろうは消化器内科医が設置したが、管を交換した脳神経外科医と医療チーム責任者が書類送検された。
メーカーの説明書は腹壁と胃壁が癒着した後（目安は設置後１カ月）に管を交換するよう明記。だが、病院作成のマニュアルでは、最初の挿管後、１週間に２回、３週間で計６回、順に太い管に換えるようになっていた。事故報告書によると、脳神経外科医はマニュアルに従って行った３回目の交換でミスした。
同センターは胃ろうによる栄養管理法を９６年から導入したが、マニュアルは「誰がいつ作成したか分からない」という。事件後、「マニュアルにも問題があった」として作り直している。
ＰＤＮ代表理事で、東京慈恵会医科大外科学講座の鈴木裕講師は「胃ろうの壁が不安定な時期に管を交換すると、別の場所に入り込みやすいため、内視鏡などの確認のもとに行うのが好ましい」と話す。ＰＤＮに相談のあった１５件はすべて管が胃ではなく、腹腔内に入ったケースで、どの病院も原因すら分かっていなかったという。鈴木講師は「チューブ交換は基本を誤ると重大な事故につながる危険がある。セミナーなどによる知識向上が必要」と訴える。また、東京大医学部付属病院（東京都文京区）は０２年７月に胃ろうの外来担当を設置。担当の山口浩和医師は「別の医師が設置した胃ろうの向きを把握するのは難しい。担当者を決め、連携して設置と交換をしたほうが、安全とコスト面で優れている」と理由を説明する。【中川紗矢子】
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20050223dde001040002000c.html
(転載終了)メーカーで工場勤務経験のある小生が｢おや？｣と思ったのは、『マニュアルは「誰がいつ作成したか分からない」』という箇所なんですね。
製造現場で言うと、たぶん、標準工程書（ＳＯＰ：Standard Operation Procedure）に該当すると思うんです。ＳＯＰがどう作られるかといいますと、小生の記憶では、品質保証部(品保)のスタッフが現場と協議した上で起案する。それを品保課長がチェックした上で署名捺印し、品保部長に回る、と。品保部長が押印した後に、たしか、製造部長と工場長のところまで行ってたはずです。つまり、一枚のＳＯＰには、工場長以下工場幹部の署名捺印がズラっと並んでいるわけでして、何か問題が生じるとハンコを押した全ての人間の責任が問われます。
また、改訂も定期的に行われます。技術の進歩もありますし、工程の改善もある。加えて、ＳＯＰが現場の実態とそぐわないケースもあるわけですから。その場合、表紙には「改訂版」とか「第何版」という文字と「改訂期日」が記載されて、初版と同じようにベタベタとハンコが押されます。ここらへんの管理は、マトモな工場だったらカッチリとやっています。
こういった経験をしてきている小生からすると、誰が、いつ、何のために作ったのか分らない「マニュアル」に従って作業が行われている、というのは、なんとも理解しがたいです。そもそも、そんなシロモノ、「マニュアル」と呼べるのだろうか？ という、根本的な疑問も湧いてまいります。
ときに｢もう｣さん。医療現場での「マニュアル」つくりの実態は？さらに、品質保証体制とか、クレーム処理のシステムなんかは、どうなっているのでしょうか？
いよいよ動き始めました。以下、日経ネットより転載します。(転載開始)
中医協改革論議が始動・有識者会議が初会合
公的医療費の価格（診療報酬）を決める中央社会保険医療協議会（中医協）改革のため政府が新設した「中医協のあり方に関する有識者会議」が22日、初会合を開いた。中医協が医療費総額の増減率と個々の診療行為の価格の双方を決める現在の仕組みや、開業医以外の病院や患者の意見を反映するように委員構成のあり方などを見直す。今夏にも結論をまとめる予定だ。
同会議は大森政輔国家公安委員、奥島孝康早大大学院教授ら、医療関係者や労使団体などと利害関係がない5人の学識者で構成。尾辻秀久厚生労働相は「30兆円を超える医療費の増減をどこがどう決めるか、改めて決定過程を考えないといけない」と述べ、役割の全面的な見直しを要請した。同相は「社会保障制度の一体的な見直しを考えるうえでも、増大する医療費は財政的に最も大きな問題」とも強調。委員からは「医療費総額は社会保障全体の中での配分という広い視野から決めるべきだ」（奥野正寛東大大学院教授）などの意見が出た。 (22:07)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20050223AT1F2201R22022005.html(転載終了)
極めて簡単にコメントしておきます。
開業医以外の医師の利害を取り上げるというのは、全医師に占める開業医の割合が大きく減少している現在、それぞれの相対的な数・勢力に見合った発言権を持たせるという意味で妥当と考えられます。ただ、中医協委員の人選をめぐって「医師会はずし」＝「他団体からの一本釣り」という事態につながると、故武見太郎が最も恐れた「分割統治」のワナにはまることとなるでしょう。いかに開業医以外の利害を的確に吸い上げていくのか、植松日医会長の手腕が問われます。
患者代表を中医協に加えるのは、あまりいいアイデアだとは思えません。中医協で飛び交っているのは、極めてテクニカルで込み入った話題です。本当に理解出来ているのは、たぶん、医師会代表と厚労省の役人および役人上がりの健保連代表くらいのもの。患者代表が出て行っても、ほとんど｢傍観｣しているだけでしょう。加えて、何千万人もいる患者の代表を如何に正当に選び出すか、という技術的な問題もあります。場合によっては「お手盛り」の人事も十分考えられます。患者の意見を吸い上げるのなら、首相、厚労相、役人、医師会代表が列席して、自由に患者さんに意見を言ってもらう「タウンミーティング」もどきを年に何回か開いた方が、ずっと効果的だと考えます。
最後に、奥野正寛が「医療費総額は社会保障全体の中での配分という広い視野から決めるべきだ」と発言していることについて。これはたぶん、消費税の国民福祉税化を念頭においてのことでしょう。年金も医療も生活保護も全部ひっくるめて福祉予算に一括し、その総額を目的税秀総額とリンクさせる。決まった予算総枠の中で、あとは各部門で分捕り合戦をやってください、という意図です。受給者同士で、予算をめぐる激しい泥仕合が展開される可能性があります。
以下、アサヒドットコムより転載します。(転載開始)
医師の自殺、労災と認定 「過重な勤務と心労が原因」
勤務医だった息子（当時２９）が自殺したのは病院での過重な勤務と心労が原因だったとして、父親（７５）＝東京都江戸川区＝が、茨城県の土浦労働基準監督署長を相手取り、遺族補償給付の不支給処分取り消しを求めた訴訟の判決が２２日、水戸地裁であった。松本光一郎裁判長は原告側の主張を認め、労基署長に処分の取り消しを命じた。原告側代理人によると、医師の自殺が裁判で労災認定されるのは初めて。
訴えによると、医師は８９年１０月から外科医として土浦市内の病院に勤務。９２年４月に都内の病院に転勤した直後、薬物自殺した。土浦時代は、週２回の外来診療や平日平均１人の外科手術を担当。当直や日直もし、急患の診療も担っていた。転勤までの３０カ月間の平均休日は月１日。毎月の時間外労働時間が１００時間を超えたという。
裁判で原告側は、遺書に「毎日の生活に心や体も疲れ、精神的にまいってしまい、休息したい」と書き残されていたことなどを指摘し「激務による心身への負担が睡眠障害となり、不眠による精神疾患が原因で自殺した」と主張。被告側は「業務は通常の精神的負担」とし、自殺との因果関係を否定していた。 (02/22 13:23)
http://www.asahi.com/national/update/0222/018.html
(転載終了)少しコメントします。
過重労働対策は、現在の産業労働衛生分野において、最も重点を置かれているポイントです。過労死やいわゆる「燃え尽き」を防止する目的で、産業安全衛生法が改正される見込みで、この３月国会に上程される運びです。
過重労働か否かを判定するひとつの基準は、時間外労働時間が「ひと月に１００時間以上」「２〜６ヶ月平均で８０時間以上」「恒常的に月４５時間以上」の何れか、とされています。但し、このたびの法改正では、「ひと月に１００時間以上」の勤労者を対象として具体的な対策をとることが義務付けられることになりそうです。記事中に「毎月の時間外労働時間が１００時間を超えた」とありますが、こういった事情を背景としているためです。
だいたいにおいて、臨床医というのはタフな人が多いですから（タフでないと務まらない？）、「ひと月に１００時間の残業」など当たり前、と思っている人たちが大半かもしれません。しかしながら、昔と比べて医療現場を取り巻く環境が極めて「過酷」になっていますので、やはりそれなりの時間外労働時間の制限は必要だと思います。いまどき「紺屋の白袴」では、しゃれにもなりませんから。
とは云っても、人繰りの問題がありますので、むやみに休日を増やせるわけもありません。小児科など、２４時間一年３６５日、日本中のどこに行っても専門医の診察が受けられるようにしろ、などとお母さん方から要求されているくらいなのですから。そうしますと、どうしても医師の数を増やすということが必要になってきます。これは必然的に、医療費の拡大につながります。「いっそのこと医師の給料を大幅削減してしまえ！」などと乱暴な主張をする人たちもいますが、医師の給料を下げるとどうなるかは、旧ソ連や経済制裁下のイラクにおける悲惨な医療の状況を考えれば、そうそう簡単に行かないことがすぐに分ります。
要するに、一面だけを度外れに拡大して政策を主張しても、事態がいっこうに改善しないどころか、むしろ根本から危機を深化させることにつながりますよ、という、いつもながらのお話になってしまいます。
以下、アサヒドットコムより転載します。(転載開始)
アスベストが原因のがん、労災認定１．６倍に ０３年度
仕事でアスベスト（石綿）を吸い込んだことが原因でがんになったと認定された人は０３年度で１２１人と、前年度の１．６倍に急増したことが厚生労働省のまとめでわかった。職業がんの労災認定１４１人の８６％を占めており、石綿による健康被害の深刻さが浮き彫りになった。
１２１人の内訳は、肺がんが３８人で、がんの一種である中皮腫が８３人だった。０２年度は肺がんが２２人、中皮腫が５５人だった。
石綿は耐火・断熱材として６０年代から広く使われたが、その後発がん性が指摘されて段階的に輸入や使用が禁止され、０４年１０月に全面禁止となった。石綿特有のがんである中皮腫は、吸い込んでから３０〜４０年たって発症するとされ、９５年は５００人だった死者数が、０３年には８７８人に増えている。
厚労省職業病認定対策室は「発症者が増えていることに加え、０３年に石綿が原因の疾病に関する認定基準が緩和され、医療機関にパンフレットを配って周知したことなどもあって患者や医師の認識が高まったことが急増の要因」と分析している。
民間の研究団体「中皮腫・じん肺・アスベストセンター」代表の名取雄司医師は「中皮腫は因果関係が明確で認定される可能性が高いので、思い当たる人は積極的に申請してほしい」と話している。 (01/27 21:01)
http://www.asahi.com/national/update/0127/031.html
(転載終了)アスベスト(石綿)を用いて建設されたビルの解体作業は、２０２０〜４０年代にピークを迎えるといわれています。石綿起因の悪性腫瘍対策は、これからが本番でしょう。
★「もう」さんへ貴重な現場からの情報をご投稿いただき、誠に有難うございます。
役所にせよマスコミにせよ、出されてくる政策や意見は極めて一面的で、バランスを大きく欠いているように思えます。一部の事象だけを度外れに拡大して論じていたのでは、政策が弥縫策に終始するのは当然のことで、やがてにっちもさっちも行かなくなって、システム全体が危機を迎えてしまいます。確かに、大きな視野を持って考える時期に来ていると思いますね。
★小坂さんへ
ご投稿、有難うございます。
主義主張はともかく、おカネがないから医者にかかれない、という話を聞くのは、なんともやり切れません。ある意味、人間がアタマで考えることは後智恵で、心で感じることが根本なんだ、という気もしますが、ちょっと言い過ぎですかね？
これからも、お気軽にご投稿ください。
★しばたさんへはじめまして、なおこうです。
さて、お尋ねの件ですが、残念ながら小生は肝臓の専門家ではありません。また、当掲示板の常連投稿者にも、専門家はいないように思われます。
さしあたり、いくつかの関連サイトを下に記しておきましたので、ご参考になさってください。ちなみに原発性胆汁性肝硬変は難病に指定されていまして、医療費の助成が国または都道府県から受けられるようです。既にご存知かもしれませんが、県に問い合わせをすることをお勧めいたします。
取り急ぎご返事まで。
東京都難病医療費等助成制度
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shippei/iryohi/iryohito.html(財)難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/029.htm
小坂です。以下、暗いニュースリンクより、転載致します。
こちらの掲示板の読者の皆様には、アメリカ医療の裏事情は周知のことと思いますが、この記事によると、米国の個人破産の半数は高額な医療費が原因で、クレジットカード破産は破産者全体のわずか1％以下とのことです。
また、介護地獄アメリカ―自己責任追求の果てに（著：大津 和夫、日本評論社）のリンクも貼っておきます。
そういえば、マイケル・ムーア監督の次回作は、アメリカ医療問題をテーマにするドキュメンタリー「Sicko」だそうです。彼が、どこまで米国医療事情に迫ることが出来るか判りませんが、次回作にも期待大です。
(転載開始)
アメリカ：個人破産の半数は高額な医療費が原因ロイター通信2005/02/02付け記事より。
http://news.yahoo.com/news?tmpl=story&cid=564&u=/nm/20050202/ts_nm/health_bankruptcy_dc&printer=1以下に全文を翻訳。健康保険加入が基本である日本人にとっては驚きのニュース。
--------------------------------------------------------------------------------個人破産の半数は医療費が原因（Half of Bankruptcy Due to Medical Bills -- U.S. Study）
By マギー・フォックス、医療科学専任記者：ロイター通信2005/02/02付け記事米国内で破産した人のおよそ半数が、医療費の高騰が原因で破産しており、病気のために自己破産に陥った人々の大半は中産階級で医療保険加入者であることが調査で判明した。
Health Affairs誌上で発表された研究によれば、医療費が原因による自己破産により、債務者や、約70万人の児童を含む扶養家族など、毎年約200万人の米国民が影響を受けていると見積もられている。
「研究結果は恐ろしいものでした。ビル・ゲイツでもない限り、誰でも深刻な病気にかかったりしたら破産しかねない」研究を指揮したハーバード・メディカル・スクールのデビッド・ヒメルスタイン医師は語る。
「医療費が原因で破産した人のほとんどは、たまたま病気になった平均的アメリカ人でした。医療保険はほとんど役に立たなかったのです」
調査担当者達は、カリフォルニア州、イリノイ州、ペンシルベニア州、テネシー州、テキサス州の裁判所で、931人の個人破産記録を入手する許可を得た。
「調査対象のおよそ半数が医療費を破産原因として挙げており、全米で190万から220万人（破産者とその扶養家族）が医療費破産を経験していると推定される」と研究者達は指摘している。
「病気から自己破産に陥る者のうち、病気になってからの個人負担費用平均額は1万1,854ドルであり、病気に罹患した際に保険に加入していた者は75.7％だった」
調査対象となった破産者は、医療保険に加入している場合、平均して1万3,460ドルを患者負担費用、免責費用、保険対象外サービス費用に支払っている。保険未加入者は平均して1万893ドルを自己負担費用として支払っている。
「医療保険に加入する中産階級の家族でさえ、病気にかかれば、しばしば経済的災難へ陥ることになる」調査担当者は報告する。
破産の専門家によれば、それらの数値は聞きなれたものであるという。
「1982年から1989年に、私は南カリフォルニアで申請された自己破産について調べましたが、その結果自己破産には大きく二つの原因があるという結論に達しました。医療費と離婚です」コロンビアを拠点とするネルソン・マリンズ・リレイ＆スカボロー法律事務所の弁護士ジョージ・コーセン氏は説明する。
「南カリフォルニアの自己破産のうち、その二つがそれぞれ1/3づつを占めています」
コーセン氏の話では、クレジットカード破産は破産者全体のわずか1％以下とのことである。「あれは本当に神話なのです」電話インタビューに彼は答えた。
自己破産者のうち中産階級家庭が多数を占めるとの報告を聞いて、コーセン氏は驚くこともないと語った。
「通常は、何か守るものを持つ人々が自己破産を申請するのです」コーセン氏は言う。「本当の貧困者---路上で見かける人々には、救済策は一切ないのです」
ハーバード大学の助教授で全国民医療保険加入を訴える内科医のステフィー・ウールハンドラー医師は、研究結果が医療改革の必要性に繋がるとしている。
「保険未加入者を保護するだけでは不充分なのです。医療保険加入者に対しても、継続的な保護が必要なのです」ウッドハンドラー医師は表明している。
彼女の話では、雇用側と政治家は、彼女の言うところの“必要最低限の、患者負担分や保険適用除外や例外だらけの、深刻な病気から自己破産へ直行させる医療プラン”を強要しているとのこと。
(転載終了)米国医療問題に関する参考書籍：介護地獄アメリカ―自己責任追求の果てに（著：大津 和夫、日本評論社）
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4535982465/ref=ase_gloomynews-22/249-4270834-2223507マイケル・ムーアのアポなし取材に対抗する方法とは？
http://www.eiga.com/buzz/050104/04.shtml
秋田県に住むものです。
実は、私の母（６０歳）なのですが、原発性胆汁性肝硬変と診断され、
現在、グリチロン錠とウルソ錠（５０ｍｇ）という薬を１日３回服用しております。
診断を受けてから約１年半になりますが、黄疸が全くとれず、
医師からは疲れ過ぎないようにと言われております。
以前は登山が好きで、毎週のように山へ出かけていましたが、
今はそれが叶わず、精神的にも落ち込んでおります。
この度、新薬を試してみないかと言われ、１ヵ月後に返事をすることになっています。
新薬なので必ず効く保証はなく、後遺症が残るかもしれないということで、
また保険もきかないため高額になるとの説明を受けました。
現在のままの治療を続けた場合、５年〜１０年は大丈夫とは言いませんが、
すぐにどうこうなるものではないと言われました。
日本国内で専門の方がおれば、治療を受けたいとも思っておりますが、
詳しいことがわかりませんので、どなたが詳しい方がおりましたら、
何でもいいので教えていただけないでしょうか？
また、良い病院や先生をご紹介いただけないでしょうか？
どうぞよろしくお願い申し上げます。
皆さんこんにちは「もう」です。４月から完全施行の「個人情報保護法」に関連して厚労省では
（１）病状を家族に説明するときにも本人の同意が必要（１月３１日付指針、都道府県に通知）。
（２）待合室などで名前を呼ばないようにする（審議会で検討中）。
という方針をだしてきており、各医療機関では対応を迫られています。はて、病院で順番を待っているときに名前を呼ばれてこれは重大なプライバシーの侵害だと感ずる人は何人いるのでしょう。近代医療がはじまってこのかた、病院、医院で患者さんを呼び入れる時に名前を呼ぶのは当たり前で、番号や記号で呼ぶ事はありませんでした。確かに会計や薬を渡す事務的な作業に引換券の番号を表示することは行われてきましたが、医療が人と人との関係によって成り立つもの（医は仁術の「仁」は人が二人と書く、つまり医療は人と人との関係であり、私は相方ともが持つ信頼と思いやりという対等の関係であって雇い主とサービス提供者の関係では断じてないと認識しているが）である以上、医療の要諦である治療に際して名前を呼ぶ事は誤りではないと思います。厚労省のホームページで公開されている審議会の記録でも記号で呼び入れることは最も避けるべき「人違い診療」の危険が増えるのではという危惧が審議員から出されています。多くの人間の中から個人を識別するためにヒトは名前というものを発明しました。雑踏の中でも自分の名前を呼ばれれば気がつきますが、記号や番号はよほど注意していないと聞き分ける事はできません。この「名前」を本人のために使用することが「悪」であるという趣旨を本当に個人情報保護法はもっているのでしょうか。法律に詳しい方は教えてください。
患者さんを患者様と呼ぶことも患者側からの切なる希望などではなく、医療をサービス産業として根づかせようとするための意図的な「国民教育」として全く議論されることもなく「既定方針」として日本に導入されたものです。一般に「時代の流れ」などと言って一切の議論を許さずに入ってくるものは全て意図的なソシアルエンジニアリングと理解すべきでしょう。そもそも我々が個人情報保護に期待するものは本人の知らない所で個人の情報が「商品」として売り買いされ、迷惑でしかない勧誘電話やメールに使われること、日本など大嫌いという公務員が個人の情報を特定の団体に拉致候補者のリストとして渡すことなどを厳しく取り締まって欲しいのであって、病院を社会からの隠れ蓑に利用する一部の職種の方を除いて一般の人はやましい所などなく病気を治すために胸を張って病院に来ているはずです。
進行癌の患者さん本人に現在の病状を伝えることは、今までも本人が十分受け入れる能力があって社会的に本人が自分の寿命を知っておく事が必要な時に行われてきました。これからは奥さんや旦那さんに病状を伝えるにあたってまず本人に「あなたが助からないことを話してよいでしょうか。」と尋ねなければならないようです。私としては今まで通り本人に病状を伝えるのはケースバイケースで行うべきであり、このような指針を出す事は本来の個人情報保護法案の趣旨からは離れた事であって時期尚早だと思います。病院や医療関係者の対応がファーストフードの店員さんのようにあまりに事務的で暖かさや思いやりがなくなってきたという投書を見かけます。手術や検査を受けるのに何枚も承諾書を書かされて、まるで生命保険や自動車保険の約款のように細かく副作用や起こりえる障害が羅列してある説明書を読まされることで本当に国民が望む医療が行われるようになってきったのか、そろそろ考え直す時ではないかと思いますね。
★アルルさんへおひさしぶりです、なおこうです。
>財団を率いるのは、Dr. Matthias Rathというドイツ人ですね。
Dr. Matthias Rathなる人物についてPub Med(パブメド：医学領域で最も信頼性の高いデータベース)で検索したところ、以下のような論文が引っかかってきました。
Roomi MW, Ivanov V, Kalinovsky T, Niedzwiecki A, Rath M.
Matthias Rath Research, Cancer Division, 1260 Memorex Drive, Santa Clara, CA 95050, USA.
Antitumor effect of nutrient synergy on human osteosarcoma cells U-2OS, MNNG-HOS and Ewing's sarcoma SK-ES.1.Oncol Rep. 2005 Feb;13(2):253-7.この論文は、いくつかのnutrientを用いる抗癌療法（正確には骨肉腫治療）をin vitroで試した実験に関するものです。従来型の化学療法は骨肉腫を攻撃できるものの、副作用による二次的なガンが発生しやすくなるために、いまひとつ治療成績が上がらなかった、そこでnutrientのカクテルを用いて二次発ガンを抑えながら骨肉腫を叩く治療を研究している、と云うことのようですね。
このOncology Reportと云うジャーナルについては、小生、ガン治療の専門家ではありませんのでなんとも評価がつきませんが、パブメドに出ているくらいだから、それなりにちゃんとしたものなんでしょう。医科学者としてもちゃんとは一応やっている、と云うことでしょうね。
今後も御投稿を、よろしくお願い致します。
このサイトは、多分、反ロックフェラー系の医療財団です。
ロックフェラーとＩＧファーベンの関係についての本、それから、「ロックフェラー・メディシン・マン」などの紹介をしてくれています。財団を率いるのは、Dr. Matthias Rathというドイツ人ですね。
http://www4.dr-rath-foundation.org/publication_library/histbooks.htm
小生が愛読しているメールマガジン「バン週」に、医療ネタが登場しました。例によって、肩の凝らないお話です。以下、『バンコク週報』No.1151より転載します。(転載開始)
■男性の気管から7センチのヒルを摘出
チェンマイ県のナコンピン病院で、男性の気管から長さ約7センチのヒルが摘出された。最近咳に血が混ざると同病院を訪れたこの男性は、レントゲン検査で喉に影が確認され、内視鏡で検査したところ、ヒルが気管内に貼りついていた。男性に全身麻酔を施した後、ヒルに麻酔剤を投与してヒルを摘出した。男性は山中をトレッキングし、川の水を飲んだ際、ヒルを一緒に飲んだとみられる。気管のヒルはタイで初めてという。
(転載終了)
まあ、患者さん本人にとっては笑い事ではないでしょうけれども、やっぱり素直に笑ってしまいます。それにしても「気管のヒルはタイで初めて」とありますが、ことによると「世界初」なんじゃないでしょうか？ 少なくともTropical Medicine and Healthとか臨床寄生虫学会雑誌くらいには、症例報告が出来そうです。
こういう記事を見ると、とても心が安らぎます。小生の個人的趣味を背景に、以下、毎日Interactiveより抜粋転載します。（転載開始）
ヘルシーリポート 日本酒、意外な効用 善玉コレステロール増やす／肌がすべすべに
日本酒は日本文化にとって欠かせないものだが、その実像は案外と知られていない。なかでも心臓病やがんの予防、悪玉コレステロールの低下など健康や美容に良いことを知っている人は少ない。「Ｏｓａｋｅ（お酒）テラピーで健康になる」（ＢＡＢジャパン）を著した滝澤行雄・秋田大学名誉教授（現・熊本県水俣市助役）に日本酒のさまざまな効用を教えてもらった。
◇善玉コレステロール増やす−−ほろ酔いまでなら
◇妊娠中は控える
お酒というと、一般には健康に良くないイメージを抱きがちだが、それは誤解だ。滝澤さんは「日本酒を適量飲めば、がんを予防したり、血液をサラサラにするなどの効果が各種の科学的調査で分かってきた」と強調する。例えば、心筋こうそくや脳こうそくなどの心臓病。大阪府立成人病センターなどが約９０００人を追跡した調査によると、日本酒を毎日２、３合飲む人は、飲まない人に比べ、心筋こうそくや狭心症の発生率が低いことが分かった。
中高年になると動脈硬化が気になる。コレステロールの取り過ぎが動脈硬化の原因の一つだが、日本酒はコレステロールのなかでも悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きがある＝図参照。
日本酒を適量飲む人は、全く飲まない人に比べ、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールの値が低いという調査結果も出ている。総コレステロール値が高くても、悪玉コレステロールが低ければ、動脈硬化にはなりにくい。血液内に血栓ができると血液の流れが悪くなり、動脈硬化につながりやすいが「日本酒は血栓を生じにくくする働きもあります」と滝澤さんは食生活の中に日本酒をちょっと添える工夫で生活習慣病が予防できると話す。
日本酒は培養したがん細胞の増殖を抑える働きもある。ウイスキーやブランデーには日本酒ほどの効果はない。日本酒に含まれるアミノ酸や糖類の低分子量の微量物質が、がん細胞の増殖を抑えるという。文部科学省が進めている大規模ながん研究調査（中間報告）によると、がんによる死亡者は毎日飲酒する人たちの方が、飲酒しない人よりも少ないことが分かった。
意外にも、日本酒の消費量の多い東日本の方が、西日本に比べて、肝硬変の発症率は低い。日本酒を飲んでいると肝硬変で死ぬリスクが低いようだ。
ただ、いくらお酒が健康に良いとはいえ、たくさん飲めば効果が高いというのではない。滝澤さんは「何事もバランス。酒を毎日、４合以上も飲む人は逆に心臓病やがんなどで死亡するリスクは高くなる。１日に２〜３合が適量でしょう」と飲み過ぎは良くないと話す。１日２〜３合程度なら、適度なほろ酔い気分が楽しめる。
(後略)
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/archive/news/2005/01/29/20050129ddm010100153000c.html
(転載終了)因みに小生、きのうは四合も飲んでしまいました。
「ベタ記事」扱いですが、中身は意外に重いと思いますね。以下、Nikkei Netより転載します。(転載開始)
西島参院議員、自民党堀内派入り
自民党堀内派は27日の派閥総会で、西島英利参院議員の入会を了承した。同派所属議員は衆参合わせて48人となり、亀井派と並んだ。 (22:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20050128AT1E2700K27012005.html
（転載終了）小生の記憶によると、日医推薦候補は橋本派に近かったはずです。日歯連問題の余波を受けて、いま橋本派に入るとさんざん叩かれる、という理由で堀内派を選んだ、とも考えられます。となりますと、「隠れ橋本派」という位置付けになるのですけれども、医系議員の団体「カトレア会」のトップは丹羽雄哉で、このひとはたしか堀内派のはずです。そうしますと、日医の政治戦略（というより、対自民党対策）が変化した、とも受け取られるわけです。
そのうち、どこかの新聞社が特集を組むでしょうから、続報を待ちたいと思います。
以下、Nikkei Netより転載します。(転載開始)
東北大、学長選を廃止・選考会議がトップダウン決定へ
東北大学の学長選考会議（小田滋元国際司法裁判所判事）は24日、次期学長の選考から学内選挙を廃止し、学外の有識者も含めた選考会議がトップダウンで学長を選ぶ方式にすると正式発表した。
経営協議会、教育研究評議会がそれぞれ5人以内の候補者を順位を決めず推薦する。民間企業の経営者など学外者にも広く門戸を開放する。選考会議は推薦された候補者をもとに最終学長候補者を決める。
任期はこれまでの1期4年、再任は2年から再任なしの6年に変える。吉本高志現学長は2006年11月が任期満了。次期学長選考から新しい選考規定を採用する。
文部科学省によると、総合研究大学院大（神奈川県）を除く国立大学で学長選挙の廃止は初めて。 (23:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050125AT1G2403L24012005.html
(転載終了)この春、ある国立総合大学で学長選がありまして、医学部推薦候補が敗れると云う「波乱」が起きました。この大学の医学部は、医科大学として設立されたとても古いものでして、それなりに高く評価されています。戦後、他の学部と統合されて総合大学として再出発して以後、今回ともう一回を除くすべての学長選で医学部推薦候補がすべて勝利しています。負けたときは、必ず医学部内部が分裂しています。
まあ、客観的に見て、この大学でそれなりに評価されているのは医学部くらいなものでして、科学研究費予算のぶんどりや官庁への陳情などを考えれば、医学部推薦候補を学長にするのは、それなりに合理的なメリットがあるといえます。でも、ほかの学部の人たちから見ると、「利権独占」といった感じが色濃く、いまに見ていろ、と「反医学部」の炎をメラメラとたぎらすのも、無理ないかなあ、と思います。
東北大にどんな事情があるのか分かりませんが、一般的に云うと、国立大学が大学法人となったことが大きいと思います。もう、文部省丸抱えでは運営していけませんので、しっかりとした研究をやって論文をバンバン書き、官民問わずぶんどれる予算はドンドンぶんどる、といった具合にやっていきませんと、立ち行かなくなってしまいます。良かれ悪しかれ成果主義を導入しなければならず、信賞必罰をキーワードに、大幅な人事機構改革を推し進める必要がでて来ます。そうしますと、まあ、一握りの超優秀な研究者・部門は大賛成するでしょうけれども、半数を超えると思われるあまりパッとしない部門の人たちは、反対しますよねえ、当然。
こういう状況で学長を学内選挙で決める場合、改革派と守旧派が闘えば、たぶん、守旧派が勝ってしまいます。そうすると、人事も機構も新しい制度に対応できませんので、研究が量質ともに停滞してしまい、研究予算も減少、それがさらに研究レベルを押し下げると云う、悪循環が生じる危険性があります。そうならないためにも、トップダウンで学長を決定して改革を断行、超優秀な研究者で学内を埋め尽くす、というのが彼らの考えなのでしょう。
良し悪しの判断は留保しますが、旧帝大である東北大ですら、そのくらい派手にやらないと研究競争で勝ち残っていけない、と云う危機感をもっている、というのは、とても興味深いですね。
以下、Nikkei Netより転載します。(転載開始)
デンカ生研の４―12月期、ワクチン増産で経常益12％増
検査試薬製造・販売のデンカ生研が21日発表した2004年4―12月期の単独業績は、経常利益が12％増の20億5300万円だった。前年の品不足を受けて、4割近く増産したインフルエンザワクチンを順調に出荷した。有効期限切れ商品の廃棄や営業強化で原価や販管費が膨らんだが、増収で吸収した。
売上高は11％増の98億7600万円だった。主力のワクチン部門はインフルエンザワクチンの出荷好調で34％増えた。10―12月は需要期に当たるが、品不足だった前年同期と比べても3割以上増えた。生産数は39％増の430万本で、ほぼ全量を出荷済みという。
検査試薬部門は国内がインフルエンザ検査試薬が、インフルエンザ流行の遅れから27％減だった。一方、海外部門は免疫血清検査試薬が順調で59％増だった。
日本脳炎ワクチンの廃棄などが響き、原価は15％増えた。インフルエンザ検査試薬の販売強化で販管費も6％増えた。コスト増を増収でこなし、営業利益は10％増の20億2100万円だった。税引き利益は25％増の13億3300万円だった。
http://www.nikkei.co.jp/news/tento/20050124AT2E2100Q21012005.html(転載終了)
インフルエンザワクチンが増益要因となり、インフルエンザ検査試薬が減益要因になると云うのは、現在のインフルエンザ感染状況を如実に表していますね。
以下、メールマガジン「ドクター桜井の日本診療（361号）」より転載します。(転載開始)
◇死体ビジネス
先日葬祭会館を経営している方の話を聞いて憤りを感じた。病院で患者さんが亡くなり、葬儀社が分からない場合、病院の関係者に尋ねることがある。その時紹介してくれる葬儀社は病院と契約しているというのだ。契約そのものには問題ないとは思うのだが、問題は契約の中身である。
彼の会社もある病院と契約していたのだが、新たに病院長と看護婦長に車一台と年間のガソリン代、さらに病院でお亡くなりになった方を一人紹介するごとに、リベートを求めてきたと言うのだ。この要求をお断りしたところ、契約解除になったそうだ。
患者さんが亡くなってからもビジネスにしている、このような悪徳医がいるから、医師全体が悪者として見られてしまう。
この病院は、老人病院として知られており、私も当直に行った事がある。現在は違っているのかも知れないが、その当時は、病院というよりも姥捨て山のようなところであった。病室に患者さんがあふれているために、廊下にもベッドが用意されていた。
こんなひどい病院は潰れるべきだと思うのだが、悲しいかな、多くの利用者があり、いつでも満床なのである。患者さんはこの病院で最後を迎えることを望んではいないだろう。しかし、家族に見放されたり、身寄りのない患者さんにとっては、最後にたどり着く施設である。
現在、終末期医療が問われているが、人の死を利用して、自分の懐を暖めている医療関係者を排除しなければ、「尊厳死」など望むべくもないだろう。
参議院議員・医師 桜井 充(転載終了)
一般のビジネス社会であれば、リベートは常識、と言えるかもしれません。でも、コトが人間の生き死に関することになりますと、どうも釈然としない、いやーな気分になってしまうのは、自然な感情でしょう。
株式会社が医療に参入すれば、たぶん、葬儀社まで自分で経営して、売り上げを最大限まで増やそうとします。われわれも「会社」というものの本質を分っていますから、「まあ、そんなものだろう」と大して気にも留めません。
ところが、医療分野において、民間企業以上にガリガリ儲けようとしている医者がおります。そのくせ「医療は金儲けの手段ではない。株式会社の参入には断固反対する！」なんてやっているのですから、いいかげんなものです。
医療分野では、いろんな人がいろんな考えを持っていろんなことをやっていますので、なかなか「一刀両断」というわけには参りません。
タバコをめぐって、またぞろバカバカしい調査結果が発表されました。以下、Nikkei Netより転載します。(転載開始)
中高年男性、喫煙で自殺リスク上昇・厚労省研究班
中高年男性ではたばこを吸う本数が多ければ多いほど自殺の危険性が高まることが、厚生労働省研究班（主任研究者、津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長）の調査で明らかになった。1日に40本以上吸う人は20本未満の人に比べ、危険性が7割高かったという。成果は21日から大津市で開かれる日本疫学会で発表する。
研究班は、1990年と93年に岩手県や茨城県、沖縄県など８県で40―69歳の男性約4万5000人を対象に喫煙の有無をアンケート調査した。このうち173人が2000年までに自殺し、喫煙習慣などを分析した。
その結果、1日に吸う本数が20本未満の人に比べ、40本以上の人が自殺する危険性は7割高かった。30本以上40本未満の人では同じく4割高かった。一方、吸い始めてからの期間と自殺との関係ははっきりしなかった。
また、たばこを吸う人ともともと吸わない人を比べた場合は、統計的な差は認められなかったが吸う人の方が自殺の危険性が高まる傾向があった。 (20:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20050117AT1G1703517012005.html
(転載終了)一般に、病気と生活習慣の関係を探る疫学調査では、原因と結果の間にキチンと筋道を追うことの出来る因果関係が必要です。たとえば、ある日常行動の結果、こういう化学物質が大量に体内に分泌されるために、臓器や組織が痛めつけられるのでこういう病気になります、といったように、なるほどそうか、と納得の行く説明がなされなければなりません。これは、実験や観察でも良いですし、古くから広く常識として知られたことでも構いません。もちろん、未知の因果関係もありますので、疫学調査が発表された時点でははっきりと判らないこともあります。しかしそういった場合でも、いままで積み上げてきた学問的基礎知識とちゃんと整合させる必要がありますし、将来的には動物実験などを通じて化学物質や分子のレベルでキチンとその関係を明らかにしなければなりません。
ところが、自殺が何で起きるのか、その仕組みを脳の神経レベルや化学物質レベルで明確に示したものなどございません。たとえば、脳のこういう神経がこんな風に興奮するために自殺する、とか、脳内でこれこれという化学物質が大量に分泌される結果として人は自殺する、などということは、いまのところ医科学者の把握を超えております。タバコの影響を云々する以前に、そもそもなんで人は自殺するのかという点が分らないのですから、タバコとの因果関係など出る幕ではないのです。
加えて、疫学では、「量反応関係」という重要な原則がございます。つまり、ある原因をゼロから始めて徐々に増やしていくと結果がドンドン重くなって、ついには死に至ってしまう、という関係のことです。そして、原因と結果の間が、きわめて密接であることが必要で、ほかの要因はほとんどまったく無視しても構わない、というくらいでないと、本当の関係は出てまいりません。分りやすい例をあげますと、たとえば素手のこぶしでコンクリート壁を殴るとします。なでるくらいに軽く触っても何でもありませんが、少し力を加えると痛みが走ります。もうちょっと力を入れるとこぶしに血が滲みますし、本気でぶん殴れば手の骨を折ってしまいます。この場合、手に結果を及ぼすのは｢壁をぶん殴る｣という行為以外にはありませんので、「壁を殴る」という原因と「手の骨を折った」という結果の間には、きわめて密接で重要な「量反応関係」があると断定せざるを得ないのです。
ところでタバコと自殺の場合、果たしてほかの要因をまったく間に挟まないくらい密接な関係があるといえるのでしょうか？調査対象となったのは40〜69歳の男性ということですけれども、この中には仕事を持っている人も失業者もいます。仕事のある人でも、自営なのか会社員なのか。自営業者でも手広くやっていてうんと儲けている人もいるでしょうし、左前でカツカツの人もいます。儲けているひとでも家庭環境に恵まれない人もいれば、反対におカネには困っていても家族がとても仲良くて、日々幸せを感じている人もいます。勤め人でも、業種によってプレッシャーのかかり方がぜんぜん違いますし、同じ業種でも会社の社風・経営方針によっては、会社のいごこちが180度違うこともあり得ます。さらに、同じ会社で働いていても、部署の違いが社員のココロのあり方を大きく変えてしまうことは、会社勤めを経験された皆さんなら、よくおわかりのはずです。
影響する因子は、職場や家庭環境だけではありません。世の中には、例え自分に落ち度がなくてもすべてを自分の責任のように感じてしまう几帳面で真面目な人もいれば、反対に自分のミスでとんでもない事態を引き起こしながらも、平気の平左、しらーんぷりしてすずしい顔をしている人もいます。自殺の危険性が前者に多いことは、医師国家試験にも出題されているくらいの「常識」です。周りの環境に加えて、個人の資質も大きな影響因子なのです。
このように、勤労者が自殺する原因を調査する場合、推測される原因があまりにも多すぎて、単純に「これが原因だ！」と断定できるものではありません。むろん、疫学の手法にはこういった原因と結果に影響を与える因子を排除する方法がありますが、因子の数があまりにも多すぎると、手間・ヒマ・おカネがかかりすぎるために、実際には完全な調査など出来ないことがよくあるのです。
本来、「自殺とタバコ」の因果関係を探るのであれば、自殺の実態に詳しい精神科の研究者がやるべきだと思いますが、この研究はなぜかガンセンター（！）が行っています。発ガンとタバコの関係であれば、カドミウムや砒素と同じくいわゆるトキシコロジーの範疇で比較的単純に「量反応関係」が論じられるかもしれませんが、影響する要因が多数で複雑な自殺となるとそうは行きません。あまりにも単純な思考回路、と断定せざるを得ませんね。
「兜町から見た医療」、今回は再生医療です。土地カンのある方は知識を整理する意味で、そうでない方は現状をおおまかに把握する意味で、それぞれご覧下さい。以下、「松井証券マーケットプレゼンス【土曜版】（2005年1月8日発行）」より転載します。（転載開始）
【実用化に向け前進する再生医療。(大和証券)】
大和証券は1月6日に「実用化に向け前進する再生医療」というレポートを発表した。最近の注目点は4点。
(1)米カリフォルニア州が今後10年間で30億ドル(約3,120億円)の州予算を投じ、ES細胞研究を推進。
(2)ES細胞より実用化が早いと期待されている骨髄など生体内から取り出せる体性幹細胞の臨床試験が国内外で成果を挙げている。
(3)昨年末に京都大学がマウスの精巣からES細胞と同様にあらゆる臓器や組織に成長する能力を持つ多能性幹細胞の作成に世界で初めて成功。
(4)皮膚再生は今年中に国内で承認・事業化の見込み。
再生医療に取り組んでいる企業には以下のものがあるという。
テルモ(4543) 患者の太ももから、骨格筋に成長する前の芽細胞を取り、培養増殖させ、心筋の壊死部分に移植する技術で米バイオベンチャーと提携。
ニプロ(8086) 心臓を周囲を包んで周囲の臓器や組織との癒着を防いでいる「心膜」を再生するシートを世界で初めて開発。
オリンパス(7733) 患者から採取した細胞を培養し臓器を作る研究。
澁谷工業(6340) 細胞培養自動化装置を三洋電機(6764)と共同開発。
日本ケミカルリサーチ(4552) (大証2部) 米国の再生医療ベンチャー「オサイリス・セラピューティクス社」と提携し、日本国内で独占的権利を取得。
協和発酵(4151) 患者の体内にある体性幹細胞を刺激し、病気やけがで痛んだ組織や臓器を修復できる医薬品を研究。
田辺製薬(4508) ヒトES細胞を用いたパーキンソン病治療薬の開発を目指す。
J−TEC(未上場) 患者自身の細胞から作る自家培養表皮で、角膜上皮、歯周病での事業化を目指す。J−TECには住生活グループ(5938)、富山化学(4518)が出資。
（転載終了）
株式会社化された医療機関は、株主に対して大きな配当と高い株価を保証しなければなりません。そのためには利益を増やすことが必要で、利益を増やすためには売上げを伸ばさねばなりません。売上げを伸ばすには、厚労省による医療費統制が邪魔者となります。そこで厚労省の医療費統制の外にあって、自由に値段をつけられる自由診療をドンドン拡大しようと考えます。高い自己負担分は、普及が著しい民間疾病保険によって十分カバーできることでしょう。これが「医療改革派」の思惑です。今回の混合診療解禁により、最先端医療の一部が自由診療として、保険診療と抱き合わせの形で可能となりました。ところが厚労省は、将来的にはこれらを保険診療に含めることを考えています。そうなりますと医療費統制の網に入ってしまいますので、株式会社病院にとっては、せっかく手にした自由な増収源を剥奪されることにつながります。こんなこと、「医療改革派」にとって呑める話ではないのですね。
このたび厚労省は、混合診療の具体策に関して、審議会を立ち上げることを決定しました。おそらくは、自由診療部分を将来的に保険診療に含めるか否かという点について、「改革派」と「守旧派」との間で大きな論争が起きるはずです。国民一般にとっては、新しい治療をリーゾナブルな値段で受けられることは大歓迎です。ふつうに考えれば｢守旧派｣に与しますね。
今回の論争で「改革派」は、「未承認医薬品を使えない患者」の利益を、混合診療解禁の旗印に使いました。患者一般の利益を考えると、今度はもう、ダメでしょう。果たして「改革派」は、どのようなロジックを持ち出してくるのでしょうか？たぶん、正面切って「医療費抑制＝財政再建」を訴えることになるでしょう。そうなりますと、医療費を議題としながらも、究極的には「将来の日本のあり方」といった大きな問題を論議せざるをえない状況になると思われます。国民一般が真剣に考えねばならない時期が来る、と言えるかもしれません。
★ＳＨさんへごぶさたしています。
おげんきですか？なおこうです。＞老人の不慮の死の原因の第１位は家庭内で起こる事故であり、第２位の交通事故の二倍近い数
＞その家庭内の事故死の内訳第１位が食物による窒息、
＞その窒息の原因となった食物の内訳の第１位がやはり餅う〜ん、これはすごい情報ですね。
モチがのどに詰まる問題と言うのは、きわめて重要なことだ、ということですね。＞「モチモチ感、ネトネト感のない餅は餅ではなくなってしまいます。」
たしかに。仮に「モチモチ感、ネトネト感のない高齢者用餅」を開発しても、当のご老人からは見向きもされないでしょうなあ。
＞老人の食物による窒息は、加齢による筋力の減少にともなう各種機能の低下が原因
＞さらに何よりもまして重大なのが老人自身の「認知能力」の低下、すなわち「痴呆」なるほど。これは重い。
＞「痴呆」という言葉は語感がよろしくないということで、「認知障害」だか「認識障害」とかいう言葉に置き換えられつつあるそうですね分裂病も、いまや統合失調症ですしね。この業界も「ことば狩り」体質が色濃く残っています。「いわゆる精神分裂病｣「とか「いわゆる痴呆症」とか言わないと、簡単に足をすくわれます。
＞痴呆の入った彼には総入れ歯で大きなタコを食べようとしたらどうなるか、丸飲みするとどうなるかといった「認知能力」が低下してしまっていたのです。
・・・・。これも重い。
＞嚥下障害の対策としては・・・口腔（特に舌筋群）の筋力回復トレーニング（つまりはリハビリ）が有効になります。
なるほど。筋力トレーニングに加えて、ほんとかどうか知りませんが、昔からものを良くかむと脳に刺激が言ってボケない、なんていいますしね。なるべく早いうちからアゴの訓練をしておいた方が良さそうです。
ところで、具体的にはどんな筋トレをするのでしょうか？器械を使ったのでは味気ない。スルメは入れ歯をダメにするでしょうし、かと言ってガムでは入れ歯に張り付きますしね。サプリメントを含んでいて、楽しく美味しく噛めてしかも筋トレも出来る、なんていう画期的商品が出来ると売れるんでしょうねえ。
ＳＨさんの地方医療レポートも期待しています。ご投稿、有難うございました。
ご無沙汰しております。
地方のとある病院歯科に勤務している者です。直井先生の精力的なご投稿をいつも拝見させていただいております。
いつも有益な情報を有難うございます。
＜直井先生のご投稿[１３６１]より転載開始＞毎年この時期になると、必ずこの手の事故が報道されます。
（中略）
対策もここ40年間まったく変わっておりませんで、「切り餅をそのままの大きさではなく、必ず小さく切ってからお年寄りに出すこと」
（中略）
いまだに犠牲者が出るというのは、バカにしてこの対策をとっていないためか、はたまたまったく違う要因があるのか、どちらなのだろうか、と首を傾げてしまいます。＜直井先生のご投稿[１３６１]より転載終わり＞
正月に餅を詰まらせて窒息死という話は確かにかなり以前から報道されていますね。
先日、摂食・嚥下についての研修会で日本歯科大学附属病院口腔介護・リハビリテーションセンター長の菊谷武先生の講演を聞く機会がありました。
その講演の中でも「正月に餅を詰まらせて窒息死」というニュースに関する言及がありました。
直井先生もご指摘のようにこの手の事故は毎年正月明けには必ず各地で集計報告が出るそうです。
老人の不慮の死の原因の第１位は家庭内で起こる事故であり、第２位の交通事故の二倍近い数にのぼるそうで、その家庭内の事故死の内訳第１位が食物による窒息、第２位が浴槽内での溺死、第３位が転落・転倒なのだそうです。
さらにその窒息の原因となった食物の内訳の第１位がやはり餅ということでした。ご指摘のように消費者側は「切り餅をそのままの大きさではなく、必ず小さく切ってからお年寄りに出すこと」を心がけるべきでしょう。
では食品メーカー側はどうか。菊谷先生は以前、「サ○ウの切り餅」で有名な某食品メーカー業者たちの前でも講演をしたことがあるそうで、列席の関係者たちはこの家庭内事故死原因第１位の不名誉な数字を目の当たりにして深刻な面持ちだったそうです。
しかし、その講演の後で業者の一人が菊谷先生のところへ寄ってきていわく、
「われわれもノドに詰まらないような餅の品質改良をしなくてはならないかもしれません。しかし先生、餅という食べ物はあのモチモチとした食感、ネトネトとした舌感があってはじめて餅なのです。モチモチ感、ネトネト感のない餅は餅ではなくなってしまいます。異質の食べ物になってしまうのです。それでは餅の商品価値がありません」
確かにやっかいな問題です。
＜直井先生のご投稿[１３６１]より転載開始＞お年寄りにこの手の事故が多いのは、神経機能の低下が原因、と考えられています。
（中略）
問題は、この神経機能の低下を、お年寄り自身が十分に理解しているのか、という点です。長寿化によって、確かにいまのお年寄りはむかしのお年寄りよりもはるかに見かけは若い。40年前の70歳はもうよぼよぼでしたが、現在では現役でバリバリ働いていますね。でも、仙人ではないのですから、やはり体の機能は衰えています。気持ちの若さと機能の衰えのギャップが原因となって、つい無理をしてしまう結果、思わぬ不幸を招いているとは考えられないものでしょうか？＜直井先生のご投稿[１３６１]より転載終わり＞
前出の菊谷先生の受け売りですが、老人の食物による窒息は、加齢による筋力の減少（これをサルコペニアという）にともなう各種機能の低下が原因だそうです。
口を動かすのも舌を動かすのも筋肉による作用です。加齢とともにこれら口腔の筋力が減少し（すなわちサルコペニアがおこり）、口腔機能を低下させるということです。
具体的には、
１． 食物を口腔から食道に送る「嚥下力」の低下
２． ノドに詰まった食物を吐き出す「喀出力」の低下
３． 食物をノドに詰まらせないくらいに細かく噛み砕く「咀嚼力」の低下
そして
４． 食物をノドにへばりつかせないようにするための「唾液」の分泌量の低下（注：これは例外として筋力とは直接関係はありません）
が挙げられます。
さらに何よりもまして重大なのが神経機能の低下というか、
５． 老人自身の「認知能力」の低下、すなわち「痴呆」
が大きく関与しているということです。
つまり現役バリバリに仕事をこなす高齢者よりも、痴呆が進んだ老人ほど食物をノドに詰まらせるリスクが高くなるということです。
「痴呆老人には誤嚥・窒息に気をつけろ！」です。
（脱線：「痴呆」という言葉は語感がよろしくないということで、「認知障害」だか「認識障害」とかいう言葉に置き換えられつつあるそうですね）
私の祖父は’９７年に８９歳で亡くなりましたが、彼も晩年には外出したきり迷子になってしまったり、夜中に徘徊したりといったいわゆる痴呆の症状がでておりました。
そんなあるとき、とある宴会の席で食事をノドに詰まらせて目を白黒させ、家族をヒヤリとさせたことがありました。
目の前に並んだごちそうを咀嚼もそこそこにこらえ性なく次から次へ口に入れているうちにノドを詰まらせてしまったのです。
何とか吐き出させるとなんとゴルフボールくらいの大きな生ダコが丸ごと出てきました。
祖父は総入れ歯なのでタコなんかそうそう噛み砕けるわけがありません。
（以前も書きましたが、なんでも噛める入れ歯なんていうのはありえません）
ましてや噛めないからといってそんな大きな物を丸飲みするなんて危険です。
痴呆の入った彼には総入れ歯で大きなタコを食べようとしたらどうなるか、丸飲みするとどうなるかといった「認知能力」が低下してしまっていたのです。
かつては厳格な怖い祖父だったのですが・・・。そんな祖父の威厳も丸つぶれになってしまった出来事でした。
さて、この嚥下障害の対策としては先に挙げた筋力低下（サルコペニア）を回復させるとよいということで、口腔（特に舌筋群）の筋力回復トレーニング（つまりはリハビリ）が有効になります。実際にこのリハビリを採り入れている病院が少しずつ増えてきております。
これは老人の転倒予防にリハビリで足腰の筋力アップを図ることが唱えられてきているのと同様といえましょう。
自由診療である先端医療と健康保険の併用を認めるのは、あくまでも将来、健康保険に全面導入するまでの一時的な措置であり、国民皆保険制度は確実に守っていく、というのが混合診療解禁に関する厚労省の基本的立場です。ところが、医療に株式会社参入を認めよう、混合診療を全面解禁しよう、と主張する人たちは、これとまったく違う考え方を持っています。株式会社は株式を発行する以上、配当をしなければなりませんから、利益をどんどん上げる必要があります。医療の場合、売り上げは診療報酬点数とか国民医療費とかで厚労省に制約されていますので、なかなか増加させることが出来ません。そこで最初はコストを削減して利益を絞り出すことになるものの、あまりやりすぎると医療サービスの質が落ちて問題が生じてしまいますから、なんとかして売り上げを上げる算段をするわけです。それが、健康保険のラチ外でやり取りされる自由診療です。混合診療は健康保険と併用することで自由診療部分を増やそうという試みですから、株式会社化された病院にとって有力な売り上げ拡大策となるのです。つまり、「株式会社参入」と「混合診療解禁」は、車の両輪なのですね。
自由診療部分には、自由に値段がつけられますので、ふつうは保険治療より高くなるはずです。あまり高すぎてもお客が来ませんので、これくらいなら出せそうだ、という値ごろ感のあるレベルで価格が決められることになることでしょう。でも、出来ることならば、なるべく高い値段をつけたいものですよね。そこで登場してくるのが、民間健康保険（ガン保険など）です。
もしガンになり、最先端で値段の高い治療を受けたくても、先立つものがなければどうしようもありません。自由診療の値段を下げさせる要因になります。しかしながら、もしガン保険に入っていればどうでしょうか？ 自由診療の全額と保険診療の3割負担分を併せても、保険金で十分まかなえるのではないでしょうか？ とすれば、もう躊躇することはありませんから、すすんで自由診療を受けることでしょう。値段も比較的高く、設定できそうですね。
こう見てまいりますと、医療制度改革で主張されていることは、一見バラバラに見えながらも、実はすべてがつながっていることに気づかされます（つづく）。
混合診療の具体化に関して、動きが出て来たようです。以下、アサヒドットコムより転載しますが、少し長い記事ですので大幅に省略します。ご興味のある方は、記事末のＵＲＬからアサヒドットコムにアクセスして全文をお読みください。（転載開始）
混合診療の適用拡大、具体化に着手 治験制度改善がカギ
保険診療と保険外診療を併用する混合診療の適用拡大に向け、厚生労働省は今月中にも専門家による「未承認薬使用問題検討会議（仮称）」を立ち上げるなど、具体案作りに着手する。薬事法で未承認の抗がん剤などのうち、医療現場から要望が強いものや欧米で新たに承認されたものについて、適用対象を拡大したり、審査を迅速化したりすることが柱になる。
混合診療の全面解禁をめぐっては、例外的に保険診療と保険外診療の併用を認めている現行の「特定療養費制度」を拡充することで０４年末に決着した。国内未承認薬への保険診療の併用は現在でも、保険適用を目指して薬の効能を検証する「治験」の場合は認められており、その制度の運用改善が焦点になる。
(中略)
こうした未承認薬や高度・中度の医療技術は、将来的に保険導入が見込まれることから、新たに設ける「保険導入検討医療（仮称）」に区分する。一方、胃潰瘍（かいよう）との関連が指摘されるピロリ菌の除去や腫瘍（しゅよう）マーカー検査の超過分など、新たに併用対象とはしても、将来の保険導入が前提でないものは、「患者選択同意医療（同）」に区分。わかりにくさが指摘されてきた保険適用範囲の明確化を図る。
(01/05 14:28)
http://www.asahi.com/politics/update/0105/003.html(転載終了)
混合診療の具体案を作るために会議を立ち上げる、焦点になるのは未承認新薬に関する治験の取り扱いであろう、というのがこの記事の趣旨です。しかし、もっとも興味深いのは一番最後のパラグラフです。
これによりますと、「未承認薬や高度・中度の医療技術」を「将来的に保険導入」する一方で、「ピロリ菌の除去や腫瘍（しゅよう）マーカー検査の超過分など」は「将来の保険導入が前提でない」とされています。つまり、高度で先端的な治療技術を、将来的には健康保険を適用して全ての日本人が受けられるようにする、ということを厚労省が表明しているわけです。要するに、国民皆保険制度を崩すようなことはやらない、ということになります。
先端的で高度な治療技術は、費用がたくさんかかりますし、技術的に必ずしも安定しているわけではありません。これに健康保険を適用しますと、健康保険財政がさらに苦しくなりますし、おカネをかけたわりには結果がはかばかしくない、ということにもなりかねません。そこで、この部分に関しては患者の自己負担とし健康保険との併用を認めよう、技術がかなりこなれて来て、安定して一定の結果が得られるようになったら、あらためて健康保険に組み込もう、というのが従来からある特定療養費制度の仕組みです。今回の「混合診療解禁」というのは、この特定療養費制度をもっと大掛かりに組織的にやろう、ということを意味しています。
さて、健康保険に組み込まれることになると、やはり財政的なことを考える必要が出てまいります。適用される患者の数が膨大になりますので、どうしても単価（診療報酬点数）を引き下げざるをえません。コスト的に大幅な引き下げが無理ならば、その他の治療法の単価を引き下げて、健康保険で使われるおカネの総額をコントロールする、というかたちが取られます。こうして、すべての人が健康保険を利用して優れた治療を受けられるようにしておこう、というのが厚労省の思惑なわけです。ところがこれは、医療に株式会社参入を認めよう、混合診療を全面解禁しよう、と主張する人たちとは、まったく相容れない考え方なのです（つづく）。
新年、あけましておめでとうございます、なおこうです。
本年も、何卒宜しくお願い致します。以下、ヨミウリオンラインより転載します。
(転載開始)
もち詰まらせて…東京都内で２人死亡、１５人重体
東京都内で正月三が日にもちをのどに詰まらせて２人が死亡、１５人が重体になっていたことが４日、東京消防庁のまとめでわかった。
内訳は男性１５人、女性２人で１７人全員が６５歳以上の高齢者だった。
調べによると、１日夕方に江戸川区内の男性（７９）が、３日朝には瑞穂町で男性（６８）がもちをのどに詰まらせて死亡した。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050104i506.htm(転載終了)
毎年この時期になると、必ずこの手の事故が報道されます。私が子どもの頃ですから、もう40年位前にはおなじみのニュースとなっていました。対策もここ40年間まったく変わっておりませんで、「切り餅をそのままの大きさではなく、必ず小さく切ってからお年寄りに出すこと」というものです。この対策自体、まったく問題のないもので、その通りやっていればかなりの事故は防げると思うのですけれど、いまだに犠牲者が出るというのは、バカにしてこの対策をとっていないためか、はたまたまったく違う要因があるのか、どちらなのだろうか、と首を傾げてしまいます。
お年寄りにこの手の事故が多いのは、神経機能の低下が原因、と考えられています。ヒトがなにかを飲み込みますと、飲み込める大きさであればそのまま食道を通して胃袋までオートマチックに送り込んでくれます。一方、飲み込めそうもない場合には、反射的にノドから口へ吐き出そうという動きが生じます。いずれにせよ、のどに詰まることのないような仕組みがもともと備わっているわけです。この仕組みが衰えてくると、のどにもちが詰まる結果、気管をふさいでしまって窒息をしてしまいます。
問題は、この神経機能の低下を、お年寄り自身が十分に理解しているのか、という点です。長寿化によって、確かにいまのお年寄りはむかしのお年寄りよりもはるかに見かけは若い。40年前の70歳はもうよぼよぼでしたが、現在では現役でバリバリ働いていますね。でも、仙人ではないのですから、やはり体の機能は衰えています。気持ちの若さと機能の衰えのギャップが原因となって、つい無理をしてしまう結果、思わぬ不幸を招いているとは考えられないものでしょうか？
考えてみますと、これはお年よりだけに当てはまることではありません。四十代の元運動選手が張り切りすぎて大怪我をしてしまうことも、決して珍しいはなしではありませんよね。筋肉や神経の機能は、遅くとも三十代には衰えてくるのですから、日々、自分自身でチェックを欠かさないようにしたいものです。皆さまも、どうかご無理をなさらないように。
以下、「北の医療通信 「オーロラ」 第86号」より抜粋転載します。(転載開始)
とりあえず私も一年を振り返ってみますと今年の大きな出来事としてはやはり診療所の新築移転があげられます。移転後しばらくはインフルエンザの予防接種などもあいまって待ち時間が延びたりして患者さんにはだいぶ迷惑もかけましたが、なんとか引っ越しも無事に終えることができました。とりあえず合併しないで単独での存続をめざす陸別町にとってこの規模の事業は今後しばらくないでしょう。
移転に伴って電子カルテやレントゲンのフィルムレス化も導入しました。慣れるまではちょっと大変でしたが、最近はだいぶ慣れてきまして、その効果を改めて感じているところです。
診療所は新しくなり、すきま風に悩まされることもなくなって少なくとも環境だけは働きやすくはなりました。とは言え、地方自治体冬の時代です。来年からは給与が一律１０％カットとなります。公共事業の減少で特に建設業界などではリストラ給与カットもかなり厳しいようですので、これくらいで済んでいる公務員はまだ恵まれているのかも知れません。それでも給与カットに関する説明の場において、診療所の赤字ばかり強調され、なんか仕事していないみたいな言われ方だと憤慨しいてる職員もおりました。
新聞などでは公表されておりませんが、私自身の給与も先を見越して今年７月から実は５％カットを行っていました。ですから私の場合は４月からは５％カットの予定ですが、いずれにしても大きな額の減少です。近隣の自治体病院医師の場合もこうした給与カットでもめているところあるやに聞きます。私自身は給与よりも休みと人の増員を願っていますのでこのくらいならばつらくはありませんが、ただでさえなかなか医療従事者が充足しない過疎の地域においては今後さらに厳しい状況となるかも知れません。
こうした中現在来年度の予算編成中なのですが、この数字を見ていると本当に頭が痛くなってきます。すでにだいたい切りつめられるところは切りつめています。それ以前にたとえば診療所職員のユニフォームなどはここ何年も支給していません。おかしな話ですが、職員は自分で白衣など購入しています。残業なども全部申告しているわけでもありません。実態としてサービス残業になっているところもあるわけで、こうした中で切りつめるものはもう自らの肉を切って給与カットしかないわけです。なんともはやモチベーションを維持するのが大変です。
国は医療費をさらに抑制しようとしてる中で、収入などは急激に伸びるはずもなく、オリックスの宮内社長を先頭に混合診療を導入させ、その上前をこうした医療界に参入する企業が上前をはねようとしています。結局儲かるのは医療の周辺産業だけで現場で働く医療従事者はチャップリンの映画の「モダンタイムス」に出てくる労働者のようになっていくのでしょうか？
(転載終了)
このごろ世間では、「二極分化現象」が進んでいる、ということが言われています。医療界もその例にもれず、確かに「二極分化現象」が起こっておりますし、その傾向は今後ますます強くなるものと考えられます。
まずは、「地方」対｢中央｣、「田舎」対「都会」の対立。
人が集まるところにはおカネが集まります。おカネのあるところには人が集まります。おカネと人は、医療施設や医者を呼び寄せます。反対に、おカネも人もいないところからは、容赦なく撤退して行きます。と、言うことで、都市と田舎の差は、これからドンドン広がっていかざるを得ません。こういった差を少しでも縮めよう、というのが公立病院を中心とした公的医療の拡充です。ところが、地方財政の悪化を背景に、これもだいぶ怪しくなってまいりました。過疎地で医療関係者の給料をカットすれば、彼らのモチベーションは当然下がります。都市でもっと割りの良いポストにつこう、と考えるのは自然ですし、新たに過疎地で働こう、と考える医師の数も減らざるをえません。
そうしますと、過疎地には、金銭的待遇などものともせぬ使命感に燃えた少数の医師と、都会で職にありつけない、ちょっと問題のある医師が集まることとなります。後者は明らかに地域の医療レベルを下げてしまいますし、そのぶん前者にかかる負担が過剰となって、有能な医師を燃え尽きさせてしまうことにつながりかねません。いずれにせよ、地方の医療がメタメタになる危険性が大いにあるわけです。
以下、Nikkei Netより転載します。(転載開始)
「経営充実度」病院ランキング、幹部に企業出身者26％
４分の１の病院が企業出身者を事務長などの経営幹部に据えていることが、日本経済新聞社が全国の主要病院長を対象に行ったアンケート調査で分かった。２割強が医師らの賃金に成果主義を導入、「準備中」や「検討中」を含めると約７割に上る。診療報酬の抑制など経営環境が厳しさを増す中、企業のノウハウを取り入れて経営改革を進める病院の姿が浮き彫りになった。
回答を基にランキングを作成したところ、トップは洛和会音羽病院（京都府）。２位は赤穂中央病院（兵庫県）で、３位に聖路加国際病院（東京都）やトヨタ記念病院（愛知県）など４病院が入った。 (07:06)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040308AT3K0702707032004.html
(転載終了)確かに、収益の良い病院には優秀な事務屋さんがいる場合が多く、しかも民間企業出身者が事務長をやっている例も目立つようになって来ました。
民間企業は好況の恩恵を受けることが多い反面、「証券不況」「オイルショック」「円高不況」「バブル崩壊」などなど、とてつもない不景気に見舞われて来ました。そのたびに必死の思いでコスト削減を達成して、なんとか生き残っていると言う歴史を持っていますから、民間出身の事務屋さんにはコスト管理と言うものが肌身に染み付いている、と言って良いでしょう。そう云う人たちから見ると、病院の経営管理には ハテナ？ と首をかしげたくなることもたくさんあるはずです。
医師は医療の専門家であって、経営の専門家ではありません。経営者を民間企業から出すかどうかと言うことは置いておくとしても、事務責任者を民間から呼んで来ることは、有意義でもあるし、必要なことであろう、と考えます。ただし、彼らの待遇をどうするのか、ということが問題となります。
病院にしても、民間出身者なら誰でも言い、というわけにはいきません。バリバリと仕事をこなす「やり手」を採用したいと考えます。ところが、優秀な事務屋なら、民間企業、特に外資系企業で、それなりの給料をもらっているはずです。果たして、それだけの待遇を用意することが出来るのかどうか？
もし金銭的に準備できたとしても、病院内の人間関係がどうなるのか、少し疑問です。医師と言うのは、だいたいにおいて「誇り高い」人種ですから、病院内で自分たちが一番エライと考えているものです。それなりの教育を受けて、ボロボロになりながら毎日仕事をしていますので、それにはしかたがない面もあります。直接「切った張った」をやらずに、毎日カネ勘定ばかりやっているように見える人たちの待遇が、医師並みか、場合によっては医師以上であったとしたら、医師たちの不満が噴出するかもしれません。医師たちの理解と協力が得られなければ経営改善など不可能ですから、せっかく優秀な事務方をスカウトしても、無駄打ちになってしまう危険性もあります。
「ガン患者の利益」という錦の御旗がかつげなくなったいま、今度は「医療技術・医科学の振興」を旗印に掲げそうな気配です。以下、Nikkei Netより転載します。(転載開始)
規制改革会議、特区での混合診療解禁を検討
政府の規制改革・民間開放推進会議（議長・宮内義彦オリックス会長）は、保険診療と保険外診療を併用する混合診療について「構造改革特区」を活用し、一部の大学病院などに導入することを検討する。近くまとめる規制改革に関する答申に盛り込み、小泉純一郎首相に提出する方針だ。
混合診療の解禁問題は、当面は一部の診療や薬を例外的に認める現行制度を拡大することで決着したばかり。推進会議が構造改革特区の活用を検討するのは、将来の全面解禁に向けた環境づくりを進める狙いがある。
混合診療を実施したい病院が特区を申請して認められれば、一定期間後に「全国展開」も検討課題となる。推進会議によると、すでに東大病院が高度な診療を特区制度で認めるよう申請しているという。 (07:02)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20041220AT1E1900619122004.html
(転載終了)公的な医療科学技術予算は縮小の傾向にありますから、大学医学部としても研究予算の調達が重要になっています。いわゆる｢産学協同｣というのは、予算を確保するうえでとても大切なものです。最近では、大学発ベンチャーがいくつも作られていて、将来おカネになりそうな医学研究が行われています。
「ガン患者の利益」と同様、「医科学の振興」に真っ向から反対する国民はおりません。推進する側のホンネがどこにあろうとも、これを錦の御旗とすれば、医師会や病院団体もなかなか強硬な反対意見は言いづらいでしょう。国民を敵に回してしまいますから。
とはいうものの、「医科学の振興」と「特区」「混合診療全面解禁」とは、必ずしも直接結びついているものではありません。「高度先進医療」の場合、まだ海のものとも山のものとも分らない治療技術を実際に使ってみる、と言うことです。当然、それなりに高度な医療技術水準と管理体制が医療施設に求められます。とすれば、全国で特に限られた施設に試験的に導入をする、費用に関しては現行制度の枠内で自己負担をさせる、特に問題がないことが分った段階で、対象とする医療機関を増やす、という段取りで進めていって何も問題は生じません。「混合診療全面解禁」しなければどうにもならない、ということではありませんね。
全国に散らばる患者さんの利益を考えても、「特区」というのはあまりうまくありません。たとえば、東京のお台場を医療特区にして、最先端医療を自由に行えるようにしたとしましょう。東京都や南関東に住む人には便利でしょうが、東北や北海道、九州、沖縄の人は飛行機や電車でわざわざやってこなければなりません。付き添いの人の交通費や宿泊代も、相当な額に上ります。一方、旧七帝国大学付属病院を最先端医療施設にしたとしましょう。北大(北海道)、東北大(東北地方)、東大(関東地区)、名大（中部地区）、京大(関西、北陸地区)、阪大(関西、四国、中国地区)、九大(中国、九州地区)と、利便性ははるかにこちらの方がマシですね。つまり、｢特区｣と「混合診療」には、もともと何の関係もないのです。
このように財界側は、まったく異なるものを一体として主張しています。これらをていねいに選り分けて、いまの仕組みを維持したままで解決する、というのが厚労省の得意とする作戦です。もとより、旧帝国大学を中心として医科学の振興を図る、と言う方針に、厚労省及び文科省に異論はありません。今回の件に関しては、おそらくはその点に着目して、「特区」「混合診療全面解禁」阻止を試みるものと思われます。
もう、みなさん新聞報道等でご存知でしょうが、一応、記事を載せておくこととしましょう。以下、Nikkei Netからの転載です。(転載開始)
混合診療、「例外」拡大で決着・全面解禁は見送り
村上誠一郎規制改革担当相と尾辻秀久厚生労働相は15日、保険外診療と保険診療を併用する混合診療の解禁をめぐり、一部診療に限り「例外」として併用を認める現行制度を来年夏までに拡充することで合意した。国内未承認薬の治験を迅速にして実質的な混合診療を認めたり、必ずしも高度でない技術を百種ほど対象に追加。具体的には乳房の再建手術や胃かいようの原因とみられるピロリ菌除去の回数制限撤廃などを認める。小泉純一郎首相は同日夕、合意案を了承した。
政府の規制改革・民間開放推進会議（議長・宮内義彦オリックス会長）が主張していた「一定水準以上の医療機関での原則解禁」は見送られた。ほぼ厚労省の主張に沿い、対象となる医療技術を「例外」として個別に混合診療を認める現行の仕組みは残り、その延長で決着した。拡充策は二段階で実施する。まず来年夏までに、心臓移植手術など「高度先進医療」と差額ベッド代など「選定療養」の現行2分野に、3分野を加える。その後、2006年の通常国会に健康保険法改正案を提出し、全体の枠組みを再編する。 (07:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20041216AT1F1502A15122004.html(転載終了)
「混合診療全面解禁」を強力に押し出す次の機会は、医療費抑制政策に多くの病院が音を上げて、混合診療に収益拡大を求めて来たときでしょうか。
厚労省からすると、混合診療は健康保険財政を悪化させずに病院経営を安定させる有効な手段ではあるものの、自由診療部分が年々肥大することによって、医療（費）をコントロールするすべをもなくなることがコワイ。
さりとて、収益源が伸びずに病院がポコポコつぶれたり医師が大量失業するようなことになると、世の中がどうなるかわからない。そこで、病床数制限や病院機能の選択と集中によって、それぞれの病院や医師が何とか食べていけるように交通整理をしたい、ということが厚労省の狙いなんでしょう。
余談になりますが、知り合いの耳鼻咽喉科専門医が、混合診療は耳鼻科にとってあんまりメリットはない、と言っておりました。自由診療って言っても、いったい何やればいいの？ ということらしい。大学病院の形成外科などは、美容整形分野に本格的に乗り出していけるので、相当にうまみがあるのでしょうけれどもね。
以下、東京医大ＨＰより転載します。(転載開始)
平成１６年１２月１２日
患者様・ご家族・関係者の皆様へ
当病院の患者様とご家族並びにご関係の皆様におかれましては、ここ数日間の当病院に関する新聞やテレビの報道をご覧になられ、不安や心配のお気持ちを抱かれたことと存じます。当病院を代表いたしまして、まずは、心よりお詫び申し上げます。この度のような報道がなされたことにつきましては、非常に驚いております。当病院といたしましては現段階では、医療過誤があったという認識には至っておりませんが、平素より患者様の安全な医療を最重要項目として掲げて参りました当病院にとって、唐突な形で報道されたその内容は、誠に残念であるという気持ちを禁じ得ません。
早急に担当医師をはじめ当該手術に携わった職員に詳細な状況を確認するとともに、第三者による検証委員会を設置し、事実関係の究明にあたります。
また、その結果に関しては、後日皆様にご説明する予定でございますが、結果の公開に至るまで、諸事情により公表しかねる点も多々あることをご理解いただきたいと存じます。当病院の運営にあたり最も心がけなくてはならないことは、これまでと同様、安全で信頼いただける医療を皆様に提供することに他なりません。「より安全な医療の提供と開かれた大学病院」として、患者様から全幅の信頼をいただける病院であり続けるよう全職員が気持ちを引き締めて努力する事を、改めてお誓い申し上げます。
今般の事で、患者様・ご家族の皆様、多くの医療関係の皆様、国民の皆様に多大なご心配、ご迷惑をおかけいたしました事を、重ねてお詫び申し上げます。
東京医科大学病院
病院長 臼井 正彦
http://www.tokyo-med.ac.jp/hospinfo/
(転載終了)情報が限られていますので、うかつなことはいえません。病院長名で「当病院といたしましては現段階では、医療過誤があったという認識には至っておりません」「唐突な形で報道されたその内容は、誠に残念であるという気持ちを禁じ得ません」というコメントをＨＰのトップに持ってきている以上、その線で十分＜公判維持＞できると確信している、と言うことでしょう。詳細は今後の報道、並びに捜査の展開を待ちたいと思います。
それにしても、このあいだは横浜市大、次に慈恵医大、そして今度は東京医大と、叩かれ始めると徹底的に叩かれますね。詮索好きの小生としては、大学内部における権力闘争の構図に興味を惹かれます。
以下、アサヒドットコムより転載します。(転載開始)
比の医師、看護師になり海外へ 「高収入で安定」と
日本への看護師の労働派遣が将来認められることになったフィリピンで、医師から看護師に転身する人が続出している。フィリピン人の看護師は米国や英国なども受け入れており、高収入の外国で働くためだ。フィリピンの医師の国家試験にトップで合格した成績優秀者も、看護師に転じて米国行きを宣言。拍車がかかるフィリピンの「頭脳流出」を物語る。
南部バシラン島生まれのエルマー・ハシント氏（２９）で、１８２５人が受けた国家試験で１位だった。看護師の資格を持っていたが、米国の看護師の資格試験にも合格。来年春に看護師として米国に渡る予定だ。
米国の病院が看護師として払う給与は１時間あたり２１ドル（約２２００円）だが、手当などを含めた収入は約３０ドル。フィリピンでの医師収入は１時間あたり千ペソ（約２千円）だった。「医師の給料は低すぎる。米国で看護師として認められれば、家族も米国で暮らせる。つらい決断だったが、安定した自分の将来を考え、米国に行く」という。同氏はルソン島中部の大学で、米看護師資格の講義をしている。生徒には、恩師だった４０代の医師３人がいる。
比国立保健協会によると、９４年以来、海外に出た看護師は１０万人を超す。過去４年間に５万人を超すなど、流出傾向は加速している。医師が看護師に転じるケースが目立ち、００年から３５００人以上の医師が看護師として出国した。現在は約４千人の医師が看護学校に通っているという。「国内の医療システムの危機」（同協会のタン博士）との指摘もある。
しかし、高収入をあてにした頭脳流出は今後も続きそうだ。日本政府はフィリピンの看護師に対して門戸を開くことを決めている。高校時代の４年間、東京郊外に住む日本人女性の援助を受け、ミンダナオ島の私学に通っていたハシント氏は「米国などよりもだいぶ遅れたが、新しく看護師になる人には朗報だ」と話している。
(12/13 07:18)
http://www.asahi.com/international/update/1213/001.html
(転載終了)水が高いところから低いところへ流れるのと同じように、人もお金のないところからあるところへ移動します。これは、＜法則＞と言って良いでしょう。
ただ、せっかく医師としての訓練を受けたのに医師として働けないと言うのは、人材と教育費用の無駄遣いです。そのうちフィリピンに、開発国のメディカルスクールが進出し、フィリピン人医師受け入れを前提とした医学教育を施すようになるかもしれません。フィリピンにとっては頭脳流出を促進する結果となるものの、開発国で稼げる医師の収入の高さを考えると、貴重な外貨獲得源として重宝されることでしょう。
わが国も例外ではありません。看護婦や介護士で起きていることは、遅かれ早かれ医師でも起こると考えておいた方が無難です。
松井道夫（松井証券社長）によると、かつて働いていた海運業界で20年前に起こったことが、時差をもって証券界に起きている、と言うことです。日本郵船や商船三井の船には、日本人はひとりだけ。船長を除けば、一等航海士もなにもすべて外国人が乗り組んでいます。近い将来、院長先生を除いてすべてが外国人、なんていう病院が、日本に出現するかもしれませんね。
製薬業界で、アウトソーシングが本格化してきました。以下、Nikkei Netから転載します。(転載開始)
製薬大手が生産委託を拡大、武田８割・田辺２割に武田薬品工業、田辺製薬など製薬各社が相次ぎ外部への製造委託や海外生産を拡大する。武田は2005年度末までに生産委託の比率を現在の5割から8割に引き上げる。田辺製薬も06年度までに生産金額の2割を外部委託する。来年4月の薬事法改正で製造の全面委託が可能になるのに対応、生産コストを削減し研究開発に経営資源を集中することで、欧米製薬大手に対抗する。
武田は05年度末までに国内工場を3カ所から2カ所に集約するのに伴い自社生産比率を引き下げる。現在、海外のグループ3工場を含め国内外約40社に生産を委託しており、外部生産比率は約50％。これを05年度末までに最終製品を作る製剤工程で80％、中間製品の原薬工程で75％に引き上げる。 (07:00)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20041210AT1D1200309122004.html
(転載終了)薬品を実際に生産する人員を減らす一方、売り込み部隊(ＭＲ)の数を大きく増やすと言うのが、大手薬品メーカーに共通する作戦です。いまは、｢とりあえず外に出す｣ということで、内外合わせて40社あまりが武田のクスリを作っているようですが、そのうちにこれもいくつかにまとまっていくことでしょう。ことによるとほとんど全てが、中国やインドに移転する可能性があります。
日本に残るのは少数の戦略策定者、経理財務専門家および研究開発部隊と大多数の営業マン、あとはアジアにアウトソーシングする、という大きな流れがここにも見られます。
混合診療問題は、これで一応の決着でしょう(少なくとも今回は)。まずは、RisfaxのＨＰから引用します。（引用開始）
■厚労省／規制改革会議 解禁問題は依然平行線、あす再折衝へ(12/8 8:00 RISFAX4面)今年末の期限が間近に迫った混合診療解禁の問題を巡り、尾辻秀久厚生労働相と、村上誠一郎規制改革担当相は７日、都内で大臣折衝に臨んだ。
■癌と共に生きる会 「部分的」な混合診療解禁、厚労相に要請(12/8 8:00 RISFAX5面)
抗がん剤の早期承認を求める患者会「癌と共に生きる会」（佐藤均会長）は７日、尾辻秀久厚労相と会談し、「部分的」な混合診療解禁を抗がん剤で認めるよう要請した。
http://www.risfax.co.jp
(引用終了)と、シナリオ通りにことが進んだ後、次の報道となりました。毎日インターアクティブからの転載です。
（転載開始）
混合診療 未承認薬を容認、抗がん剤など対象に 厚労省案政府の規制改革・民間開放推進会議（議長・宮内義彦オリックス会長）が全面解禁を求めている混合診療について、厚生労働省の対案が７日、明らかになった。国内未承認の抗がん剤などについて、薬学関係の有識者ら外部の専門家が安全・有効性を認めた場合は混合診療の対象として認めるなど、同診療の対象を拡大する内容。規制改革に関する閣僚折衝などで近く提示される。
混合診療は公的な医療保険が適用になる保険診療と保険外診療の併用を認めるもの。原則として禁止され、保険が利かない治療を一部でも受けると保険適用される診療分を含め全額自己負担になる。現在は特定療養費制度で、高度先進医療（９７技術）▽選定療養（差額ベッドなど１３項目）−−の２分野のみ認めている。ただ、高度先進医療は大学病院など１２５医療機関しか申請できないなど制約も少なくない。
厚労省は今回、特定療養費制度の名称変更も含めた全面改組を検討。海外で承認されながら国内未承認の医薬品は速やかに治験に入れるよう運用面を改め、新設する外部の専門家による検討会が認めた薬品については、厚労相の諮問機関・中央社会保険医療協議会の了承を経て混合診療を可能とする。
未承認薬は現在、治験段階と承認後から保険適用までの期間は混合診療を認めているが、承認審査中に使うと、保険が適用される他の治療分まで患者の全額自己負担となる。厚労省の対案では、全額負担は治験段階から保険適用まで、使用した薬代だけで済む。
日本は医薬品の承認手続きが煩雑で、審査に１年近くかかることが多く、有効と分かっていても負担が重くなるため、患者が使用を断念するケースもあるという。
厚労省は未承認薬の他に混合診療を認める新分野として「必ずしも高度でない医療」も新設し、対象病院も広げる。規制改革会議は未承認薬をはじめ乳がん手術に伴う乳房の再建など１５例を解禁事例に挙げているが、同省は１５例すべてに対応。この中の、外国人患者のための通訳は、医療行為と切り離し、これを利用しても保険が利く診療分は自己負担にならないようにする。
規制改革会議は「一定水準以上の病院での混合診療全面解禁」を求める姿勢を変えていないが、今回の対案を軸に調整が進む見通しだ。【吉田啓志】
【混合診療】保険適用の診療と保険が適用されない診療の併用を認めること。現行制度は一部でも保険でカバーされない治療を受けると、保険適用治療分も含め全額自己負担となる。混合診療が導入されると、自己負担は保険非適用分のみとなる。規制改革会議の指摘を受け、小泉純一郎首相は年内に解禁の方向で検討するよう指示した。
毎日新聞 2004年12月8日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20041208k0000m040146000c.html
(転載終了)日医や厚労省にとって、患者さんに泣きながら訴えられるのが一番つらいことです。財界側は「患者の利益」という＜錦の御旗＞を押し立てて中央突破を狙いました。今回は、患者さんの意向を組んで部分的に混合診療を解禁したことで、財界と患者団体の利害は分断されました。さて、次はどんな＜弱者＞を担ぐのでしょうね？
確かにシンガポールやマレーシアなんかでは、メディカルツーリズムというのが新たなビジネスチャンスと考えられています。でもね、「ヨン様プラン」でがん検診誘致！ っていうのはなあ・・・。以下、産経ネットからの転載です。(転載開始)
「ヨン様プラン」でがん検診誘致！ 韓国国立がんセンター 撮影病室で
大人気の韓国ドラマ「冬のソナタ」で撮影に使われた韓国国立がんセンターが８日、ドラマ人気にあやかって日本人のがん検診誘致などに乗り出すことを明らかにした。
ソウル近郊の京畿道高陽市にある同センターは「ヨン様」こと俳優のペ・ヨンジュンさん演じる主人公が入院、女優チェ・ジウさん扮（ふん）する恋人が見舞いに訪れたシーンの撮影場所。
同センターなどによると、撮影に使われた病室は当時と同じ状態に保存し、ペさんが着た患者服なども活用。室内には既にペさんのポスターや撮影に使った小物も展示されているという。
センター側は来年にも「ヨン様プラン」と名付けて日本人女性を対象にした集団がん検診を誘致、撮影に使われた病室に一泊できる計画も検討している。（共同）
(12/08 12:44)
http://www.sankei.co.jp/news/041208/bun077.htm
（転載終了）気が重いガン検診をなるべく楽しく、という趣旨は分るけれども、ほんとに行く人いるのかなあ？
英国で、ＳＳＲＩ処方に関するガイドラインが発表されました。以下、ＢＢＣのホームページから引用します。http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4071145.stm
(引用開始)
GPs get new anti-depressant rules
Doctors have been issued with new guidance on the prescribing of antidepressants.
The National Institute for Clinical Excellence called on doctors to exercise more caution in prescribing the drugs.
Separate advice from the Medicines and Healthcare Products Regulatory Authority demanded stronger warnings on drugs such as Prozac and Seroxat.
It says advice on potential withdrawal symptoms should be reinforced.ＳＳＲＩ服用を中止した場合の副作用について患者に十分な説明をするべきであろう。
The NICE guidelines say no type of antidepressant should be used in the initial treatment of mild depression.
軽度のうつ病を治療するにあたって、最初から抗うつ剤を処方するべきではない。
But for patients with moderate to severe depression who are deemed to need antidepressants, drugs such as Prozac and Seroxat should be favoured above other types because they are less likely to be discontinued due to side-effects.
中程度または重度のうつ病には、副作用が比較的少ないＳＳＲＩが第一選択であろう。
Graham Archard, vice chair of the Royal College of GPs, said: "We welcome this guidance but GPs face a difficult dilemma when treating depression. With a chronic shortage of counselling and psychotherapy available on the NHS, GPs often feel they have little choice but to prescribe anti-depressants in mild to moderate cases.
現行の医療制度下ではカウンセリングや精神療法が気安く利用できる状況にはないため、ＳＳＲＩを処方する以外にＧＰ(家庭医)が取りうる手段は少ない。
"People should instead have access to psychological treatments and support underlying issues that lead to the anxiety," he said.
But Marjorie Wallace, Chief Executive of the mental health charity Sane, added: "Unfortunately, trained and experienced therapists are currently like gold dust and those needing therapy may have to wait many months."
カウンセリングや精神療法を気軽に利用できるように改善が必要だ。今のところ、訓練を受けた経験豊富なセラピストが不足しているので、何ヶ月も待たなければならない状況だ。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4071145.stm
（引用終了）「外科医でも内科医でも気安く処方できる」、というのがＳＳＲＩのウリでして、これが売り上げの急激な伸びをもたらしてきました。しかしながら最近、いくつかの副作用が報告されるようになってきたため、処方を慎重に行うべし、との声もあがっています。英国に引き続き、わが国でも同様のガイドラインが策定されることになるでしょう。
「ＳＳＲＩ処方よりも、まずカウンセリングを」というコメントもおもしろい。今後はハイタッチがさらに重視されるという点に関しては、医療も他のサービス業と変わらないかもしれませんね。
以下、「吉川医薬経済レポート（2004年11月号号外）」より、転載します。（転載開始）
後発品3社と日本ケミファ05年3月期の中間決算がほぼ出揃った。
後発品大手3社のデータをまとめてみよう。
会社名 売上高（億円）
中間決算値 前同比 通期予想 前回予想 前期実績
大洋薬品工業 124.3 11％ 260 275 228.8
東和薬品 120.2 247 256 231.2
沢井製薬 111.9 -0.1％ 228 253 225.5（日刊薬業 04.11.02.，11.09.，11.10.，11.15. ミクスeX-press 04.11.02.，11.10.，11.15.による。）
表の前回予想欄の数値は，前期（04年3月期）決算発表時に発表した05年3月期の売上予想値である。 大洋は1.20倍（275/228.8），東和は1.11倍（256/231.2），沢井は1.12倍（253/225.5）と3社ともに2桁成長を計画していたことがわかる。 通期予想欄は今回の中間決算時に予想した数値である。
前回予想に比して，大洋は−5.5%（260/275），東和は−3.5%（247/256），沢井は−9.9%（228/253）といずれも下方修正している。
このことは後発品事業が年度始めに予想したように順調には推移していないことを示している。大洋は受諾ビジネスと製品導出が好調なこともあり，また国立病院機構への納入が順調で前同比11%の増収を記録しているが，通期については慎重な見方をしていると観察される。 東和は経理上の理由で前同比の発表がない。 沢井は前同比で僅かに減収であった。
この2社はともに競争激化，新製品不振，新規開拓先不調と困難な状況にあることを発表時に述べている。
これらのことから，後発品専業企業の前途は必ずしも明るくないのではないかと思われる。
日本ケミファは中堅新薬企業であるが，近年は新薬上市がなく，苦しい経営が続いていた。
11月12日に発表された中間決算によると後発品事業が好調で，従来のトップ製品のソレトンを抜いてトップビジネスになり，ウラリットの寄与もあり前同比16％の増収を記録した。
製品・事業名 売上高（億円）
中間決算値 前同比 通期予想 前回予想 前期実績
後発品 32 39% 67 67 51
ソレトン 27 0.6% 52 49 53
ウラリット 14 8.0% 30 31 27（ミクスeX-press 04.11.15.による。）
日本ケミファは，インドの大手ジェネリック薬企業ランバクシーと提携しているが，今年度中に数品目を申請予定としている。後発品事業で，日本ケミファと後発品大手との間で明暗を分けたように見られる。 長年にわたり培ってきた日本ケミファの新薬企業をしての実績と信用がこのような結果を生んだのではあるまいか？後発品事業をめぐっての，一つの示唆と筆者は考えている。
（転載終了）後発品専業メーカーより中堅新薬メーカーの後発品事業の方が有望、と言うのが結論です。
今日は小ネタです。Risfax HPの「田畑日記」より転載します。(転載開始)
１０月２７日
ニュースリリースは企業によって頻繁に出す会社と出さない会社があります。最近、弊社によくリリースを送ってくる会社です。医療業界に特化した人材サービス会社「キャリアブレイン」(http://www.cabrain.net/)。
きょうのＲＩＳＦＡＸにも掲載していますが、最近よく目にします。個性的な商売展開で。
きょうは、東京海上日動火災とタッグを組んで、医療機関向け個人情報漏えい保険の展開するとのことでしたが、数日前に送られてきたリリースは稀に見る絶品。さすがに記事にできなかったので、ここで紹介。
『医療従事者専門の結婚相談所に女性登録者が殺到 男性医師登録者を至急求む』
サイドビジネスで、医師など医療従事者専門の結婚斡旋業者「フェリーチェ」を展開しているそうなんですな。そこに女性ばかりが殺到して、肝心のお相手がいないという話。以下リリース。
「当社の医療従事者結婚サービスは今年１月にサービス開始以来、予想を上回る登録者で売上を拡大しています。（中略）不景気ということもあり、安定した職である医師など医療資格保持者に女性の人気が集まっているようです」
……とのこと。つーか、単なる目論見違いじゃないですか。
http://www.risfax.co.jp
(転載終了)
当掲示板で予想しておいた（｢1213｣参照）通りの展開になりました。以下、日経ネットより転載します。(転載開始)
中医協の解体的見直しを・規制改革会議政府の規制改革・民間開放推進会議（議長・宮内義彦オリックス会長）が年末にまとめる答申案で、診療報酬や薬価を決定する厚生労働相の諮問機関、中央社会保険医療協議会（中医協）の抜本的な見直しを提唱していることが分かった。答申案では、中医協に関し「解体的な再設置を含む抜本的な見直し」を訴え、来年3月までに結論を得るよう求めている。 (07:02)
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20041206AT1E0500N05122004.html
(転載終了)
★「もう」さんへご返信有難うございます、なおこうです。
＞間違いなく「痛いです。」と答えざるを得ないでしょう。「病気、しかも悪性かもしれない」という差し迫った状態がなければ私も受けたくない検査です。
やはりそうですか。痛い検査なら｢痛い｣と、予め患者さんに言っておいた方が良さそうですね。個人的には、大腸ファーバーやジギタール（注：肛門に指を入れての触診）も受けたい検査ではありません。
＞私にはどうも患者側というか国民の側は一向に輿論というものが形成されてこないように感じます。
一般国民にとっては、全く＜リアリティー＞がない、ということなんでしょう。未承認抗がん剤を使用しなければ治療のしようがないというガン患者さんならともかく、ふつうの人にとっては今のところ縁のないはなしですから。なんで小泉内閣が混合診療解禁を推進しているのか、一方、日医と病院四団体がなぜ頑なに反対しているのか、もう、何がなんだかわからない、どっちでも良いんじゃないの？ というのがホンネでしょうね。
＞自分で責任を持つという考えから再生医療や一部の移植、不妊治療などは自費の部分を設けるという考えは判りやすいと思いますし
小沢一郎じゃありませんが、小泉内閣には哲学が欠けている、ということに尽きます。「これからはこういう社会を作りたい。この社会において医療システムはこうなるべきであるから、こういう改革をやるのだ」と表明すれば、国民も理解がしやすいことでしょう。根本的なところで議論をせずにトリビアルな部分だけを取り上げているから、はなしが見えにくくなってしまうのですね。
皆さん、なおこうさんこんにちは。「もう」です。膀胱鏡検査の記事が紹介されていましたが、痛いですかという質問には間違いなく「痛いです。」と答えざるを得ないでしょう。「病気、しかも悪性かもしれない」という差し迫った状態がなければ私も受けたくない検査です。私は実験の一環で導尿用のカテーテルを入れたことがありますが、柔らかいカテーテルでも一刻も早く抜いてほしいと思ったくらいで硬い膀胱鏡は自分では経験したことがありません。現在在籍している病院は消化管の内視鏡のような軟性のファイバー式膀胱鏡を使っていてこれならば硬いタイプの２−３割の痛みですみます。日本でもこのタイプを使用する施設が増えていますが硬いタイプにも検査上の利点もあるため場合により併用します。欧米では硬性鏡を使う時は笑気などを使って痛みを十分除きながら検査をしているようです。
私は以前痛みが半分くらいで済む硬性と軟性の中間型の膀胱鏡検査を開発して特許（実際は実用新案）を取ったことがあるのですが、未だ完成の域には達せず普及せずに終わっています（残念！）。
さて混合診療解禁の是非について政府と医師会の綱引きが本格化しているようですが、私にはどうも患者側というか国民の側は一向に輿論というものが形成されてこないように感じます。手元に１２月５日付けの日医ニュースがあります。衆参両議院議長宛に提出された６００万人の署名の記事も大きく紹介されています。しかしこの６００万人のうちどれだけの人がこの問題を具体的に把握して署名したのか疑問もあります。医師会は「混合診療解禁は国民皆保険制度の崩壊につながるから蟻の一穴も許さず阻止をする」という考えです。国民が等しく同じレベルの医療が受けられなくなる、と断定する理由は混合診療の解禁を迫っている規制改革・民間開放推進会議が「民間の医療保険の普及」を真の狙いとしていると判断しているからだと植松日本医師会会長も記事の中で述べています。
私個人の考えでは、現在のまま国民皆保険制度を自分たちの子や孫の代まで維持するのは難しかろうと思っています。何らかの形で混合診療も行うべきだし、現在のような福祉も医療も受けたものの勝ち、公的資本から搾り取れるだけ取って後はどうなっても知らないという風潮は変えるべきであると思っています。しかし政府が現在進めている混合診療や医療特区の開設がやはり単なる民間保険の普及しか目論んでいないように見えるところが問題です。
国民の間に混合診療についての議論が出てこないのは結局具体的な中身が示されないことに問題があるのでしょう。前医師会長の坪井氏が述べていたように自分で責任を持つという考えから再生医療や一部の移植、不妊治療などは自費の部分を設けるという考えは判りやすいと思いますし、その上で各疾患の標準治療は必ず保険医療を保障するといった具体的提案を行ってゆけばよいと思います。マスメディアのどこを見ても民間の医療保険の宣伝ばかりという現在の状態ではスポンサーに直接関係する議論をマスコミがしたがらない事情が国民輿論が形成されない理由にも思えます。「もっと分かりやすく説明を」政府もマスコミもすべきだと思いますね。
以下、アサヒドットコムより転載します。(転載開始)
混合診療解禁、反対を採決へ ２日の参院厚労委
保険診療と保険外診療の併用を認める「混合診療」の解禁をめぐり、２日の参院厚生労働委員会で、日本医師会と３５の医療関連団体でつくる国民医療推進協議会が提出した解禁反対の請願が全会一致で採択される見通しとなった。小泉首相は解禁の方向で検討するよう厚生労働省に指示している。しかし、混合診療の全面解禁には健康保険法の改正が必要とされており、仮に政府が解禁の方針を決めたとしても、改正案成立は難航が予想される。
請願は「解禁は公的医療保険の縮小と私的保険の拡大により、国民皆保険制度を崩壊させる」という内容で、約６００万人の署名とともに衆参両院に提出されていた。
解禁については民主党や共産党など野党内にも「金持ち優遇になる」との反対論があった。請願を機に自民党の理事が働きかけたことで、全会一致で採択する方向が固まった。
衆院では、２日に厚生労働委員会の理事懇談会が開かれ、採択するかどうか協議することにしている。
(12/02 06:02)
http://www.asahi.com/politics/update/1202/001.html
(転載終了)「全会一致」のココロは、職能代表院としての参議院の性格、反小泉政権色を鮮明にしたい民主党、福祉政党としての共産党・公明党の位置付け、といったところでしょうか。たぶん、衆議院では、様相が若干異なってくるはずです。